エリントンかミンガスかっていう 〜 ロニー・ボイキンズ
(3 min read)
Ronnie Boykins / The Will Come, Is Now
https://open.spotify.com/album/5zIMgrL3ISTvnk9wxXzbIq?si=rKxms-_SRgmRQxUZYUeOQw&dl_branch=1
ジャズ・ベーシスト、ロニー・ボイキンズの1975年作『ザ・ウィル・カム、イズ・ナウ』(74年録音)。いままであまり知られることなく50年近くが経過していますけど、なかなか充実したアルバムですよね。
ロニー・ボイキンズは1935年シカゴ生まれ、10代のころからベースを演奏しはじめたようですが、50年代なかばからサン・ラとの関係がはじまり、61年楽団に初参加。その後楽団のニュー・ヨーク進出と行動をともにし、サン・ラ・アーケストラの主要メンバーとして活躍した存在です。
そのほかサイド・メンバーとしてさまざまなジャズ・ミュージシャンの作品で演奏しているものの、自身のリーダー作は生涯この1975年『ザ・ウィル・カム、イズ・ナウ』一つのみ。それが2021年、復刻されたんですよ、たしか。それでアルバムの存在をぼくも知ったわけなんです。
この作品、たぶんサン・ラ色満載ということなんでしょうけれども、サン・ラにいままであまり縁がなかったぼくとしては、デューク・エリントンやチャールズ・ミンガス的な色彩感で満たされていると言いたいできばえで、思わず快哉を叫びます。たいへん好みの音楽ですね。
特にミンガス色かな、1曲目から濃いんですが、ボイキンズ自身は随所でアルコ弾きのベース・プレイも聴かせています。ややアトーナルで、手法的にもフリー・ジャズに近いやりかたで演奏されているのが聴きものでしょう。しかしながら中人数編成のホーン陣アンサンブルはしっかりアレンジされていて、統率のとれたアンサンブルを展開します。
そんなあたりもエリントンやミンガスのやりかたに近いんじゃないかと思えるこのアルバム、2曲目は大々的にボイキンズのアルコ弾きをフィーチャーした美しくリリカルなバラード。これがアルバムの白眉だと言いたいくらいに感動的で、バラードとしてもミンガスが書きそうな曲との印象があります。
エリントンふうなホーン・アレンジで進行する3曲目、4曲目、5曲目と小品ながら好演が続き、アルバム・ラストは一曲目とならぶ長尺12分超えの演奏。それまでとはこれまたイメージの異なるコレクティヴ・インプロヴィゼイションで、しかも全面的にアトーナルなフリー演奏。
(written 2021.7.18)
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