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2022/05/06

愛されない者のための歌 〜「化粧」

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(4 min read)

 

化粧
https://open.spotify.com/playlist/2DosOA5mqniaF6KKuYLs9o?si=c42eb811115e4192

 

中島みゆきはサブスクに存在しない音楽家で、たぶん本人の強い意向かなにかが働いているんでしょうね。なかにはとても沁みるいい曲があるソングライターなんで、聴きたくなったらほかの歌手によるカヴァーで、ってことになります。

 

それでこないだやはりみゆきの名曲の一つである1978年の「化粧」のことを思い出すきっかけがありました。宮本浩次のアルバム『ROMANCE』(2020)のことは以前ブログでとりあげましたが、先だって四月に松山公演があり、同作に収録されていた「化粧」も歌ったそうです(ぼくは行かなかった)。

 

聴きに行った美容室経営の友人スタイリストからとてもよかったと伝え聞き、同曲のいろんなヴァージョンをまとめて聴きなおしたいと(ほんとはみゆきのオリジナルがいいけど…)Spotifyで曲検索し、あるものぜんぶ、ダブりのないようにまとめてプレイリストにしておいたのが、いちばん上のリンクです。

 

トータル七つ。桜田淳子、宮本浩次、清水翔太、丘みどり、工藤静香、navy & ivory、J-JUN とこれは出てきた順にそのまま。サブスクにだってもっとあるだろうと思っていました。坂本冬美などもカヴァーしているらしいですが見つからず。

 

宮本のとみどりの以外は初耳でしたが、やはり曲がもとからいいんですねこれは、どのヴァージョンを聴いても胸に痛いほど沁み入ります。歌詞の世界が鮮烈で、ぼくなんかもそこにとてもとても強く共感するわけですが、感情を込めずに淡々と歌うのも、エモーショナルに歌うのも、この曲に似合っていると思います。

 

七つのうちでは、やはりこの曲に強く惹かれるきっかけだった宮本ヴァージョンがいいなぁと感じたんですが、それはたんに耳なじみがあるというだけのこと。ぜんぶをじっくりなんども聴くと、ピアノ一台の静かな伴奏でしんみりつづっているようなものが実は最高かもしれません。

 

たとえば清水翔太のとか navy & ivory のとか。後者は名前も初めて見たと思って調べました。キーボードとヴォーカルの二人組日本人音楽ユニットみたいですよ。2000年結成で13年に解散しています。韓国人歌手ジェジュンのヴァージョンもピアノだけでのしっとり伴奏。

 

清水翔太ヴァージョンでは歌いまわしにやや演歌っぽい回転が聴かれます。本人の資質というより曲由来のこぶしかもしれません、みゆきの書くメロディはときどきそうなりますから。正真正銘の演歌歌手、丘みどりのヴァージョンは、たしかにそれらしさ全開。声のハリやノビや強さ、濃厚さ、フレーズ終わりごとに入る軽いけどしっかりしたヴィブラートなど、モノが違うなと思わせるものがあります。

 

がしかし歌唱力が卓越しているからといって、曲を、特にみゆきの「化粧」みたいなのを、強く沁みるようにリスナーに伝達できるかは別問題。決してここでのみどりヴァージョンがイマイチという意味ではなく、曲の力が強いソングライターなので、ストレートに歌うほうがかえっていいかも。声にも癖や色がないほうが。

 

なので、Spotifyで聴ける「化粧」七つのなかでいちばんの好みは navy & ivory のやつ。ジェジュン・ヴァージョンはピアノにジャジーなフレイジングの癖や置換和音が聴かれ、伴奏だけならこれがいちばんですけど、ヴォーカルにややリキみがあります。navy & ivory のはチェロのオブリガートが随所に入っていますが、曲想によく似合っていて効果的。

 

(written 2022.4.24)

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