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2022/09/26

マイルズ『イン・ア・サイレント・ウェイ』コントラバスかっちょいい

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(7 min read)

 

Miles Davis / In A SIlent Way
https://open.spotify.com/album/0Hs3BomCdwIWRhgT57x22T?si=4pFAq04wQJWmpnZtNmFM4Q

 

そいで、マイルズ・デイヴィスのあのころの作品で、(長年最高評価だった)『ビッチズ・ブルー』(1970)より、現在では一個前の『イン・ア・サイレント・ウェイ』(69)のほうが人気が高いしドープだと思えている原因の一つに、後者はエレベ奏者がおらずコントラバス(デイヴ・ホランド)だけだというのがあるんじゃないかと。

 

特にかちょよくドープなのがB面「イッツ・アバウト・ザット・タイム」のグルーヴですが(私見)、この曲でのコントラバスがいいぞとぼくが感じはじめたのはほんのここ数年のこと。近年の、特にジャズやそれに関連した新作でときおり使われているのを耳にしてシビレるなあと感じるようになってからです。

 

ぼくが気づくのが遅かっただけで、よくふりかえってみればもう10年くらいかな、コントラバスが新作音楽で使われているんじゃないかという気がします。もうエレベは古いとかそんなことを言う気はありませんけども。コントラバス復活は音楽のオーガニック志向とも関係あるのでしょうか。

 

復活といっても、もちろん従来的なメインストリーム・ジャズでの使用法とはかなり異なっていて、それまでエレベが担っていたようなヒプノティックでかっちょいいファンキーなリフとかヴァンプをコントラバスでやらせて、それでなんともいえないクールなフィーリングを産んでいると思うんですよね。

 

おそらくヒップ・ホップ系のミュージシャンたちがコントラバス・サウンドの質に目をつけて、むしろこっちのほうが現代的だとエレベの代わりに使いはじめたんだと思いますが、そう、ピアノやギターなんかもアクースティックなものが同様にそういうたぐいの世界で再脚光を浴びて頻用されるようになっていますが、だからそれ以降でしょうね。

 

マイルズ『イン・ア・サイレント・ウェイ』でのデイヴ・ホランドの使われかたは、そういった2010年代以後的な使用法だよねえとぼくには聴こえ、これ1969年2月の録音なんですけど、ずいぶんと早い先駆けだったもんだなあ、2022年にもコンテンポラリーにかちょよく聴こえるわけですねえ。

 

あのころのマイルズはアクースティック・サウンドから電化する途上にあったから、次作の『ビッチズ・ブルー』ではエレベと併用し、その後はエレベ一本になりました。だから『イン・ア・サイレント・ウェイ』でコントラバスなのは保守的というだけのことだったのに。いまになって意味を取り戻したっていうか現代性を獲得したっていうか。

 

2曲目「イッツ・アバウト・ザット・タイム」ではジョン・マクラフリン(g)→ ウェイン・ショーター(ss) → マイルズ(tr)の順にソロをとり(完成品ではテープ編集で冒頭にもマイルズのソロがおいてある)、テーマみたいなものはもとからなく、ソロ三つの連続が曲の表層上の実体です。

 

それらはもちろんインプロヴィゼイションなんですけども(編集のおかげで作曲したような感じに聴こえますね)、重要なことは下層部で支えるリズム・セクションの動きが完璧に事前アレンジされているということ。そしてそれこそが「イッツ・アバウト・ザット・タイム」のほんとうの実質で、二つのリフ・パターンを切り替えながら進み、それに乗って三名がソロをとるっていう仕組み。

 

分解すると正確にはパターンは計三つ。(1)下降和音二つづつであわせて六つ(2)三連符ベース(3)ファンキー・パターン。(2)は(1)の基底部を支え同時並行で演奏されていますから、時間経過にのっとれば二種のリフが三名のソロのバックでこの順に出てくるわけです。

 

(1)の下降和音集団のときにはベースのホランドはそれに参加しておらず、上記のとおりその背後で三連符ヴァンプを弾いているんですが(ザヴィヌルのオルガンもときたま参加)問題は超カッコいい二番目のファンキー・パターンとぼくがいったリフです。だれが書いたんだろうなあ、作曲はマイルズにクレジットされていますけど、う〜ん…。

 

だれが書いたものにせよ、ベースとフェンダー・ローズ(たまにオルガンも)がユニゾンでそのリフを合奏し、その重なりがいっそうこのリフの響きをファンキーにしているっていうこんなアイデアは、1967年12月録音の「ウォーター・オン・ザ・ポンド」におきギターとベースで同じことをやらせたころからマイルズは持っていたものではありました。

 

マイルズによるこの手のアイデアが最高度に結実したのが「イッツ・アバウト・ザット・タイム」であって、もうシビレるほどたまらないファンキーさ、クールさに聴こえるし、もしこれがエレベだったらここまでカッコよくドープに仕上がっていないはずだと思うので、69年2月のマイルズとしては臆病でまだコントラバスだっただけなんですけど、2022年に聴くぶんには結果的にフィール・グッド。

 

まるでクラブDJとかがここだけ抜き出してループしたりしそうな、そんなリフですよね。実際たくさんサンプリングされているのかもしれません。『ビッチズ・ブルー』にそんな瞬間ないですもん。マイルズだからレア・グルーヴ扱いにはなりませんが、実質的にそんな感じです『イン・ア・サイレント・ウェイ』って。

 

(written 2022.8.21)

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