ストーンズ本隊より好きなんじゃないか 〜 ミック・ジャガー『ワンダリング・スピリット』
(3 min read)
Mick Jagger / Wandering Spirit
https://open.spotify.com/album/3TAd5skYEcJ9dosbhEsVgA?si=7mBuxqG_TH-jy_uujJhWzA
ミック・ジャガーのソロ・アルバム『ワンダリング・スピリット』(1993)、やっぱぼくこれ好きなんだぁ。ローリング・ストーンズのメンバーのどのソロ作よりも格別好きなばかりか、ストーンズ本隊の全アルバムと比較してもずっと好きなんだからおかしいよねえ。だいぶ前にも一度書きましたけど。
なにがそんなにかって、まず1曲目「ワイアード・オール・ナイト」がカッコよすぎる。もうこれだけで一発ノックアウトを食らう爽快ロックンロールでかっ飛ばすミックとバンドが超快感。ここまでスピーディでノリよくタイトでシャープな曲って、ほんとストーンズにもなかったような気がするんですけどね。
もうこの1曲目だけでこのアルバムの価値が決まったといってもいいくらい。やっぱりオープニング曲って大事ですよ。しかも音響がほんとうにヴィヴィッドっていうか、特にドラムスとエレキ・ギターがくっきり鮮明に録れていて、いいサウンド。ヴォーカルふくめどの楽器音も鮮やかなのが、このアルバムの大きな美点の一つ。
2曲目以後やや落ち着いてくる感じですが、1990年代にあって1950年代のリズム&ブルーズ、ロカビリー、初期型ロックンロールを強く意識して、そこへの回帰というか、ミックあたりだったら常にその原点を意識しながら活動を続けてきているであろうものが、本作ではいっそう強く表れているのもいいです。
でありながらいかにも90年代だっていう同時代的なクラブ・サウンドをも視野に入れたサウンド・メイクになっているのがわかって、特にややジャジーなサックスの使いかたなんかに顕著にそれが聴きとれて、そのへんとオードソックス・スタイルとの案配っていうか、やりすぎずちょうどいい加減が聴きやすい。
先鋭的に時代を意識しすぎるとしばらく経って褪せて感じるようになっちゃうんですけど、2022年に聴いてもカッコいいとじゅうぶん思える不変の魅力をこうした音楽は持っているよねえっていうそうしたエヴァーグリーンなロック・サウンドをベテランは熟知していますよね。当時としては新しかったこんなクラブ・テイストがいまでもじゅうぶん聴けるのは、ひとえに「古典」を知り抜き実践してきたミックならではの差配。
UKトラッドみたいなのもあったりするし、けっこうバラエティに富んだ内容で飽きたりなかだるみしたりせず最後まで一気に聴くことができる勢いもあって、ミックのソロ・アルバムのなかでは断然トップの内容、キースのどれよりいいし、これ一個あればなんだったらストーンズだっていらないよ?
(written 2022.6.25)
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