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2022/09/30

年齢差別

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写真は今年八月の自撮りです

 

(6 min read)

 

あと五年で老齢年金がもらえるっていう歳の人間が「年齢差別」とかいうと、いはゆるエイジズムのことなんだろうと思われそうですが、そうじゃなく、若いからといって(音楽的に、など)円熟している/していないには無関係である、ステレオタイプにはめるな、と言いたいわけです。

 

こないだも22歳の韓国人歌手に言及し「実年齢が22と知って、驚きました。落ち着きのある成熟した歌声は、とてもそんな若さとは思えなかったものだから」と書いてあるブログを読み、なに言ってんのと思ったばかり。

 

そのブロガーは前からときどきこの手の発言をする年齢差別主義者で、実際にはそういうひと多いですけどね。そして、若いということでなにかができないと判断するのは間違っている、差別的だ、というのは、実をいうと20代のころのぼくの実体験から身に沁みて痛感してきたことなんですね。

 

大学卒業まではほぼみんな同年齢か、ぼくは早生まれだから周囲は一個上か、だいたいそれくらいの同年代といっしょに学年を一つづつ進んできたわけですが、大学院に入学したとたんもっと歳上の同級生ばかりになりました。

 

あとから知ったことですが、あのころの東京都立大学英文科大学院は現役合格するほうがまれな難関名門だったとのこと。そういわれたってねえ、こっちは卒業論文を一月末に書き終え残りの時間でちゃちゃっと英米文学史の本を通読、それも移動の新幹線のなかで、っていうだけの準備でそのまま受験に臨み、すんなり合格しちまいましたけど。

 

入学してみたら、同学年でも周囲は何浪もしていたようで数歳上ばかり。なかには社会人になって時間が経過してからというケースもありましたから。ぼくのほうはルックスも考えかたもこどもっぽいというか幼稚だということもあって、そりゃあずいぶんといじめられました。苦労も挫折も知らずすんなり上に進むエリートに対するやっかみみたいな感情もかなりあったと思います。

 

それにいっそう拍車をかけたのが、修士課程を最短の二年で終え、修論審査も無事通過、そのままストレートで難なく博士課程に合格しちゃったこと。同じ都立大英文科修士の学生でも、ここはそうカンタンに進む人間のほうが少なかったんです。たんに愛媛からお金持たずに上京し、二年で切れる育英会の奨学金しかあてがなかったから懸命だっただけですけど。

 

博士に進学すればまた博士の奨学金が出るんですが、もし浪人したらそのあいだ食べていく手段を思いつかなかったという、ただそれだけの理由でがんばりました。指導教授の杉浦銀策(メルヴィルが専門)なんかは「修士三年論」を常日頃から唱えていまして、アホかと。金がないんじゃ。無視して二年で終えました。

 

その後だって修士も博士も新規入学してくるのは浪人生ばかりで歳上。だから、いつまで経っても、どんだけ学年が進んでも、ぼくは最年少のまんまっていう。でも、そのことと英文学研究の学力(歌手なら歌唱実力)は関係ないことです。同じ大学院にいる学年が上や下や同の学生にも、教師にも、年齢のこと若いことではあれこれ言われましたけども。

 

博士課程を二年で中途退学し研究室の助手になったときも歴代最年少なら、そこから三年で國學院大學の専任講師に採用されたのだって29歳のときだったからこの世界では異例の若さで、「戸嶋くんは若いのに立派だねえ」とか言われ。「若い」ということと研究者としての実力や業績がどうして逆接詞で結合するのか、ひたすらナゾでしかなく、理解できず、イヤな思いをしました。

 

いまふりかえれば、すべてはみんなのコンプレックスと劣等感の反映にすぎなかったのだなとわかりますが、あの当時のいじめられた差別されたという精神的刻印は決して消えることがなく、還暦の現在でもぼくのなかにしっかりと記憶され実在しています。

 

現在だって、どこへ行ってもだれに会っても(ルックス的に)到底60には見えない、若いっ!と言われることばかり。この年齢になってくると逆にそれは絶大なる褒め要素、プラス・ポイントへと変貌し、自分もうれしいし、接客などでのアイス・ブレイク的な側面が多分にあるにせよ、今度はいじめられているとかいうんじゃなく、とってもいい気分ですけどね。

 

年齢不相応、それがぼくの人生です。若いか歳とっているかということと、どれだけのことができるか/できないかっていうのは、本質的に無関係なんです。なんなら10代前半でも立派に成熟した学者や歌手はいます。歌の世界ならどっちかというと多いんじゃないですか。

 

(written 2022.9.11)

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