ヒップ・ホップは1984年にハービーに教わった
(4 min read)
Herbie Hancock / Sound System
https://open.spotify.com/album/00GMga21QXevpiQwReoYhV?si=VFc2gla9RG6OkiDoJyysGg
本当は1983年の「ロッキット」(『フューチャー・ショック』)だったと言いたいところなんですが、実はあのアルバム、当時は買わなかったんですよねえ。どうしてだったのか、まったく憶えていないです。新しいもの好きなのにねえ。
で、次作の同路線でやはりハービー・ハンコックがビル・ラズウェルと組んでいる1984年の『サウンド・システム』が、ぼくにとってのヒップ・ホップ入門になりました。といってもあのころ「ヒップ・ホップ」ということばすら知りませんでしたけども(そもそも日本に入ってきていたのか?)。
とにかくこんなサウンド、というかビート感ですね、いままで聴いたことないぞ!なんだこれは!ニュー・ミュージックだ!と興奮したのは事実で、どんなふうに音をつくっているかみたいなことまでは当時考えたこともありませんでした。
こういったハービー(+ビル・ラズウェル)がぼくのヒップ・ホップ初体験だったわけですから、ラップのことはハナから頭になくて、だからラップもヒップ・ホップ・ミュージックの一部分なんであるというのは、ちょっぴりあとになってから知ったことです。
それよりもスクラッチですね。スクラッチじたいはもうちょっと前に聴いたことがあったかもしれませんが、こんなにカッコいいものだとは思っていませんでした。まさしくハービー+ラズウェルのこのへんの音楽でスクラッチのカッコよさを知り、あぁいいなぁ〜って心から感じ入ったんですよね。
あと、この『サウンド・システム』ではバラフォンとかコラとかカリンバといった生演奏のアクースティックなアフリカ楽器がどんどん使われているのも当時のぼくにはかなり印象的で。ビートはコンピューター打ち込みでつくった自動演奏のメカニックなものなのに、こんなふうにアフリカ楽器が混じると最高におもしろいじゃん!と、そこはいまでも感動しますね。
オリジナル・レコードでラストだった6曲目の「サウンド・システム」には電気トランペットで近藤等則が参加しているのも、個人的にポイント大。まるでマイルズ・デイヴィス・サウンドそのまんまですけど、1984年ならまだ現役だったマイルズは、しかしもうすでに電気トランペットをやめていましたからね。フレイジングなんかはここでの近藤も100%(70年代)マイルズのスタイルです。
ハービーがキーボード・シンセサイザーで弾くフレーズは、いま聴くと時代を感じてしまうもので、いやぁ古っ!って思うんですが、でも84年当時はなんてカッコいいんだとぼくは震えていました。ビート、というかトラック・メイクも、このアルバムのそれはヒップ・ホップとしてはいまや時代遅れですけど、当時のことをいまだよく憶えている身としては、それでもけっこう聴けます。
でもホント、当時これが「ヒップ・ホップ」というものだという認識なんかはゼロで、だってことばすらまだ知らなかった(日本に入ってきていなかった?)んですからねえ。意識的にヒップ・ホップだということをわかった上で聴くようになったのは、たぶんこの約10年後ごろに大爆発した Us3 のシングル「カンタループ(フリップ・ファンタジア)」(1992)からでした。これもハービーの曲をサンプリングしたものだったのは奇遇です。
そのちょっと前に「キープ・オン・ムーヴィン」(89)でソウル II ソウルにハマっていましたけど、うん、そのへんからですね、ぼくが自覚的にヒップ・ホップだとわかった上でこういったビートを気に入って聴くようになったのは。1980年代末か90年代初頭あたりから。1993年にグールーの『ジャズマタズ』あたりで個人的にブームを迎えます。
(written 2021.3.26)
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