グナーワ&ジャズ・ハイブリッド 〜 メディ・ナスリ、オムリ・モール、カリム・ジアード
(3 min read)
Omri Mor, Mehdi Nassouli, Karim Ziad / Assala
https://open.spotify.com/album/0naKDiFvjhAcy1IWy2QiyS?si=wH2C8uSsQpqqfsEo5vE9BQ
lessthanpandaさんのMúsica Terraで知りました。
https://musica-terra.com/2021/07/24/omri-mor-mehdi-nassouli-karim-ziad-assala/
モロッコ人ゲンブリ奏者メディ・ナスリが中心になっているこのトリオになにか特定のバンド名みたいなものはないみたいで、ただ三人の名前を列挙して「オムリ・モール、メディ・ナスリ、カリム・ジアード」と書かれてあるだけ。
メディがゲンブリ&ヴォーカル、オムリ(イスラエル)がピアノ、カリム(アルジェリア)がドラムスという編成です。常時編成バンドというより、随時集まるプロジェクトみたいなものなんでしょう。
このプロジェクトは2019年ごろからはじまっていたらしく、ライヴ活動などはやってきていたらしいのですが、昨年それが一つのアルバム『Assala』(2021)に結実しました。これが、グナーワ、ジャズ両方に興味のある人間にはおもしろい内容です。
どの曲も、基本、メディの弾くゲンブリのベース・ライン反復を中心に組み立てられていて、そこはグナーワらしいマナー。同じくメディの歌声もグナーワを強烈に感じさせる質と旋律なのですが、ピアノとドラムスが入ってくると、その上にジャジーなハーモニーとリズムの多彩さが乗るといった具合です。
ジャズ成分を代表しているといえるのがオムリの弾くピアノ。このひとはイスラエルでは名の知れたジャズ・ピアニストです。グナーワというとそもそも和声的にはシンプルで、そういう部分じゃなくヒプノティックなワン・グルーヴの反復こそが魅力の音楽なんですが、アルバム『Assala』ではそこにポリフォニックなハーモニーが加味されています。
オムリのジャズ・ピアノはさほど冒険したりはしないスタイルで、典雅で端正。クラシックも学んできたことがよくわかるのがフレーズのはしばしに出ていて、かといって曲によっては後半部メディの弾くアップ・ビートなゲンブリ反復に乗って、熱く高揚したりもするんです。
そうしたヒート・アップするパートでは、ちょっとジャズ・ミュージックでは聴いたことのないトランシーさを感じさせたりもして、しかしグナーワそのものでもないし、まさしくグナーワ&ジャズ・ハイブリッドだよなあ、唯一無二の音楽だと感じさせるものがあります。
グナーワ・ミュージックの原初的な特質を失わないで、そのままうまくジャズでリハーモナイズした音楽といえる、ちょっと注目していい作品じゃないでしょうか。
(written 2022.1.18)
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