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2022/01/01

ジャジーなレトロ・ポップスが、いまドープ ver.1.0

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(7 min read)

 

日本のいわゆるZ世代(20代なかば以下)のあいだに「昭和」ブームがあるみたい。こどものころからスマートフォンなどのデジタル機器とインターネットがあたりまえにあったみんなは、アナログ・レコード、昭和歌謡、純喫茶、銭湯などに懐かしさではなくいま初めて出会う新鮮なカッコよさを感じているようです。

 

世界のポピュラー音楽シーンだと、そんな復古ブームがヒップ・ホップはもちろんロックすら飛び越えて、1950年代中期より前のジャズ時代へと向かうようになっています。ここ数年かな、もうすっかり定着したムーヴメントになりました。

 

このことはだれに教わったわけでもなく、近年リリースされる新作アルバムのなかにそうした傾向を示すものがあきらかに増加中なので、自然に気がつくようになりました。はっきりしてきたのはここ二、三年、2019年ごろからですかね。

 

このブログにパソコンでアクセスすれば右サイド・バー下部に検索窓が出ますので、そこに「レトロ」とか「ヴィンテージ」とかひとこと入れてボタンを押してみてください。該当する過去記事が一覧表示されます。

 

自分でもそうやってもう一回確認したここ数年のジャジーなレトロ・ポップス・ムーヴメント、すでにとりあげたなかからあてはまるアルバムの具体例をリリース順にちょこっと列挙してみましょう。

 

・原田知世 / 恋愛小説2〜若葉のころ(2016)
・孙露 / 十大华语金曲 (2017)
・Samantha Sidley / Interior Person (2019)
・Davina and the Vagabonds / Sugar Drops (2019)
・Kat Edmonson / Dreamers Do (2020)
・Hailey Tuck / Coquette (2020)
・NonaRia / Sampul Surat Nonaria (2020)
・Laufey / Typical of Me (2021)
・Miss Tess / Parlor Sounds (2021)
・メグ&ドリンキン・ホッピーズ / シャバダ・スウィング・トーキョー (2021)
(すべてSpotifyなどサブスクで聴けます)

 

ほかにもたくさんありますが、参考までに近年のこうしたジャジー・レトロ・ポップ歌手たちの音楽的傾向をぼくなりに分析して箇条書きで11個にまとめてみました。

 

1)ロック・ミュージック勃興前の時代への眼差し

2)知世54歳、ダヴィーナ42歳のほかは全員30代以下の新世代

3)ヴィンテージなアナログ感志向

4)電気・電子楽器を基本使わず、アクースティックな少人数編成でのオーガニックな生演奏

5)ジャズ、それもモダン・ジャズ以前、1930〜50年代ふうのスウィング・スタイル

6) 2ビート、4ビート

7)有名曲でも自作でも、グレイト・アメリカン・ソングブック系

8)おおがかりでない、ちょっとした応接間でやって楽しんでいるようなこじんまりした親近感、等身大

9)感情をあらわにしない、おだやかに抑制された表現

10)ときどきかすかにブルージーだったり、ほんのりラテン・ビート香味がまぶされていたりも

11)なぜかみんな女性歌手だ

 

中澤卓也など日本のいわゆる演歌第七世代なんかもやや共通する特色を示しているかなと感じるんですが、こうした新世代歌手たち最大の特色は、アット・ホームな親しみやすさ、近づきやすさです。

 

2010年代以後のソーシャル・メディア世代で、みずからアカウントを持ち、積極的に日常や仕事関係を発信していることが多いんですね。だからファンとの距離感が近いというキャラクターでもあります。

 

時代をさかのぼってこうしたジャジーでファミリアーなレトロ・ポップスの源流をたぐってみると、どうもノラ・ジョーンズが『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』でデビューした2002年あたりまでたどりつくんじゃないでしょうか。

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その数年前にジャネット・クラインがデビューしていますが、この歌手もジャジーでレトロなパーラー・ミュージックを最初からずっと志向していたのでした。ジャネットのときに流れができず、ノラでムーヴメントになったのは、ブルー・ノートが大きく展開したからか、時代とシーンが追いついたせいか。

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ノラはヒップ・ホップ通過後の新感覚を身につけたジャズ新世代の先駆けでもあったわけですが、と同時にレトロ・ポップなフィーリングをも存分に発揮していたことは、『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』とか続く数作をいま聴きかえしてもわかること。後者があまり言われないのは、顕在化したのが早くみても2011年ごろからだったためでしょう。

 

2011年といえば、ダヴィーナ&ザ・ヴァガボンズの『ブラック・クラウド』が出ています。事実上のデビュー・アルバムで、20世紀初頭のニュー・オーリンズ・ジャズっぽいテイストで満たされていました。あのときぼくはずいぶん快哉を叫んだものですが、2020年代になってここまでの大きな流れになっていくことにはもちろん気づいていませんでした。

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快哉を叫んだというのは、そう、個人的にはいまから40年ほど前の大学生のころから、1920〜40年代に録音されたSP盤を復刻したLPレコードで聴く古いジャズ・ポップス、つまりディキシーとかスウィング系のものが大好きで、ずっといままで愛好してきた人間だからです。生まれるのが遅すぎたと思い続けてきただけに、近年のこのレトロ・ジャズ・ブームは「時代が来た」との感を強くするもの。

 

もちろん流行とはぜんぜん無関係にそういう音楽がずっと好きで聴いてきているわけで、だからたまたま偶然2020年代は時流と嗜好が合致しているというだけ。なので、このブームが終焉してもぼくのレトロ・ジャズ愛は変わることなくずっとこのまま死ぬまで続いていくものです。

 

おおざっぱに言って「ジャズ(的なもの)」がここまで大きなコンテンポラリー・ムーヴメントになるとは、世紀の変わり目あたりにはまったく想像していませんでした。

 

(written 2021.12.17)

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