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2021/09/09

ジャズの廃仏毀釈?

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(6 min read)

 

Michael Dease / Give It All You Got

https://open.spotify.com/album/04EmPprPjfaeleHecmo21h?si=75QRtEuAQP61EKijeQipUQ&dl_branch=1

 

萩原健太さんのブログで教えてもらいました。
https://kenta45rpm.com/2021/04/06/give-it-all-you-got-michael-dease/

 

この記事冒頭で健太さんが書いていること、ぼくも全面的に共感できて、ほんとうにこのとおりだよねえと心から膝を打つ内容なんですよね。

 

というのはジャズの新しい傾向、ニュー・チャプターっていうんですか、その手のもの、たとえばロバート・グラスパーだとかカマシ・ワシントンだとか、もちろんワクワクしますし、すばらしいと思うんですけれども。

 

しかし(健太さんが強調されているように)そういった新しいジャズのそのよさを強調したいがためになのか、古いスタイル、過去のものを全否定するようなひともいたりして、ファンばかりか専門家のなかにもいて、それはちょっとどうなんだろう?と。

 

新しいものが入ってきたら、過去の古いものを捨てて、いわば伝統と断絶するようにして、次へ進む、という傾向は、うん、日本には廃仏毀釈という歴史がありますからね、そういう民族なのかもしれませんよねえ。残念です。

 

西洋のルネサンスがそうであったように、時代の新潮流がゼロから生み出されるわけもなく、それは常に伝統の再解釈、読みなおしであるわけです。ルネサンスで新しい文化がどんどん生まれましたけど、ことばの意味どおりこれは古代ギリシア、ラテンの古典復興というのがきっかけだったんですからね。

 

ポピュラー音楽、ことにジャズの世界は時代の進展とともに新しいスタイルが生み出され次へ次へと進んでいくという歴史をたどってきたと思いますが、そして新しいもの、自分たちが生きている時代のスポットライトを浴びている新鮮なものは無条件にワクワクしますが、それで過去のものが消え去るわけじゃないんですよ。

 

個人的には「積み重ね」「累積」だと思っていて、新しいスタイルのジャズが誕生したら、歴史のなかにまた一枚ピースが加わるっていうことだろうと。過去を否定するのではなく、いままでに生まれたさまざまなスタイル(ニュー・オーリンズ、ディキシー、スウィング、ビ・バップ、ハード・バップ、モード、フリー、フュージョン、ワールド、アシッド、クラブなどなど)が同時に存在していて、どれも廃れることなく生き続けているんだっていう、そういうことじゃないかなあ。

 

だから時代が進めば積み重ねのピースが増えて、ぼくらリスナーにはどれを聴くかの選択肢が増えて、好みに応じて自由に選べて、喜ばしいねと、ぼくはそんなふうに受けとめているわけなんです。革新的なジャズは過去を否定するものなんかじゃないです。

 

「時代遅れ」ということになった、いわば季節外れの洋服みたいにクローゼットのなかにしまわれたようなジャズのスタイルだって、消えてなくなったわけじゃなく、それを取り出していまの時代の自分たちの音楽として演奏するミュージシャンはやっぱりいるわけですから。伝統的なスタイルのジャズだって、今後もイキイキと生き続けていってほしいと、ぼくは心から願っています。その一方で新しいジャズも楽しいしおもしろい。

 

もちろん2020年代のコンテンポラリーなジャズは文句なしにカッコいいとぼくも思うし、それを好きなみんながそれを言うのは自由だどころか、どんどん言えばいい。ぼくもこのブログでふだん言うことは多いです。でも、だからといってその新しい価値観を強調したいがための踏み台として古いジャズを否定することはないんじゃないですか。併存していけばいいんであって。

 

きょういちばん上で紹介したマイケル・ディーズというトロンボーン奏者もまた古い時代のというか、1950年代後半〜60年代前半に一世を風靡したようなファンキーなハード・バップを演奏するミュージシャン。『Give It All You Got』はその2021年新作なんですよ。

 

今年の新作といったって、もちろん2021年的な要素、同時代への訴求性みたいなものを求めてはいけません。ここにあるのはある種蒸留されたみたいに典型的なハード・バップですからね。ホーン三本+オルガン+ドラムス+パーカッションで演奏する、あの時代のいかにもなジャズ・ミュージック。

 

マイケル・ディーズは2014年以後ポジ・トーン・レーベルから作品を発表し続けていて、『Give It All You Got』は八作目。今作はジム・アルフレッドスンのオルガンを中心に据えたあたりにサウンド・メイクのキモがあります。そのことで、いかにもなファンキー・ジャズの雰囲気を演出していますよね。

 

そう、ちょうどフレディ・ハバード+カーティス・フラー+ウェイン・ショーターの三管編成だった時代のアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズあたりを彷彿させる音楽で、ブレイキーは使わなかったオルガンのサウンドをフィーチャーしたことで、いっそうあの時代のブルー・ノートらしさみたいなものが出ているかなあと思います。

 

ときどきこういうのが新作として出るっていうのが、本場アメリカのジャズ・シーンの懐の深さ、豊穣さであるわけです。

 

(written 2021.9.8)

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