定番サンプリング・ネタの宝庫 〜 ルー・ドナルドスン『ホット・ドッグ』
(4 min read)
Lou Donaldson / Hot Dog
https://open.spotify.com/album/4aULzS9CvDJnoX7gz5hCTv?si=gYaZdLsJT06riVI5fioG7g
なにかというとルー・ドナルドスンのファンキーなソウル・ジャズ路線のアルバムの話ばかりしている気がしないでもないですが、すみません、きょうもそれです。1969年の『ホット・ドッグ』。もちろんブルー・ノートから発売されたアルバムで、1990年代にはレア・グルーヴ界隈でもてはやされたそうです。
ルー+エド・ウィリアムズ(トランペット)のホーンズに、チャールズ・アーランド(オルガン)、メルヴィン・スパークス(ギター)、レオ・モリス(ドラムス)のリズム・セクション。ルーはいちおうヴァリトーン(Varitone)の電化サックスを吹いていることになっていますが、聴いた感じそれはわからないですね。
いきなりジョニー・テイラーのヒット曲「フーズ・メイキング・ラヴ」のカヴァーで幕開け。う〜ん、ファンキー。こういうジャズが大好きな向きにはたまらない一曲でしょう。これと、アルバム・ラストの5曲目アイズリー・ブラザーズのカヴァー「イッツ・ユア・シング」は、ヒップ・ホップDJにとっては定番らしく、サンプリングされまくっているみたい。だぁ〜って、グルーヴィですもんねえ。
ところで、1「フーズ・メイキング・ラヴ」ではルーはサックスを吹かずヴォーカルだけ。演奏はオルガン・トリオに任せてあって、トランペットも入らず。グルーヴだけでノセようっていう意図がよくわかりますよね。アルバムのその後の曲ではジャジーな展開もみせますが、基本、グルーヴ一本でのノリ命でやっているのというのは一貫しています。
2曲目以後、目立つのはメルヴィン・スパークスのギターとレオ・モリスのドラミング、特にメルヴィンですね。カァ〜ッコイイですよねえ。シングル・トーンで細かいフレーズをファンキー&グルーヴィに弾きまくるさまにはほんとうに感心します。以前も書いたけど、大好きなギターリストなんですよね。グラント・グリーンと同系統ですが、グラント以上、と思える瞬間があります。
3曲目「ボニー」(トミー・タレンタイン)だけがアルバムで唯一のバラードで、しかもメロウ。バラードでメロウ&スウィートになっていくというのもソウル・マナーじゃないでしょうか。1969年の録音だけど、ジャズ界でもそんな傾向があったんですね。このメロウ・バラードではルーが雰囲気満点にアルトを吹いています。
4曲目のアルバム・タイトル曲「ホット・ドッグ」。ルー自作のソウル・ジャズ・ナンバーですが、テーマ・メロディにちょっとひょうきんな味わいもかぎとれるあたりだって楽しいですね。ソロまわしになると、管楽器二人のソロよりも、やはりギターとオルガンのほうが聴かせるグルーヴィな内容なのが目立ちます。演奏時間が長いので、たっぷり味わえるのもいいですね。
アルバム・ラスト5曲目の「イッツ・ユア・ソング」は、上で書きましたようにアイズリー・ブラザーズのカヴァー。そのグルーヴィさを残しつつ、ややレイジーな雰囲気になっているあたりがまた違ったグルーヴを産んでいます。ここでもテーマを演奏するのはホーン陣ではなくオルガン。いちおうオブリガート・リフを吹いてはいますけどね。そのままオルガン・ソロになります。メルヴィンのギターがやっぱりいいですね。
(written 2021.3.11)
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