2021年のプリンス降誕 〜 ジュディス・ヒル
(4 min read)
Judith Hill / Baby, I’m Hollywood
https://open.spotify.com/album/5BcZjjb4BdRqZqgEPgcjzx?si=ljIAv4OQRPuH3iR7zjEyuw
いやあ、カッコいいなあ、もう。こんなカッコいい音楽、なかなか聴けるもんじゃありませんよ。アメリカ人歌手ジュディス・ヒルの新作アルバム『ベイビー、アイム・ハリウッド』(2021)のことです。三月はじめに出たばかりで、まだ情報もレヴューもほとんどありませんが、こりゃ傑作じゃないですか。
ジュディスは生前のマイケル・ジャクスンやプリンスに見出されたということで知られているわけですが、自己名義の前作がプリンスのプロデュースによるものだったのに続き、今作『ベイビー、アイム・ハリウッド』は、もはやプリンスはこの世にいないにもかかわらず、全面的にプリンス印が押された音楽になっているんですね。
プリンスが2021年によみがえり女性になったなら?をそのまま地で行く、ジュディスのこの新作、出だし1曲目は準備運動かなといった感じですが、2曲目のアルバム・タイトル曲からエンジン全開。なんですか、このもろミネアポリス・ファンクなサウンドは!ビートが効いていてキメまくり、爽快にかっ飛ばし、カッコいいったらありゃしない。
こんなにもみごとな曲は今年まだ聴いたことがなかったぞと思うほどノリノリな2曲目に続き、3「アメリカーナ」、4「ガッド・ブレス・ザ・メカニック」とプリンス・サウンドが続きます。個人的にはこの4曲目のヴォーカルまでもがプリンス・スタイルに聴こえ、っていうかジュディスの書いたメロディが1980年代プリンスの書くそれにソックリだからなんですけどね、いい曲です。
アルバムのクライマックスは5曲目の「ユー・ガット・ザ・ライト・サング」。これはもうどこからどう聴いてもプリンス・ファンクそのまんま。間違いなく1990〜2000年代のプリンスがやったような音楽ですよね。曲を書いたのもサウンド・プロデュースもジュディス自身ですが、ここまでプリンス・ファンクに似てしまうというのはトリビュート的な意味合いなんですかね。いやあ、カァ〜ッコイイなあ、もう。
ソックリさんをやるんならあんまり意味ないよ、と考える向きもおありでしょうが、いやいやなかなかどうしてここまでできるのはみごとです。プリンスのばあいは、曲づくりもプロデュースも演奏も歌も、ほぼだいたいぜんぶ自分ひとりで完結する密室作業音楽家だったのであれが実現できたわけで、それが他人にできちゃうっていうのはすごいことですよ。いままでだれもなしえなかったわけですからね。
演奏者のメンツが知りたいわけですが、たとえば12曲目のテンポのいいこれもプリンス流なナンバーで聴こえるティンバレス・ソロなんか、これまたどう聴いてもシーラ・Eのスタイルに思えてしまいます。やっぱりこれ、シーラ・Eじゃないのかなぁ?そう感じてしまうほど、これもまたプリンス・スタイルです。
ゴスペル調に歌い上げるバラードのアルバム・ラスト13曲目も聴きごたえがあって、いやあ、こんなみごとなアメリカン・ブラック・ミュージックの作品は、ちょっとスタイルが今様じゃないけれど、そんなこと関係なく2021年の傑作として推薦したいですね。特にプリンスにハマった経験のあるみなさんにとって、このジュディスのアルバムはストライクど真ん中のはず。
(written 2021.4.7)
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