音叉の効用
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ってものが(演奏時はもちろん)音楽を楽しみで聴くだけのばあいでも間違いなくあると思うのはぼくがジジイだからかもしれませんが、たしかに楽器のチューニングに音叉を使って耳で聴いて合わせているっていうひとはもはやいないのかもしれませんね。
そもそもスタジオやステージでみんなが音を出しているさなかに自分ひとり音叉を鳴らしてチューニングするなんてことは不可能ですから、そういうときはもちろん視覚式チューナーを使わないといけませんしね。
ぼくがはじめてギターを買ってもらったのは中学生のときで、だから1970年代なかごろごろのこと。そのころ目で見るデジタル・チューナーがあったかどうか、あったかもですけど(なかったような気がするけど)自室で遊びで弾くだけならこれで、というんでギターといっしょに楽器店で音叉も買ったんだったと思います。
音楽用の音叉とはなんなのか、いまではことばを聞いてもナンノコッチャ?というかたもいらっしゃるかもしれませんが、それをわざわざいちから説明する気にもなれませんので(それくらいぼくらにはあたりまえの日常だった)そういったみなさんは各自ネットで調べてみてください。
ともあれ音叉の基準音はAで、それは=440Hz(欧州のオーケストラとか一般にクラシック系だといま442Hzくらいかも)。これが楽器チューニングの基本音なんです。チューニングしないと集団演奏は不可能ですから。
合奏の際は正確であればあるほどいいので、だから440Hzジャストにあわせようと思えば、ひとによりちょっぴりテキトーなこともあるかもしれない耳判断よりキッチリしたデジタル表示のチューナーでやったほうがいいというのはそのとおりです。これが音叉チューニングのデメリット。
ですけれど、音叉を使って耳で聴いて楽器をチューニングする習慣が身につくと、実は「耳が育つ」という面があると思うんですね。二つの音を鳴らして微細な音程の差を聴き分け一方を他方にあわせていくという作業はデリケートで、これを日々重ねていると、確実にサウンドを細かく聴く能力が向上します。
間違いなくこれが音叉チューニング最大のメリットでしょう。さらにギターとかならピッキング・ハーモニクスも学べます。バンド・サウンドのなかで自分がどれだけの音を出しているか聴き分けることもできるようになるので、ヴォーカリストなら歌の上達にも活かせるし、演奏者でもアンサンブルをきれいに響かせることにつながります。
こうしたことは、歌ったり演奏したりする側だけでなく、ふだんは聴いているだけのリスナーにとっても、実は同じように音楽を聴き分析できるようになる能力育成につながっていくので、効用があるんです。音楽は「耳で」聴くものですから耳を磨いたほうがいいというわけ。
楽器によりますがチューニングは毎日毎日どんどんやるものですから(生ピアノなんかはある程度固定式だけど)、それを(自宅では)いつも耳聴きで実行することにより、聴くのにも演奏し歌うのにも能力育成につながっていくという面があるっていうのは間違いないんじゃないでしょうか。
とはいえ、ぼくだってふだんはいまやクリップ・チューナーを常用していて(↓)、なにしろ一目でわかるし、ギターやベースやウクレレなどのヘッドをはさむだけでOKなので、ほんとうに便利です。慣れちゃうと音叉に戻りにくくなりますが、それでもいちばん上に載せた写真のように、いまでも忘れず取ってあります。基本ですから。初心忘るるべからず。
(written 2022.9.11)
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