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2021/07/10

1970年のブルース・イグロアとアリゲイター・レコーズ50年

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(5 min read)

 

v.a. / Alligator Records: 50 Years of Genuine Houserockin’ Music

https://open.spotify.com/album/30aecilbP86mA0dVdWcFp0?si=6DxcmvWpSlaDV8pl_XqUrA&dl_branch=1

 

一人の若者の情熱がシーンを変えることがある。

 

1970年のブルース・イグロア(Bruce Iglauer)もそうでした。ブルーズ好きだったブルースはシカゴの老舗ブルーズ・レーベルのデルマークに勤務する23歳でしたが、あるときサウス・サイドで聴いたハウンド・ドッグ・テイラーにノック・アウトされ一目惚れ。

 

レコーディングさせてほしいと上層部にかけあうも、あえなく却下。ほんじゃあ、っていうんでブルースは独立し、自分で会社を立ち上げたわけですよ。ハウンド・ドッグ・テイラーのレコードを出すために。それがアリゲイター・レコーズのはじまりで、1971年のこと。

 

そこからはじまったアリゲイターの歴史も、今年でちょうど50年というわけで、その半世紀を記念するアンソロジーが出ました。『Alligator Records: 50 Years of Genuine Houserockin’ Music』(2021)。アリゲイターは周年記念アンソロジーを節目ごとに出してきているんで、またか…と思われそうですけれど、こういうのはお祝いですから。

 

1971年にはじまったアリゲイターの歴史。ハウンド・ドッグ・テイラーをきっかけに、ココ・テイラー、ビッグ・ウォルター・ホートン、キャリー・ベル、フェントン・ロビンスン、サン・シールズ、アルバート・コリンズ、ロニー・ブルックスなどなど、いまでは錚々たる、と思える顔ぶれがここからレコードを出してきました。

 

70年代以後のブルーズ・シーンはアリゲイター抜きには語れないほど重要な一大ブルーズ・レーベルに成長したわけですが、その後の80、90年代、そして21世紀と、たぶんあまりブルーズ・ミュージックそのものはたいして姿を変えず、感覚的にあたらしくはなるものの、根本は同じままず〜っと続いてきているのを、アリゲイターは録音・発売し続けてきました。

 

そんな歴史が、CDなら三枚になるこのアンソロジーにはたっぷりつまっています。ぼく自身も以前から大好きなブルーズ・ミュージシャン、そうでもないひと、今回このアンソロジーではじめて知ったひと、種々とりまぜながら、シカゴのモダン・ブルーズとはどういうものかをこれでもかと聴かせてくれるのがうれしいですね。

 

個人的には、いままでも好きだったロニー・ブルックスの「コールド・ロンリー・ナイツ」が、これ、CD1-13曲目に入っていますけど、このヴァージョン、いままで聴いたことないですよ。さがしてみたけど、どれも違う。このアンソロジーでしか聴けないレア・ヴァージョンじゃないですかね。それがも〜う、ギターもヴォーカルもキレキレで、これ、ライヴだけどいつごろの収録なんでしょうかねえ。完璧にノック・アウトされました。

 

アリゲイターは、ロイ・ブキャナン、ロニー・マック、ジョニー・ウィンター、エルヴィン・ビショップら白人ブルーズ・ミュージシャンたちをも迎え入れつつ、ある時期以後はすっかり名門ブルーズ・レーベルとなりました。

 

クリストーン・キングフィッシュ・イングラムとか、ニック・モス・ウィズ・デニス・グルーエンリングとか、トロンゾ・キャノンとか、セルウィン・バーチウッドとか、シェミキア・コープランドとか、リル・エド&ザ・ブルース・インペリアルズとか、さらにはマーシャ・ボール、リック・エストリン、トミー・カストロ、そしてビリー・ブランチらなどなど、2021年でも確実に歩みを進めているアリゲイターの、そんな歴史がぎゅっと詰まったアンソロジーで、思い出がよみがえったり新鮮な発見があったりで、うれしいですね。

 

もはやすっかり名門ブルーズ・レーベルといった顔になったアリゲイター・レコーズですが、今回のアンソロジー・タイトルにも使われていることばどおり、もとはといえばブルース・イグロアがハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズに衝撃を受け、なんとしてもこのひとのレコードを出さなくては!と強く思ったところからはじまった会社。

 

最初はブルースの自宅アパートの一室をオフィス代わりにして出発したんですからね。初心忘るるべからず。いつの時代でも、「これをなんとかしたい!」と熱く思う若い情熱、勤める会社に反対されて引き下がらず、じゃあ自分でやるから!と行動に移すその向こうみずな情熱が、世界を動かし、シーンをつくってきたんです。

 

(written 2021.7.1)

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