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2021/03/11

ジャケットから文字が消えた

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(7min read)

 

以前Astralさんも書かれていたことですが、最近音楽アルバムのジャケットに文字が書かれていないケースが増えてきていますよね。歌手や音楽家名、アルバム名など、いっさいなにも書いていない、絵(写真)だけ、というジャケット・デザインが増えています。

 

もちろんこれはレコードやCDなどフィジカルじゃなくサブスク(ストリーミング)やダウンロードといった配信で音楽を楽しむのが一般的になったからです。配信サービスのアプリだと、音楽家・歌手名、アルバム名などは、ジャケット画像の横などに別途表示されますから、カヴァー・デザインの一部にふくめる理由がなくなったわけです。

 

上に画像を載せたのはいずれも2020年のリリース作品で、どれもジャケットに文字がありませんが、右上のイマニュエル・ウィルキンス『オメガ』はブルー・ノートのロゴだけ載せるという、そこはやっぱり譲れないところなんでしょうか。たしかにレーベル情報は配信で見つけにくいし、それにブランドですからね。

 

ジャケットにいっさい文字がないといえば、ぼくの好きな原田知世のアルバムなんかだと、実はもっと前からそうなんです。

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左上の『music & me』ではじめてそうなりましたが、2007年の作品ですから、まだフィジカルしかなかったころです。その時点ですでにこうなっていたわけですね。その後はふたたび文字を載せたりもくりかえしながら、最近の知世のアルバムはほぼだいたい文字なし、知世の名もアルバム題もなにも書かないっていうのがあたりまえになりました。

 

こういうのは配信だから云々というよりも歌手の知名度が高いから書く必要もないっていうことかもしれません。文字が入らない絵画的ジャケット・デザイン重視の方向性といったこともあるでしょう。マイルズ・デイヴィスなんかは1970年ごろだったか、自分のレコードに “Miles Davis” と書くなと発言したこともあって、それは(ジャズという)先入見なしでたくさんのひとに買ってほしいからというのが理由だったみたいです。

 

さかのぼると、ビートルズ1965年の『ラバー・ソウル』。これ、ジャケットのどこにも “The Beatles” の文字がありません。歌手・音楽家の名前を書かないというたぐいのレコード・ジャケット史上第一号だったんじゃないでしょうか。四人の顔が出ているから、65年時点で間違うひともいないということだったのかもしれませんね。

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ジャケットに文字を書かないっていうデザインはこれが最初だったかも?と思い出すのが、1970年11月リリースだったデレク・アンド・ザ・ドミノス(エリック・クラプトン)の『レイラ』。ジャケット・カヴァーにバンド名もアルバム名も書かれていませんね。小さく左下に黒字で見えるのは画家のサインでしょうか。文字はそれしかないっていう。

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ちょっとあと、1970年の12月リリースだったジョン・レノンのファースト・ソロ・アルバム『プラスティック・オノ・バンド』(ジョンの魂、1970)も文字なしジャケ。これはどうしてだったのか、たしかに70年のジョン・レノンの知名度はありすぎるほどでしたけど。こっちはほんとうにいっさいなんの文字もなしです。おなじとき同じデザインでヨーコ・オノの『プラスティック・オノ・バンド』(ヨーコの心)LPもリリースされています。表ジャケはまったく同一。裏はそれぞれジョンとヨーコの幼少時代の顔写真で、区別できますけど。

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また、レッド・ツェッペリン1971年リリースの四作目、これだってどこにもバンド名もアルバム名もありませんよね。これのばあいは、表裏ともジャケットにないばかりでなく、ダブル・ジャケットを開けても内袋にもレコード・レーベル面にもどこにもそれが書かれていない、つまりいっさいの名前が存在しない作品なわけで、当時からその後のテキスト・マスコミを戸惑わせることとなりました。ぼくらファンだっていまだにどう呼んだらいいかわからない。ぼくはいつも「四作目」と言っていますけど。

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皮肉なのは、このレッド・ツェッペリンの四作目は、Spotifyなどのサービスだとむりやり “Led Zeppelin IV” と記載されてあることです。名前のないアルバムとして、バンド名すらなしで、世に出したのに、それが音楽家側の意向だったのに、配信サービスだとなんらかの名前を書かないわけにいかないっていう。配信サービスが普及したことでジャケットに文字がないデザインが増えたのに、その横にはなにか文字を書かざるをえないっていう、このジレンマ。う〜〜ん。

 

レッド・ツェッペリンはその後もアート・ワークで遊ぶことが多く、またアルバム題はあってもそれをジャケットに書かない、バンド名もなし、っていうカヴァー・デザインが多かったですよね。『聖なる館』しかり『プレゼンス』しかり『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』しかりです。日本盤だと帯に書いてしまうんでちょっとあれですけど(こういうのもぼくが帯嫌いな理由の一つ)。

 

音楽マスコミを戸惑わせることでは、このひともかなりなものだったんじゃないかというのがプリンス。このひとのばあいも配信サービスだと音楽家名も “Prince” でアルバム題もなにか文字が書かれてありますけど、実は記号だったことがありましたよねえ。1992年の、あ、Spotifyだとカッコ入りの [Love Symbol] になっています。あの時期、名前がずっとあの例の記号でした。いつ “Prince” に戻したんだっけ?

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1994年リリースの『ブラック・アルバム』、Spotifyにありませんけど、これなんか、いちおうの通称として “The Black Album” と言われていますが、CDでシールドをはがすといっさい文字なし、プリンス名もアルバム名もなしの、ただの真っ黒な紙しかなかったんですもんねえ。ところで、これ、どうしてSpotifyにないんでしょう?

 

(written 2020.12.13)

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