ひとりぼっちのトニー・ジョー・ワイトがいい 〜『ザ・ビギニング』
(2 min read)
Tony Joe White / The Beginning
https://open.spotify.com/album/5CijRmgFDpNamMyRoRGoZf?si=y5xinEXRSvi8mozYt1XLkw
萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2022/09/12/the-beginning-tony-joe-white/
トニー・ジョー・ワイトの熱心なファンというわけでもないけれど、こないだリイシューされたばかりの『ザ・ビギニング』(2022)には惹かれました。このアルバムがなんであるか、上でリンクした健太さんの文章にくわしいので、ぜひお読みください。
個人的にはトニー・ジョーがひとりぼっちでアクースティック・ギターを淡々と弾きボソッとしゃべるように歌っているっていう(若干の多重録音あり)そのたたずまい、雰囲気みたいなものに魅せられてしまいました。孤独感はサウンドにもちゃんと出ています。
そして、ギター・プレイのほうはぼくだって熟知の世界だという気がしてじっくり聴いてみたら、この弾きかたはカントリー・ブルーズのそれですよね。ヴォーカルのほうはそうでもないと思うんですが、トニー・ジョーは南部人なので、やはりそうした地点に立ちかえるということがあるのでしょうか。
9曲目「リッチ・ウーマン・ブルーズ」は曲題どおりのストレートな定型ブルーズですが、このアルバムのギターがカントリー・ブルーズのそれだというのはもっとひろい意味で、ほかの曲でもフレイジングのイントネーション、コロケーションの隅々にまでブルーズ香がしみ出ているのを聴きとることができると思うんです。その世界を聴き慣れた人間ならば皮膚感覚で理解できることのはず。
ファンキーでブルージーでダーティで、切なくて孤独な、この世界。荒々しい目つきでなにかをさがし求める者たちのたむろする世界。飢え。叶わなかった希望、破れた夢。亡霊のようなならず者。むさ苦しさ。孤独な旅人。
アクースティック・デモ・ヴァージョン集みたいな感じのアルバムですが、バンドでやった曲の再解釈とかもふくまれていたりもするので、なかなかどうして侮れず、シンプルだけど奥の深い音楽だという気がします。
(written 2022.9.30)
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