淡色系レバノン歌謡 〜 アビール・ネフメ
(3 min read)
Abeer Nehme / Byeb’a Nas
https://open.spotify.com/album/75Kg82i925AgtrYJTqJyJU?si=NRrqAH4aQZuJXVpBUTJfyA&dl_branch=1
レバノン人歌手、アビール・ネフメ。以前bunboniさんが紹介していましたね。そこでとりあげられていたのは2018年作でしたが、Spotifyで見ると最新作『Byeb’a Nas』(2021)が聴けます。
こ〜れがまた、いいんですよねえ。アビールは1980年生まれですし、そこそこ活動してきていてアルバムもわりとありますから、若手という感じじゃないですね。中堅どころといったあたりでしょうか。同じレバノン歌謡では、数歳年下にヒバ・タワジがいますが、絢爛豪華で派手なヒバとは対照的な、地味で淡く歌う歌手です。
そういうのがアビールのばあいは好結果に結びついていますよね。あたたかみのある中音域がベースになっている堅実なアビールの歌唱法は、近年世界で主流になってきているスタイルの一環と言えましょう。曲のよさ、アレンジの秀逸さをそのまま活かせる歌唱法ということで、実際、この2021年作はかなり聴きごたえのあるいい曲が揃っています。
曲はアビール自身で書いているものもあるし、ウサマ・ラハバーニの曲なんかも混じっている模様。ぜんぶ新曲なんですかね。だれがプロデュースやオーケストレイションをやっているのかわかりませんが、ウサマだとしたらヒバのときとの大きな違いに驚きます。このアビールの作品では、リズム+ストリングスによるどこまでも控えめなサウンドですからね。
そういったあたり、後輩の有名人ヒバ・タワジよりも大先輩のフェイルーズを想わせるサウンドと歌いかたで、正調レバノン歌謡の新世代としておおいに期待できる存在じゃないでしょうか。西洋的なサウンドやオーケストレイションでくるまれたアラブ的な哀愁に満ちたメロディが心に沁みますし、それをストレートに聴き手に伝えるアビールの歌がみごとです。
その決して気どらない、技巧をみせびらかさない、淡くストレートかつ素直に、さわやかさすらただよわせながら、歌ってみせるアビールのやりかたで、こういった曲の数々がフルに活きるというもんです。レバノン歌謡とはどういうものか、じっくり&しっとり味わうことのできる好アルバムで、ぼくはもうすっかりヘヴィ・ロテ状態。
ラスト8曲目だけは、ちょっと西洋的っていうかアメリカン・ポップスを思わせる軽い曲調で、ちょっとディズニーっぽいフィーリングもあるチャーミングな曲。アラブふうな哀愁感はありませんが、それまでとの雰囲気の変化がとてもいい感じに聴こえます。
(written 2021.8.24)
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