キュート&チャーミング!知世カヴァーズ
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v.a. / ToMoYo covers 〜 原田知世オフィシャル・カバー・アルバム
https://open.spotify.com/album/2jXG91MPq9hN7ZEpdY1w9n?si=3d2NiMQYS4iPn17lmMFNWg
今年原田知世の活動が活発化しているのは、もちろんデビュー40周年のアニヴァーサリーだから。新作オリジナル・アルバム、東名阪ツアー、二枚組オールタイム・ベスト・アルバム、大規模コンサートと続いて、今度は公式カヴァー・アルバム『ToMoYo covers』(2022)が出ました。
『ToMoYo covers』に収録されている歌手とその曲目は以下のとおり。
1)土岐麻子「天国にいちばん近い島」
2)藤原さくら「早春物語」
3)中納良恵「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」
4)堀込泰行「シンシア」
5)kiki vivi lily「ロマンス」
6)indigo la End「ヴァイオレット」
7)橋本絵莉子「冬のこもりうた」
8)キセル「くちなしの丘」
9)Plastic Plastic「時をかける少女」
聴いていると、なんだかみんな知世が好きなんだ、愛されているんだなというリスペクトの念がひしひしと伝わってくるこのアルバム、曲は2「早春物語」を除き、すべて知世の伊藤ゴロー時代に初演されたかリアレンジ再演されたものばかり。
そうした知世ヴァージョンをカヴァー歌手たちも基本尊重しながら今回取り組んでいるなとわかるのが好印象。といっても声が違いますから、印象がガラリと変わっているものもあるんですが、サウンド・プロデュースはあくまで知世リスペクトでやっているとわかります。
例外は土岐麻子の1「天国にいちばん近い島」で、これは坪口昌恭がこの世のものではない美しいピアノを弾いた再演ヴァージョンではなく、オリジナル(1984)に近い印象です。土岐なりの工夫がサウンドの随所に聴きとれて、知世オリジナルのキュートさは維持しつつ、さらにかわいく仕上げたのがいいですね。
ピアノがジャジーな藤原さくらの2「早春物語」もかなり好み。実をいうと土岐麻子以外は今回はじめて聴く歌手たちなんですが、藤原は魅力的な声の持ち主ですよ。やや危ういフィーリングもあった知世ヴァージョンに比し、しっかりした手ごたえを残すヴォーカルです。
落ち着きを感じさせる中納良恵の3「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」はアダルト・ポップスといえる内容で、中納も実はちょっぴり音程感があいまいかな?と思わないでもないんですが、あえてコンピューター補正しないのは声のチャームを殺さないようにとの配慮でしょう。
ほぼアクースティック・ギター弾き語りというに近い堀込泰行の4「シンシア」もしんみりしていて、さわやかさが目立っていた知世ヴァージョンよりもしっとり感を増しています。じっくり語りかけるようにことばをつづる堀込もいい歌手。
7「冬のこもりうた」を歌う橋本絵莉子の幼児っぽいロリ声はやや苦手かもしれないんですが、それでもおっいいねと思える瞬間があります。5「ロマンス」を歌うkiki vivi lilyと6「ヴァイオレット」を歌うindigo la Endのヴァージョンには、どっちにもシックスティーズっぽいレトロ・ポップなフィーリングが感じられ、個人的には好ましく。
おだやかなロック・チューンっぽい感触になったキセルの8「くちなしの丘」も、知世2017年ヴァージョンを意識したようなストリングスも聴かれるPlastic Plasticの9「時をかける少女」も、それぞれ聴かせる内容があります。アルバム全体ではやはり近年のグローバル・ポップスらしいオーガニックさに満たされているのがグッド。
知世ソングを素材にした今様J-POPの見本市として聴くこともできますね。
(written 2022.11.6)
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