配信時代のシングルにカップリング曲はいらない
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応援しているわさみんこと岩佐美咲、今年も新曲が発売されることになりました。タイトルは「アキラ」で、10月6日発売予定。上で掲げた写真がそのための宣材写真です。
このお知らせが7月28日に出たとき、一部のファンから、たぶんずっと前から抱いてきた思いでしょうけど、美咲のシングルにはどうして表題曲しかオリジナル新曲が収録されないの?という疑問というか不満の声があがりました。
実を言いますと、ぼくも美咲を知った2017年初春からずっと同じように感じてきているんですよね。美咲のすべてのシングルは表題曲しか新曲が収録されず、それ以外はそもそも用意すらされず、カップリング曲はどれもこれもぜんぶカヴァー。
たぶんこんなのは美咲だけじゃないですか。ほかのどんな歌手でも、ニュー・シングルを発売するとなれば、表題曲以外にもう一曲、二曲、用意されたオリジナル新曲が収録されるもの。そうじゃない歌手がいるとは思えません。
美咲は歌手活動にあまり力を入れてもらえていないのかな?と疑問に思う次第です。でもこれ、よく考えたらニュー・シングルを出す際にカップリング曲が必要だというのは、フィジカル時代の発想なんですよね。はっきりいえばアナログ・レコード時代の名残。
むかし新曲発売のシングルは45回転のドーナツ盤でしたから。その前にSP時代がありましたけど、やはり同じ一曲単位。送り手側が売り出したい新曲をA面に収録するわけですけど、もう片面になにも入れずツルツルのままにしておく、というわけにはいきませんからね。
といってもSP時代の初期にはそういうこともあったみたいなのですが、片面ツルツル時代は例外で、通常は新曲発売のついでに、放っておくわけにはいかないもう片面に一曲、ついでみたいに収録したんです。
これがシングル曲のカップリング習慣のはじまり。だから、アナログ・レコード時代にはA面とB面で一曲づつだったので、カップリング曲は一曲だけ。それがあたりまえでした。
CD時代になって、シングルもCDで発売されるようになると、表裏がなくなってこの二曲ワン・セットという拘束が消えましたから、だからシングルCDのカップリングも数曲入っているということが増えました。そうなると「2」を意味するカップリングという用語を使うのも本来はおかしいわけですけどね。
ともあれ、CDシングルには三曲とか四曲入っていることが多くなっているのですが、いまや2021年ともなればCDですらなく、サブスクやダウンロードなどネット配信で新曲をリリースする歌手や会社も増えているのはご存知のとおり。
するとですね、たとえばSpotifyなどサブスクで新曲をリリースするのであれば、もはや曲数にこだわる必要がまったくないわけですよ。出すのは新曲一個だけでいいんです。
実際そうやって一曲だけサブスクでリリースするケースは増えていて、ぼくの知るかぎりソナ・ジョバーテ(ガンビア/イギリス)もエズギ・キュケル(トルコ)もそうしています。サブスクで、ダウンロードもあるかもですけど、新曲一個だけ、次々リリースしています。
これがレコードとかCDとかだと一曲だけというわけにいかないと思うんですよね。パッケージ・フォーマットのない配信だからこそ一曲だけでリリースできるわけです。ホントこういうのこそ、いまの時代の、2020年代の、シングル・リリースの望ましいありようでしょうねえ。
さて、来る10月に発売される岩佐美咲のニュー・シングル「アキラ」。もちろんCDで出ます。しょうがないっていうか、演歌とか歌謡曲とかの世界はまだまだ旧弊なので、フィジカル・パッケージにこだわる気持ちはわかります。それで、発表されているカップリング曲はやっぱりカヴァーばかりで、こんなもんなんでしょうかねえ。
美咲のばあい、昨2020年7月1日にいままでの全シングル表題曲九曲がサブスクに入りました。今回の「アキラ」もきっと入るんじゃないでしょうか。それらはもちろん一曲単位で存在しているんで、やっぱりこういうのは配信ならではっていうことですよね。
(written 2021.8.4)
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