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2021/08/28

パトリシア・ブレナン『Maquishti』の再生回数が少なすぎる

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(7 min read)

 

Patricia Brennan / Maquishti

https://open.spotify.com/album/52xnMW8ir7yfyuVzUSpeTZ?si=25Sngl5sT8uTKI_7JJ5Vyw

 

ヴァイブラフォン独奏によるパトリシア・ブレナンのデビュー作『Maquishti』がリリースされたのは2021年1月15日。ぼくが知ったのはそのちょっとあとになってCD入荷を告げるディスクユニオンのツイートがあった同月下旬ごろだったと思います。

 

で、Spotifyでさがしてみたらあったので聴いてみて、惚れ込んでしまい、そのままヘヴィ・ロテに。完全にトリコになってしまっているというか、(比喩じゃなく文字どおり)毎晩ベッドに入る前に必ず聴いています(した)。だから、もう100回以上は聴いたんじゃないですかね(記事執筆時点)。それほど心地いい。

 

これ、もちろんレコードもCDもあるんですけど、ぼくはSpotifyで聴いています。で、以前もなにかのときにちょろっと言いましたけど今年四月頭のデスクトップ用Spotifyアプリの大幅刷新で、各曲の再生回数が表示されるようになったんですね。それでパトリシアの『Maquishti』のことも見てみたら、っていうか必然的に目に入るわけですけど、これが発売後三ヶ月以上経過しているとは思えない少なさなんですよね。

 

曲ごとに集計されていますが、このアルバムでいちばん再生回数が多いのでも2曲目「Solar」の8万回(記事執筆時点)。少ないのになると万回に届いてなくて4千とか3千回程度しか再生されていません。こりゃ、いくらなんでも少なすぎじゃないのかなあ。そんなに聴くひといないのか、このアルバム。みんな、フィジカルで買ってんの?そうとも思えないけどねえ。

 

多くて8万回という再生回数がいかに少ないものなのか、それは人気のある有名音楽家の有名曲をみればわかります。ぼくがパッとすぐ思いつく範囲だと、たとえばビートルズとかプリンスとかマドンナとか。ちょっとSpotifyで覗いてみたら、たとえばビートルズの「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」あたりで3億回以上再生されているんです。

 

プリンスの「パープル・レイン」が約2億回。ローリング・ストーンズの「サティスファクション」が約4億回。デレク&ザ・ドミノズ(エリック・クラプトン)の「レイラ」が約2億回。レッド・ツェッペリンの「天国への階段」が約5億回。

 

このあたり、聴くひとはすでにほぼみんなCDなどのフィジカルで持っているだろうという音楽家のでもそれくらいのSpotify再生はあるもんなんです。サブスク・ネイティヴ世代ともなれば、たとえばビリー・アイリッシュの「バッド・ガイ」(2019)が17億回再生。

 

世間一般的に人気のないジャンルであろうジャズ分野だと、たとえば全ジャズ史上最人気アルバムとも言われるマイルズ・デイヴィスの『カインド・オヴ・ブルー』のうち、Spotifyで最も聴かれているのが3曲目の「ブルー・イン・グリーン」で1億回。アルバムのシグネチャー・ソングともいうべき1曲目の「ソー・ワット」が6千万回とあんがい少ないですけどね。

 

こんな具合ですから、いくら無名の新進音楽家のデビュー作で話題にもなっていないとはいえ、パトリシア・ブレナンの『Maquishti』はあまりにも聴かれなさすぎです。このアルバムに対する世間の関心はほんとうに低いんだな、まるで注目を集めていないし話題にもなっていない、どんなにいい音楽でも人気が出ないものは出ないんだということを痛感します。

 

そういった超マイナーな音楽家の、だれも話題にすらしていない、しかしすぐれた作品に、光を当て、耳目を集めるようにするのは、音楽マスコミ、音楽ジャーナリズムの仕事じゃないんですかね。その点でも日本語の音楽ライターたちはパトリシア・ブレナンにかんしサボっているとしか思えません。

 

たとえばGoogle検索で “Patricia Brenann” と入力してリターン・キーを押すと、相当数の英語記事が出ます。だから(主にたぶんアメリカの)英語ジャーナリズムはこのアルバムを高く評価して、それなりのレヴューをどんどんネット掲載しているんですよ。

 

ところがカタカナで「パトリシア・ブレナン」と入れて検索しても、ディスクユニオンなど通販サイト以外は、ぼくの書いた記事ともう一個、「サナコレ」っていうアマチュア音楽ブロガーのサイトしかヒットしないんですね。なんてこった!こんなことでいいのか!?

 

紙メディアのならすでにどなたか輸入盤で紹介しているかもしれないですが、おそらく期待できないでしょうねえ。つまりパトリシア・ブレナンのソロ・アルバム『Maquishti』、こんなにもすぐれた、こんなにも美しい音楽なのに、聴かれもしないければ(日本語圏では)まったく話題にもなっていないというわけで、なんとも嘆かわしい現状なんですね。

 

必ずしも人気が出るとはかぎらないところをぼくもどんどん掘っているのかもしれませんが、パトリシア同様に夢中になっているアヴィシャイ・コーエンの『Two Roses』だってSpotifyでみたら各曲とも数万回単位の再生しかなくて、それでもこっちはまだリリースされて一ヶ月も経過していませんからね(記事執筆時点)、こんなもんかもしれません。

 

もはやフィジカル売上よりも、サブスク・サービスでの再生回数による収益金分配が音楽産業の中心(総売上の八割以上)となったいま、それを上げるように音楽評論・ジャーナリズム業界も動かないといけないんじゃないですかね。パトリシア・ブレナンの『Maquishti』にかんしては、こんなにもすばらしい音楽なのに、そういった努力がまったく足りていません。

 

すばらしい音楽だ、ということを熱心に書くひとが、ぼく以外ほぼだれもいないんですから。

 

(written 2021.5.8)

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