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2021/04/05

肌色

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(4 min read)

 

アメリカのヘルスケア関連商品を扱う大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが、さまざまな肌の色に合うバンドエイドの新商品を今年三月より発売しました。もちろん昨年来の #BLM ブラック・ライヴズ・マターのもりあがりを踏まえてのことでしょう。

 

実を言うとバンドエンドがこういった商品をリリースするのはやや遅れたのであって、公式InstagramではBLMを受け昨年六月に五色のバンドエイドを発売したいという投稿がすでにあったのです。

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「多様な肌の美しさを包含するため、褐色や黒の肌のトーンの、明るいものから中間、深い色合いまでのバンドエイドを新たにローンチする」との声明がキャプションでは述べられていました。

 

実際の発売が翌三月になったのにどんな事情があったかは知りません。しかしながらいずれにせよこういった課題解決の実現は、まさに2020年代の企業や公的機関に求められていることがらであり、バンドエンドがそれを実行したのは喜ばしいことです。

 

それまで販売されていたバンドエイドは、白人の肌に合わせた色味が基準になっていて、多様な色を求める声が上がっていたのは事実。それはなにも昨年5月末以来のBLMの動きを受けてというんじゃなく、もっと前から黒人たちのあいだにあった声だったのです。

 

三月に発売されたバンドエイドの新商品はアワトーン(OURTONE)と名付けられ、バンドエイドのInstagramでは、「OURTONEは、褐色の肌の美しさを包含し、多様な肌の色によりよく馴染むように作られています」などのコメントとともに、新商品をつけたひとびとの写真が投稿されているのを見ることができます。

 

肌の色は薄いものばかりでないという、ふりかえれば常識的な考えは、しかしここ日本でもなかなか実際の商品として具現化するということがありませんでした。絵の具、色鉛筆、クレヨンなどの世界で「肌色」というものがありましたよね。日本で発売されているそれは、東アジア系黄色人種の肌の色でしかありませんでした。

 

日本でもこれはおかしいという声がずいぶん前からあって、多様な肌の色を持つさまざまな出自の人間が日本でも暮らしている以上、肌色という商品で黄色しか発売しないのはおおいに問題であると、そういった声がもりあがってきていたというのが事実。

 

もう2021年現在では、これら色彩具の世界に「肌色」の名称は存在しません。1962年生まれのぼくの世代の子ども時分からすれば進歩です。いま色鉛筆やクレヨンを使っている子どもたちにとって、東アジア系黄色人種の肌の色を表す色彩具の名称は「ペール・オレンジ」や「うすだいだい」なのです。

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いまの日本には「実際に幼稚園行ってみると『はだいろ』が肌の色じゃないお友達ってふつうに何人もいる」「差別的だ」との街の声もあり、肌色との名称で一色しか扱わないのは国際的感覚にも合致しないというわけで、2000年前後あたりに各メーカーとも色名を変更したそうです。

 

いっぽうでイタリアの文具メーカーは「肌色」ばかりを12色集めた色鉛筆を発売しています。世界のさまざまなひとたちのさまざまな肌の色を表現できるとのことで、日本国内でも学校現場を中心に最近売れているそうですよ。

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もしかしたら、いや、たぶん、むかしクレヨンなどに「肌色」があたりまえにあった時代でも、つらい思いを感じていたひとたちがいたのではないか、そう思います。多様なひとたちがすこしでも生きやすく、世のなかがいい方向に変わっていくといいなって、ぼくも心からそう考えています。

 

(written 2021.4.4)

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