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2022/04/25

青春のスーヴニア(1)〜 ビリー・ジョエル『ストリートライフ・セレナーデ』

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(5 min read)

 

Billy Joel / Streetlife Serenade
https://open.spotify.com/album/57nvMIu4PQLLXRbmKESigL?si=FF7tICquT0yb5n0qoMrZKA

 

1979年、17歳高校三年生でモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)に出会い電撃的にジャズきちがいに豹変する前のぼくが好きだった洋楽は、レッド・ツェッペリンとビリー・ジョエル。なんども書いてきたことです。

 

ツェッペリンは聴いてもいいけどコピーしてスクール・バンドで歌っていたわけです。自宅でレコード聴いてはまっていたのはビリー・ジョエルのほう。ぼくが出会ったころには、ヒットした代表作『ザ・ストレインジャー』(1977)も、次作でフュージョン色の濃い『52nd ストリート』(78)もすでにありました。

 

しかし大学生になって、その時点で買えるビリーの全レコードを聴いてみて、なぜだか好きだと感じてよく聴いていたのが不遇のロス・アンジェルス時代二作目『ストリートライフ・セレナーデ』(1974)。一般的には佳作とすらもみなされていないものです。

 

むしろ1980年代時点では忘れ去られるべき過去みたいに扱われていました。それでも大手コロンビアからの実質デビュー作『ピアノ・マン』(1973)以後のものは松山みたいな地方都市でもレコードがすべてかんたんに買えたし、ブレイク後にビリーに出会った身としてはそこらへんのストーリー(下積みの西海岸時代とニュー・ヨーク帰還後の大成功とか)はあまり関係なかったのです。

 

とはいえ『ストリートライフ・セレナーデ』が好きだというあのころの気持ちは間違いなくLA臭が音楽に色濃くただよっていたからなんですが、このことはいまふりかえるから気がつくことです。ニュー・ヨークと西海岸の音楽性の違いなど大学生当時はなにもわからず、ただなんとなく心地いい、なんだかなつかしいような感じがしていただけ。

 

いまではその感想がなんだったのか、なんとなくわかる気がするようになってきました。人生の影の部分を掘り下げたノスタルジアあふれる音楽だからじゃないかと思うんですよね。LAでのビリーがやや暗い不本意な音楽生活を送っていたことと関係があったかも。

 

いはばビリーのプライベイトな心象風景を描いた音楽といえるわけで、哀感がやや濃いめにただようサウンドとメロディ・ライン、歌詞もかな、そのへんが大学生時代に好きで、青春時代のぼくの日常にぴったりくるBGMになっていたんです。なんだか切ないフィーリングはいまでも大好き。

 

ニュー・ヨークに戻ってきて大成功してからのビリーの音楽にも一定程度は残っているこうしたサウンド、『ストリートライフ・セレナーデ』ではそれが中心を占めているわけなので、いま聴きなおしてもそうだし大学生時分から好きでした。3曲目「ザ・グレイト・サバーバン・ショウダウン」のサビのメロなんか、もうほんとうにねえ。

 

キーボード・シンセサイザーの多用(ビリー自身が弾いていると思う)もこの音楽家のほかのアルバムにあまりない顕著な特徴で、決して主役だったりはしないんですが、サウンド・エフェクト的に随所に挿入され、それがまた青春のちょっと臭めなフィーリングをうまくふちどっていました。

 

それでもやはりビリーはピアノ・マンであるに違いなく、4曲目「ルート・ビア・ラグ」みたいなインストルメンタル・ナンバーは(ライヴ以外では)しかしその後は登場することがなくなりましたけど。それとは違って技巧を示すものではありませんが、アルバム・ラストの「ザ・メキシカン・コネクション」も歌なしのピアノ・インスト。

 

そしてなんといってもその直前におかれた9曲目「スーヴニア」。これこそビリーの全作品で現在でもぼくがいまだ最も溺愛する一曲。なんだか切なく哀しくわびしげな、しかし人間だれしもいだく心情を淡くつづったこの小品は、ピアノだけの弾き語りでしんみりと歌われています。

 

ぼくの青春はこんな音楽にいろどられていたんです。

 

(written 2022.3.12)

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