原田知世のうたと音楽~デビュー40周年記念ベスト・アルバム
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このままのかたちではサブスクにもちろんない原田知世のデビュー40周年記念ベスト・アルバム『原田知世のうたと音楽』(2022)。CD二枚組で、一枚目がデビューから過去篇、二枚目が伊藤ゴロー・プロデュース時代っていう構成。
通して聴くと、知世は歳を重ねるごとに歌がうまくなっているなあというのを実感します。どんどんよくなるばかりで、なおかついま2022年がこの歌手の生涯でいちばんいいとぼくは思うんですけど、もう50歳を超えていますからこれは驚異的なことですよ。みなさんどうでしょうか。
デビュー期と違い、いまの知世は中低域寄りのやわらかでおだやかな声をしていて、完成度の高い伊藤ゴロー・サウンドとあわせ、もうホント好きでたまらないんですけど、むかしからのファンは必ずしも同意見じゃないかもしれません。あまり読んだことありませんけども。
『原田知世のうたと音楽』、特にCD1を聴いていてわかったこうした成熟の痕跡は、9曲目「早春物語」あたりにあります。1985年のシングル・ナンバーだったのを92年に鈴木慶一プロデュースで『GARDEN』のために再演したもの。これがとってもいいんですね。このへんが契機で知世のヴォーカルはグンと成熟するようになりました。
それ以前に収録されている「時をかける少女」「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」「天国にいちばん近い島」「雨のプラネタリウム」はいずれもゴロー・プロデュースで近年にリメイクされているのですが、今回は初演ヴァージョンが入っています。もうぜんぜん違う歌手に変貌したぞというのは、比較すればぼくたちみんなよくわかるはず。
92年の「早春物語」以後は、11「ロマンス」、12「シンシア」、13「恋をしよう」、14「Tears of Joy」、15「空と糸 -talking on air-」と、いずれも初演ヴァージョンながら近年の知世に比しても遜色ない、あるいは近づくできばえを示していて、伊藤ゴローと出会う2006年(MOOSE HILL『desert house』)以前にヴォーカリストとして完成しつつあったとわかります。
自然体で音楽に取り組むゴローとコラボを組むようになったことで、そもそも最初からムリしない等身大の日常性がデビュー期以来の特質だった知世のインティミット&アット・ホームさにいっそう磨きがかかるようになり、今回のディスク2でも聴けるように、極上シルクのような細やかでデリケートなオーガニックさを感じる音楽になりました。
(written 2022.10.12)
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