秋の夜に沁みる情感 〜 エズギ・キュケル
(2 min read)
Ezgi Köker / Elbet Bir Gün Buluşacağız
https://open.spotify.com/album/0e7yyfdXWcwwEAse751zqJ?si=AaUaf3Z_R8S5MxO67W1pYQ
トルコ古典音楽の歌手、エズギ・キュケルがリリースしたばかりのミニ・アルバムというかEPなんですけど 『Elbet Bir Gün Buluşacağız』(2022)が、ちょうどこの時期くらい、秋の夜の暗く気温が下がってきた時間帯にピッタリ似合う情緒感で最高。
夜のお風呂あがりごろから部屋のなかでリピート再生モードにして流しっぱなしにすると特にいいムードで、くつろげます。一回だけだと20分ほどしかないんで。深い哀感をたたえつつも、さっぱりさわやかなクールネスもただようのがいい感じ。古典ならではってことかもしれませんね。
今回はエルデム・シュクメンという名がフィーチャーされている共演者と全曲で記されています。知らない名前だと思い調べてみたら、イスタンブルのアクースティック・ギターリストみたい。たしかに聴いても伴奏サウンドの九割くらいがギター。
素材はやはりオスマンからトルコの古典歌曲で、それをエルデムのギターだけというにひとしいようなシンプルな伴奏(+αのこともあり)で、エズギが淡々と、しかし情緒感を込めてしっとりと切なく歌うさまは、こうした分野が好きだというファンにはこたえられないものでしょう。
あっさりしたさわやかさ、薄味のエレガンスみたいなものがはっきりしているのは、こうした分野にも近年のグローバル・ポップスのトレンドが押し寄せてきているというんじゃなくて、もとからそうした世界だったのだとみるほうがただしいでしょう。このことは例のアラトゥルカ・レコーズのシリーズを思い起こしても理解できることです。
アラトゥルカ・レコーズといえば、その第一作『Girizgâh』(2014)でヤプラック・サヤールが歌っていた「アマン・ドクトール」がここでもとりあげられています。聴き比べればまったく異なる解釈で、エズギ・ヴァージョンのほうがより哀爽感を増しているように聴こえますね。
(written 2022.10.31)
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