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2022/03/03

ゼップの『フィジカル・グラフィティ』とストーンズの『タトゥー・ユー』は似ている

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(5 min read)

 

Led Zeppelin / Physical Graffiti
https://open.spotify.com/album/4Q7cPyiP8cMIlUEHAqeYfd?si=ICOP38hCSj6h4g1014fUkw&dl_branch=1

 

The Rolling Stones / Tatto You
https://open.spotify.com/album/4F0eas0fmQSnb490QxZbD1?si=3xG-I3iXTN2l5D-a0B4FVw&dl_branch=1

 

レッド・ツェッペリンの『フィジカル・グラフィティ』(1975)とローリング・ストーンズの『タトゥー・ユー』(1981)には共通点があります。どちらも当時の新リリース・アルバムでありながら、新録は少なくて、過去の未発表音源を流用してお化粧をほどこしたものが多く収録されているということです。

 

どんな音楽家でも、新作プロデュースにあたり新録じゃなく過去音源を使う、混ぜるというのはよくあることだと思うんですけれども、それでも特にロック・ミュージックの世界では、あらたにリリースするアルバムのプランを組み、曲も書いて用意して、というパターンがビートルズ以後一般化したでしょう。

 

なので、ツェッペリンの『フィジカル・グラフティ』とストーンズの『タトゥー・ユー』はやや例外的なような気がするんですよね。ツェッペリンのばあいは1973年のアメリカン・ツアーを終了して同年暮れから新作の準備のためにスタジオ入りしたものの、ジョン・ポール・ジョーンズの脱退騒動が起きてしまい、一時中断を余儀なくされていました。

 

それが収束して74年春にレコーディングが再開し、結局多くの曲ができあがってしまったので、そこからLP一枚に収まるように削るよりも、過去に録音済みの曲を持ってきてふくらませ二枚組で発売したらどうか、となったみたいです。

 

それで、新録八曲にくわえ、『レッド・ツェッペリン III』、『(四作目)』、『聖なる館』のために録音済みだった未発表音源七曲が足され、結果的に新録と旧作が半々くらいの割合でアルバムに入り混じる結果となりました。

 

ストーンズのほうはといえば、1980年の『エモーショナル・レスキュー』発売にともなうツアーが一年延期され、そのツアーに間にあわせるため急遽次のニュー・アルバムのリリースが必要とされました。にもかかわらず当時のミック・ジャガーとキース・リチャーズは不仲だったため新曲づくりが進まなかったのです。

 

そのためプロデューサーのクリス・キムジーが、これまでにストーンズが残してきた膨大な未発表音源を調べあげることにして、未完成のベーシック・トラックにオーヴァー・ダブを施していくという手法を選択しました。『タトゥー・ユー』に収録された曲のほとんどは、過去のセッションからのアウトテイクをもとに制作したものだとみなさんご存知のとおり。

 

ツェッペリン、ストーンズいずれの作品とも、できあがりに統一感があって、聴いて流れに違和感のないアルバムにしあがっているのは、ひとえにエンジニアの尽力のたまものなんですね。ツェッペリンはキース・ハーウッド、ストーンズのほうはボブ・クリアマウンテン。

 

そのおかげで、年代も録音場所もバラバラである楽曲群が統一感のあるサウンドに聴こえるわけです。特にストーンズをてがけたボブ・クリアマウンテンは辣腕エンジニアとしてこの後一世を風靡していくことになりましたが、世に出たきっかけがストーンズの『タトゥー・ユー』でした。

 

しかもそんな間にあわせ的に制作・リリースされたものなのに、ツェッペリンの『フィジカル・グラフィティ』もストーンズの『タトゥー・ユー』もヒットしました。バンドのキャリアを代表する傑作とまで評価されるようになって、ちょっと皮肉なことですよねえ。

 

さらに、ストーンズにとっての『タトゥー・ユー』は、象徴的な時代の転換点にあった重要作ともなりました。これにともなうツアーはライヴ・アルバム『スティル・ライフ』となって発売もされましたが、スタジアム・サイズのツアーを全世界的にくりひろげるようになる最初だったのです。現在でも続くストーンズのライヴ・スタイルを導いた最初の作品だったと言えます。

 

(written 2021.10.3)

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