プログレ能管 〜 返シドメ
(3 min read)
返シドメ / 返シドメ
https://open.spotify.com/album/7pHzg3jxowZJFBzVTaFcTA?si=q1rqUHIHSWeJTfrdHuNibw
bunboniさんの紹介で知りました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-04-26
能楽笛方、一噌幸宏のバンド、返シドメのアルバム『返シドメ』(2021)がすばらしい。プログレッシヴ・ロック好きの友人に聴かせたら「完璧なるプログレである」との返答が返ってきましたが、まさにねえ、これは古典芸能であるという能楽のイメージからは想像もつかない先進的な音楽ですよ。
このアルバムの演奏メンツは、一噌(能管、篠笛、田楽笛、リコーダー、角笛)、大友良英(ギター)、ナスノミツル(ベース)、吉田達也(ドラムス)。この顔ぶれからはインディなフリー・ジャズを連想しますが、サウンドはむしろ抒情派メタル的。メロディも明快で。
Twitterではしょうもない駄洒落ばかり連発している一噌は、フリー・ジャズやジャズ・ロックが好きなようですが、そんな趣味が反映されたこの『返シドメ』は、キング・クリムズンやマハヴィシュヌ・オーケストラを連想させる部分も大きくて、かと思うと、たとえば2曲目「大金持ちのアカハライモリ」なんかでは、リコーダーがまるでアイリッシュ・ミュージックのティン・ウィッスルを連想させる素朴さをも表現しています。
アルバム全体ではエッジの利いたフリーなインプロ満載の前衛プログレではありますが、難解な印象はまったくなくて、抒情派音楽ですからかなり聴きやすい印象があるのも特色でしょうね。能楽で使われる能管や篠笛にここまでの表現力があるのか!というのは正直言って大きな驚きで、その世界はいままでまったく無知でしたから、一噌がスペシャルなのか、もともとこんな使いかたもできる楽器なのかはわかりませんが、ビックリ仰天ですよねえ。
大友、ナスノ、吉田の三人も腕達者。このアルバムでは決してそんなにハミ出さず、むしろ一噌の音楽世界構築のため献身しているのが好感触ですね。三人の生み出すグルーヴはフリーなジャズ・ロック〜プログレ系のそれですが、わりときっちり演奏しているなといった印象です。それぞれファンも多いひとたちなので、特に大友なんかはですね、それでこのアルバムが聴かれているという面だってあるかもしれません。
それでも、やっぱりここで聴くべきは一噌の超絶的な能管演奏。能管や篠笛はノイズをふくむ豊穣な音色をハナから持ち合わせていますが、それを最大限にまで発揮して、エレクトリックなサウンドも炸裂するフリー・プログレ・ジャズ・ロックの世界でここまで大活躍できるとは、もう脱帽。
一聴、空気の振動が変わる音楽です。
(written 2021.5.12)
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