レイチェル・ナギーに捧ぐ 〜 デトロイト・コブラズ
(3 min read)
The Detroit Cobras / Life, Love and Leaving
https://open.spotify.com/album/2obANE2dwXlqzslF5vTBij?si=NWqivsLaSQSLn50czV2eAw
こりゃもうジャケット一瞥した瞬間にそれだけでイッパツ決まりだっていう、デトロイト・コブラズのアルバム『ライフ、ラヴ・アンド・リーヴィング』(2001)。Spotifyで2016となっているのはリイシュー年ですね。
その名のとおりデトロイトのガレージ・ロック・バンドで、1994年デビュー。しかもこのバンドにオリジナル曲はほぼなく、カヴァーばかり。フロント・ウーマンのレイチェル・ナギーがついこないだ2022年1月16日に死んじゃったので、代表作であるこのアルバムも追悼の意味で(一部では)話題になっていました。
『ライフ、ラヴ・アンド・リーヴィング』でどんな曲をカヴァーしているか、このバンドはあまり知られていないレアなところを拾ってくるんで、以下に初演歌手をちょっと一覧にしておきましょう。
1) Hey Sailor (ミッキー・リー・レイン)
2) He Did It(ロネッツ)
3) Find Me a Home(ソロモン・バーク)
4) Oh My Lover(シフォンズ)
5) Cry On(アーマ・トーマス)
6) Stupidity(ソロモン・バーク)
7) Bye Bye Baby(メアリー・ウェルズ)
8) Boss Lady (デイヴィス・ジョーンズ&ザ・フェンダーズ)
9) Laughing at You(ガーデニアズ)
10) Can’t Miss Nothing(アイク&ティナ・ターナー)
11) Right Around the Corner(5 ロイヤルズ)
12) Won’t You Dance With Me(ビリー・リー&ザ・リヴィエラズ)
13) Let’s Forget About the Past(クライド・マクファター)
14) Shout Bama Lama(オーティス・レディング)
15) This Old Heart(ジェイムズ・ブラウン)
つまり、1950〜60年代にレコード発売された古いポップ・ソング、それも埋もれてしまった知られざる曲ばかりピック・アップしてリメイクしているのがデトロイト・コブラズってわけ。ブラック・ミュージックに分類される曲が多いですが、このバンドの解釈は完璧にオールディーズ・ポップ・スタイル一本槍です。
言い換えれば、フィル・スペクターがプロデュースしたロネッツとか、あの時代のああいった音楽へのレトロ・シンパシーを表現しているんですよね(レイチェルはロニー・スペクター的 “bad girl” イメージも持っていた)。60sモータウン・ポップスの感触もあります。
どれもこれもオリジナルとは大きく趣きを異にしていて、このバンドがリメイクの達人と呼ばれるゆえんですが、曲もスタイルも心底好きじゃなきゃできないこういった路線、バンドを結成したレイチェルとメアリー・ラミレス(ギター)の趣味全開といったところでしょうか。
カヴァーするひともないクライド・マクファターの隠れた名曲13「過去のことなんか忘れちゃおう」を、ギター中心のちょっとラフでルーズなオールディーズ・サウンドに乗せて、ハスキー・ヴォイスのレイチェルがつづるさまなんか、マジで沁みます。
(written 2022.1.24)
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