ゲンブリ・ロック 〜 バブ・ルブルーズ
(3 min read)
Bab L'Bluz / Nayda!
https://open.spotify.com/album/2Ctf8UeMAI9Iy2ODkUQyxv?si=Z_yjT7V5Scq0SPOEdudOIA
モロッコのバンドなのかなあ、モロッコ・ルーツの在仏?わかりませんが、四人組のバブ・ルブルーズ(Bab L'Bluz)っていうバンド、昨年リリース作『Nayda!』(2020)がちょっとおもしろいですよね。四人はヴォーカル、ゲンブリ、ドラムス、フルート(となっているけど、なにかの横笛?)で、それぞれパーカッションもやっているんじゃないかと思います。カルカベとか鮮明に聴こえるのはだれの担当なんだろうなあ。
ネットで情報をさがすと、このアルバムはグナーワ・ロックと言われていることが多いんですけど、個人的にはあまりグナーワ要素を感じません。ハッサン・ハクムーンがやったようなものとは根本的になにか違うんじゃないかという気持ちが拭えないですね。でもゲンブリやカルカベの音、特にゲンブリはこの音楽の主役なんで、だからゲンブリ・ロックとでも呼んだらどうでしょう。
このゲンブリはグナーワ・ミュージックみたいに同一フレーズをヒプノティックに反復して高揚していくといった弾きかたじゃなくって、もっとポップに聴きやすいロックっぽいスタイルでやっているよねと思うんです。そのゲンブリ・フレーズを軸に、ドラムスは完璧ハード・ロック的な叩きかたで、それらの上に女性ヴォーカルが乗っかっているっていう、そんな音楽ですよね。笛はあまり聴こえず。
ドラマーは曲によってときどきラテンっぽいリズム感で、というか3・2クラーベ・フィールのあるロックっぽいスタイルで叩いていて、かと思うと一曲だけヨレてつっかかるようなハリージ(ペルシャ湾岸ポップス)みたいな感じになったり、それもなかなか聴けますよね。ジミ・ヘンドリクスやクリームみたいなロック・トリオ似と考えても、しかしゲンブリ奏者が(ロックでいう)ギターとベースの役割を同時に一人で果たしているっていう、それ+ヴォーカルですね。
軽くてポップで聴きやすいんですけど、なぜかちょっとクセになる味を持っているこのバブ・ルブルーズの音楽。グナーワやそれベースのミクスチャー・ミュージックを知っていると、ゲンブリ(+カルカベ)のあの独特のサウンドに惹かれて聴けるし、ロックなどからこういった楽器に興味を持ったかたにも入門アルバムとしてなら推薦できるものかもしれません。
アルバム・ラストの曲だけ、エフェクトの効いたエレキ・ギターが入っていて、ちょっとブルーズ・ロックっぽい感じがします。
(written 2021.2.6)
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