アレグリア・サンバ・ソウルの大傑作 〜 ヴァルミール・ボルジェス
(3 min read)
Walmir Borges / Isso É Coisa de Baile
https://open.spotify.com/album/52h3GsDzbOdzZX1o75Ss1r?si=PrDKt-lCT22dtV2IcFkGPg&dl_branch=1
ヴァルミール・ボルジェス(ブラジル)の新作『Isso É Coisa de Baile』(2021)がとてもいい!傑出しているじゃないですか。ぼくはちょっとビックリ。なんて楽しい音楽なのでしょう。
リリースされたのが8月31日とついこないだ、フィジカルはまだないみたいだから、日本語で話題にしているひともほぼいないですけど、ぼくは完璧に降参しました。こんなに楽しいサンバ・ソウルならいくらでも聴いていたい。35分で終わってしまうのがもったいないくらいでねえ。
1曲目から楽しいですが、ライヴ収録というわけじゃないと思う拍手の音から入る2曲目から、もう陽のアレグリア・ミュージックが全開。この打楽器リズム、アクースティック・ギターのカッティング(ヴァルミール自身でしょう)でつくる跳ねる空間、そしてなんといっても歌メロが美しくて、コーラスもそれをもりたてます。
2曲目は終盤ガラッとパターン・チェインジしますが(スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「スタンド!」を想起)、落ち着いたビート感の3曲目だって最高の楽しさ。余裕のある大きなメロディ・ラインとヴァルミールのヴォーカルがほんとうにすばらしい。ここでもコーラス・セクションがいいですね(全曲そうですが)。
この新作におけるヴァルミールの音楽にはそんなに多様なパターンや曲想があるわけじゃなく、どれも似たようなつくりなのですが、たったの35分間ですからね、アレグリア・ムードで最初から最後まで一気に駆け抜けるようなな爽快感すらあります。9曲目のメロディの動きにはやや陰影というか哀感もありますけどね。
どれも曲がいいし、メロディがきわだって歌いやすく明快で、しかもビートが楽しく快活。さらにヴァルミールのヴォーカルは滑舌がよくて、歯切れのいいディクションが心地いいんですよね。それは曲のビート感やノリのよさと一体化したものであるように思えます。
それでいて、勢いに任せて走るんではなく、細かい部分まで綿密によく考えて練り込んでつくり込まれたていねいな音楽であることも伝わってきます。しかも不自然な加工臭は皆無で、きわめて自然体で、ノビノビやっているオーガニック&ナチュラルな姿勢が音に出ているのがすばらしい。
とにかく聴いていて心地よく、楽しい、ノレる 〜 これに尽きるヴァルミールのこの新作。気分はすっかりウキウキです。今2021年のブラジルものでは断然 No.1 でしょう。ブラジルに限定しなくても、こんな傑作、滅多にない!
(written 2021.9.6)
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