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2022/11/16

バンドが自分の楽器だ 〜 マイルズ

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(3 min read)

 

前から言いますように、マイルズ・デイヴィスという音楽家(主にトランペット)は、バック・バンドがどんなでも闊達に吹けて本領を発揮できたというタイプではありませんでした。その点では凡庸な演奏を従えてでも天才的なプレイをしたルイ・アームストロング、チャーリー・パーカー、クリフォード・ブラウンらとは異なっています。

 

マイルズのばあいは「バンドこそが自分の楽器」といったようなスタイルの持ち主。だからバンドの演奏がつまらないと連動するように自身のトランペットまでたいしたことないように聴こえてしまう音楽家なんですね。そこをしっかり自覚できていたがゆえに、いつの時代でもバンド・メンバー選びには最大の注意を払っていたわけです。

 

どんな音楽家でもそういった部分はあると思いますが、マイルズのばあいはバンドに左右される度合いがひどいんですよね。裏返せばバンドがしっかりしていれば、それに乗って自身のトランペットもいい感じに聴こえるし、そもそも間をとても大切にしていた音楽家で、特にノリよくグルーヴィにドライヴするタイプの音楽でこういったことが最大限に発揮されたと思います。

 

そしてバンド任せで自由にやればいい、自分はさほど口出しせず伸び伸びと演奏してもらいたいという感じでもありませんでした。スタジオ・セッションではもちろんライヴ・ステージ上でもメンバーにうるさく指示を出して、自分の目指す方向性のサウンドに持っていけるように按配していました。

 

ライヴのときなんか自分が吹いていないあいだはソデにひっこんで知らん顔していたじゃないかと言われそうですが、バンドのサウンドはしっかり聴いていて、その場ですぐにではないにせよ、あとからここはこうしろと指導していましたし。73〜75年ごろのファンク期以後亡くなるまではそのままステージにいて、客席には背中向けて、演奏中にバンドへ指図していました。

 

こういったことはバンドこそが自分の楽器だという気持ちがあるからやること。リーダー・ミュージシャンとしての責任感みたいなものともいえますが、バンドがグルーヴするか否かで自分のトランペットが、音楽全体が、生きるか死ぬかも決まってくるんですから、文字どおり命懸けでバンド・サウンドの構築に取り組んでいたんですよね、マイルズは。

 

この点においてはデューク・エリントン、マイルズ・デイヴィス、フランク・ザッパ、プリンスの四者は同一タイプのミュージシャンだったなと思いますね。

 

(written 2022.9.14)

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