ポップなリオ新世代の面目躍如 〜 ニーナ・ベケール
(3 min read)
Nina Becker / Acrílico
https://open.spotify.com/album/5Toc0KiEuEohfd7cR3dqid?si=MovfTGMFTH-xPNxQ4KCv_w
2014年のドローレス・ドゥラン集『Minha Dolores』が大人気だったニーナ・ベケール。これでこのブラジル人歌手を知りました。あのころこのアルバムを話題にしているひとは多かったですし、ぼくもブログをはじめてから数度書いたくらい。
その後ニュースを聞かなくなったよなあと思っていたんですが、2017年に新作『Acrílico』を出していたんですね。ついこないだ気がついたばかり。なんか、ぜんぜん話題になっていなかったような気がします。
ディスクユニオンの通販サイトくらいしか日本語情報がないので、ファンとしての感想はじゃあぼくが…というわけでとりあげて書いておくことにします。なかなかおもしろいアルバムなので。
おだやかなあたたかみに癒された『ミーニャ・ドローレス』から一転、今作はかなり先鋭的で実験的なサウンドで満たされていて、強い不協和音の点描的な連発でほぼ無調に近づいている曲もあったりします。
ニーナと他の人との共作が多いようですが、メロディ感も希薄で、なんだかポスト・ロックふうにアンビエントな音像。浮遊するあいまいなサウンドの上をニーナが鋭角的に舞うといった感じででしょうか。
そもそもそういった音楽も前からソロではやる歌手で、ドローレス・ドゥラン集がよかったというみなさんには受け入れがたい作風かもしれません。ニーナとともにドゥーダ・メロがプロデューサーとしてクレジットされていて、伴奏はペドロ・サー(ギター)、アルベルト・コンチネンチーノ(ベース)、ラファエル・ヴェルナンチ(ピアノ)、トゥッチ・モレーノ(ドラムス)。
曲によりモレーノ・ヴェローゾ、カシン、エヴェルソン・モラエス、ネグロ・レオ、エドゥアルド・マンソなどが参加して、やはりチャレンジングな演奏を聴かせています。前衛的といえる冒険精神が横溢しているんですよね。
でも土台にあるのはあくまでサンバやジャズ・ボッサだなと鮮明にわかるのがぼくみたいなファンでもすんなり聴けるところ。ニーナの声にはあたたかみとくつろぎ、そして華があるし、とびきりポップな歌手ですし、こんなとんがった音楽をやってもざわめきばかりにならずレトロなリラックス・フィールが同居しているのには安心できます。
(written 2022.4.10)
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