新作ブルーズ三題(3)〜 ベン・レヴィンのピアノ・ブルーズ
(4 min read)
Ben Levin / Still Here
https://open.spotify.com/album/1N97uPCrk9tdP5tQD730pN?si=KJazz2w7SGafFaXOvfydng
キャリア七年目、米オハイオ州シンシナティを本拠とするブルーズ・ピアニスト、ベン・レヴィン。四作目のアルバム『スティル・ヒア』(2021)も、いままでどおり完璧に1950年代ふうのピアノ・ブルーズそのまんまなヴィンテージ・ミュージック。
ベンは22歳なんですけど、マニアックな音楽を愛好するギターリストの父親からの影響もあり、幼少時からプロフェッサー・ロングヘアとかパイントップ・パーキンスとかオーティス・スパンとかレイ・チャールズとか、そのへんのブルーズ・ピアノ・ミュージックで育ったらしいんです。
最初のきっかけとしては、例のレイ・チャールズを描いた伝記映画『レイ』(2004)を父親が観ているのをいっしょに観たのが六歳のときで、この映画にいたく感動したベン。さっそく地元シンシナティのブルーズ/ブギウギ・ピアノの名手、リッキー・ナイのもとで修行をはじめたそうですよ。15歳のころにはフル・タイムでクラブ・ギグをこなすようになったんだとか。
21世紀にもいろんな若者がいるなあと思いますが、最新アルバム『スティル・ヒア』でも、いまだにこういう音楽をやっているよっていうヴィンテージ・スタイルまっしぐら。しかもジャケットを見てください、なんと堂々と「モノフォニック」宣言までしちゃっているという、そのうえ開襟シャツ姿でっていう、なんだかレトロ愛もきわまっていますよねえ。
聴けばだれでもわかるタイムレスなブルーズ、ブギ・ウギ、ニュー・オーリンズ・リズム&ブルーズの世界が展開されていますが、ぼくの聴くところベンの音楽にはどうもプロフェッサー・ロングヘアの影響もかなり濃いというのが最大の聴きどころのような気がします。
自作の曲づくりからしてそうだし、ピアノも随所でフェスふうにころころ跳ねているし、カリブ〜ラテンな香味も強くただよっていたフェスのああいっった音楽がしっかりベンのスタイルには継承されているように思えます。+レイ・チャールズかな、最大の影響源は。アルバムには一曲だけキューバンというか、はっきり言ってマンボ・ブルーズみたいなのがあるのも明快にベンのルーツを物語っていますね。
バンド編成はベンのピアノ&ヴォーカルに、父エアロン(Aron)のギター、+ベース&ドラムスと必要最小限で、サックスすら入っていないという簡素さ加減。父エアロン(アーロン?)のギターも、子のベンが22歳なんだからまだ若いはずだけど、けっこうオールド・ファッションドなギターを弾いています。一曲だけ(8)それをフィーチャーしたインストルメンタルもあります。
こういった音楽をいまの時代に22歳がやっているなんて、オジサン臭いよとか、OKだけどそれならそれでまだ未熟で若すぎるとか、いろんなことを言われているだろうなと想像しますが、考えてみればブギ・ウギだってシカゴ・ブルーズ・ピアノだってフェスだって、かつてあの当時は若くて活きのいいピチピチの音楽だったわけですからね。
だから、2021年になってもこういった文化を継承して若々しくプレイしている若者がいるのを聴くのは、それはそれで楽しいもんです。ヴィンテージのワインやウィスキーをたったいま開栓したみたいで。
(written 2021.11.13)
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