ビートルズのブルーズ 10
(4 min read)
The Beatles / Blues 10
https://open.spotify.com/playlist/1wT60hxRcaaOE0ALHtFwUB?si=8e5f0b7f9a854979
同世代のローリング・ストーンズや、1960年代後半から活躍したUKロック・バンドなどと違い、ビートルズにブルーズ・バンドのイメージはないでしょう。アイドル・ポップに分類されることすらあった四人ですからね。
しかし1962〜69年のレコーディング・キャリアをじっくりたどると、ビートルズにもけっこうブルーズ・ナンバーがあるというのはたしかなこと。それをピック・アップして、さらに10曲にしぼって、プレイリストにしてみたのが、いちばん上のSpotifyリンクです。
かっちりした定型12小節3コードのブルーズ・ナンバーだけでなく、それのヴァリエイションみたいなものもある程度ふくめました。ブルーズって実はフォーマットじゃなくてフィーリングのことだろうとぼくは考えていますから。
初期はカヴァーも多かったビートルズですが、それはきょうのプレイリストから外して、オリジナル・ナンバーだけに限定しました。それで、最初の案では20曲近いセレクションになっていたんですが、ちょっとまとまりに欠けるしブルーズ定型からあまりに外れすぎるものがあると判断して、すっきり10曲だけということに。
ビートルズのブルーズはあまりブルーズっぽくないというか、いや、ブルーズ「らしさ」というのもよくわからないイメージですが、ブルージーだったりファンキーだったりする感触がないものも多いですよね。そこはいかにもこのバンドらしいところです。もちろん例外はあり。
例外とはまずなんたってデビュー・シングルの「ラヴ・ミー・ドゥー」がブルージーなブルーズですし、『レット・イット・ビー』に収録されている「フォー・ユー・ブルー」もけっこうくっさ〜いかんじです。後者はあえてそこを狙ったような意図があったんだなと聴けばわかります。
さらに『ホワイト・アルバム』の「ヤー・ブルーズ」がまさに完璧なブルーズ・ロック・ナンバーですが、これはパロディ。1968年の録音ということで、ちょうどイギリスにおけるブルーズ・ブームの真っ只中。UKブルーズ・ロック・バンドもどんどん出てきていた時期で、そんな流行をジョン・レノン流に皮肉った一曲なんです。テンポやリズム・パターンが曲のなかでなんどか変化するのもこの時期のジョンらしいところ。
ポール・マッカートニーの歌うブルーズでいえば、ぼくがいつも感心するのはシングル曲「アイム・ダウン」。ちょうどこのころ(1965年発売)ポールはリトル・リチャード・ナンバーをいくつかカヴァーしていましたし、だからそんなスタイルで一曲自分でも書いてみようとしたっていうのがよく出ているオリジナル・ブルーズです。曲調もヴォーカルもまさに爆発的で、大好き。
さらに『ホワイト・アルバム』に収録されている「ワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・オン・ザ・ロード?」。シンプルでロウな定型ブルーズで、歌詞なんか「道でやろうじゃないか」とただひたすら反復するだけ。でもぼくはこの曲がかなり好きなんですね。こういうのこそまさにブルーズらしさで、シンプルさ、生の感情をぶつけるフィーリング、そして露骨なセックスへの言及という面でもブルーズ・ミュージックの特色をよくとらえたものだなと思います。
(written 2021.7.4)
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