南ア・ジャズの時代?〜 マルコム・ジヤネ
(3 min read)
Malcolm Jiyane Tree-O / Umdali
https://open.spotify.com/album/3nXuL25LbboMeH2KfOE1U8?si=pfkMfxzySlKWI1UAsHkgCw
いいジャケットですね。これもたしかディスクユニオン経由で知ったアルバムで、南アフリカのジャズ・トロンボーン&マルチ楽器奏者マルコム・ジヤネのリーダー・デビュー作『Umdali』(2021)。去年暮れか今年はじめごろに聴いてはいましたが、ピンとくるようになったのは最近のこと。南アのジャズについて書くのは今年三つ目です。
気だるいようなレイド・バック・フィールが強くあるのが(ぼくにとっては)本作最大の特徴で快感ポイント。ジャズでいうならブルージーとかファンキーとか言われるような音楽要素、それが全体的に濃厚です。
全曲ジヤネの作編曲ですが、実態は書かれてある部分より各楽器奏者のインプロヴィゼイション・ソロの連続でどの曲も構成されているように聴こえます。ソロをとるのはトランペット、トロンボーン、サックス、ピアノ。バンドはそのほかパーカッションをふくむリズム・セクション。
どのソロもエモーショナルで暖かみのある内容なのが、コンテンポラリー・ジャズではいまどきなかなか聴けないものかもという気がします。前半はややユーモラスな感じもある3曲目からぐんとよくなって、レイド・バック感全開。エレピもホーン・アンサンブルもファンキーでレイジーでいいですね。こういう音楽が大好き。
4曲目は出だしから湿ったエモーションに満たされていて、都会的な洗練と退廃も感じさせるムード。ホーン・アンサンブルにからみながら展開されるジヤネのスモーキーなトロンボーン・ソロも聴きごたえ十分です。その後トランペット・ソロ、ジヤネ(と思う)のヴォーカル、サックス・ソロと続きます。
曲中、というかアルバム全編を通しずっとコンガの音がスパイシーに効いているのもなかなかきわだっていて、背後というより前景に置かれているのかもしれないと思うほどのミキシングなので、いっそうそれがよくわかります。
そしてアルバムのクライマックスは間違いなくラスト5曲目「Moshe」。ジヤネはすばらしいトロンボーン・ソロを吹くだけでなくここでも歌っています、と思ったけどジヤネじゃねえかも。曲や、また特にピアニストのプレイにファンキーさが濃厚にただよっていて、しかもエモーショナルにあふれ出る感じ。そこが本作の特長ですよね。
(written 2022.7.26)
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