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2022/02/23

21世紀のアダルト・オリエンティッド歌謡曲 〜 坂本冬美『Love Songs』シリーズ

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(5 min read)

 

坂本冬美 / LOVE SONGS ベスト
https://open.spotify.com/playlist/0hn865M9Wc4eF1EcPwZKa9?si=96cae94be7684725

 

2021年10月初旬に観にいった坂本冬美のコンサートで最も感心したのは「白い蝶のサンバ」「喝采」という二曲のカヴァーでした。オリジナルから大きく姿を変え、しっとりおだやかで落ち着いたバラードになっていたんです。

 

そんな冬美ヴァージョンが初耳だったぼくはちょっとビックリし、感動もして、調べてみて、それら二曲がそのままのアレンジで冬美2013年のカヴァー・アルバム『Love Songs IV〜逢いたくて逢いたくて』に収録されていることを知りました。

 

そこから芋づる式にたぐってわかったんですが、冬美はこれをシリーズ化しています。2009年の『Love Songs 〜また君に恋してる〜』にはじまり、15年の『LOVE SONGS VI〜あなたしか見えない〜』まで、トータル六作。

 

いずれも遠い過去に歌われたラヴ・ソング系歌謡曲のカヴァー集(Vol. IIIを除く)で、演歌は一つもなし、歌謡曲やポップスだけがとりあげられています。それもけっこう古いものっていうか1970年代の曲が中心なんですね。『VI』は和訳洋楽オールディーズ集です。

 

シリーズ・トータルで全72曲5時間2分。じっくり聴いて、なかでも秀逸だと個人的に思えるものだけ23曲を抜き出してプレイリストにしておいたのがいちばん上のSpotifyリンク。かなりしぼったつもりですが、それでも一時間半を超えています。まずまずのセレクションができたんじゃないでしょうか。

 

むしろ冬美カヴァーでこそ知られるようになった「また君に恋してる」(ビリー・バンバン)とかもありますが、オリジナルから有名なスタンダード・ソングが多いです。「あの日にかえりたい」(荒井由美)、「安奈」(甲斐バンド)、「哀愁のカサブランカ」(郷ひろみ)、「オリビアを聴きながら」(杏里)、「精霊流し」(グレープ)などなど。

 

それら以外だって、みなさんどこかで聴きおぼえがあるだろうというものばかりで、あたかも日本歌謡史総まくりみたいな面だってある冬美のこの『Love Songs』シリーズ。特筆すべきはアレンジ/プロデュース・ワークと冬美のヴォーカル・スタイルです。

 

この手の古い歌謡曲やオールディーズばかりを選曲したということは、どうもCD購買層を50代以上〜還暦前後の世代と想定して、そこにフォーカスしたんだろうというプロデュース意図を感じますが、どの曲もアレンジをオリジナルとは大きく変えてあります。

 

アダルト・オリエンティッド歌謡曲とでもいうような、しっとり落ち着いたおだやかなリズムとサウンドを軸に、ジャジーなムード満点でふんわりとくるんでいるんですよね。調べてもアレンジャーがだれだったのか出てこないんですが(CD買えば書いてある?)、シリーズ・トータルを一人で手がけたのかもしれない?という統一感があります。

 

メイン・ターゲットを高年層にしぼったことで、曲のアレンジもそんなリスナー向けのおだやかな大人のサウンドでキメているということなんですが、冬美のヴォーカルにもそんなプロデュース意図が伝えられたに違いなく、本来領域である演歌を歌うときとはかなり様子が違います。

 

コブシもヴィブラートも派手な声の出しかたもすべて消し、ナチュラル&スムースな発声とストレートな歌唱法に冬美は徹しています。それが大成功していると思うんですよね。従来的な有名歌謡曲にあたらしい相貌を与えていると言えます。

 

選曲のよさと意外さ、ジャジーでおだやかでまろやかなアレンジ・ワークの徹底、抑制の効いたヴォーカル・スタイルのあざやかさ 〜〜 これら三位一体で、冬美の『Love Songs』シリーズはもはや過去のものだった古い歌謡曲・流行歌を21世紀にみごとに蘇らせていると言えるでしょう。

 

同じ冬美の『ENKA』シリーズ(2016〜18)や徳永英明の『VOCALIST』シリーズ(2005〜15)をてがけたアレンジャー坂本昌之の仕事に共通するスタイルを感じるんですが、どうも坂本ではないみたいで、だれがアレンジャーだったのか、ほんとうに知りたいです。

 

いずれにせよ、ここ10年くらいのポップスではこういったサウンドとヴォーカルがメイン・スタイルになってきているのは間違いありません。

 

(written 2021.11.20)

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