1970/2020年のダブル・ヴィジョン 〜 ミコ・マークス
(3 min read)
Miko Marks & The Resurrectors / Our Country
https://open.spotify.com/album/5e5PRCyX77IfDVxTQF0vUZ?si=lssvvJtARhOCY-hcqN6k4g
そいで、ミコ・マークスがレッドトーン・レコーズと契約しハウス・バンドのザ・リザレクターズと組むようになってからの第一作『アワ・カントリー』(2021)も聴いてみました。このチームによるきのう書いた最新作ですっかり気に入っちゃったので。
こっちはザ・バンドっていうよりレイド・バックしたディレイニー&ボニーみたいなLAスワンプ・ロック色が強く、ホンキー・トンクなフィールもあります。ジャケット・デザインも断然こっちがより好みで、いいなあこれ。
収録曲は2「ハード・タイムズ」がかのスティーヴン・フォスター作で、ラスト10「ナット・ビー・ムーヴド」がトラディショナルをベースにリアレンジしたものなのを除き、ミコ&レーベルのジャスティン・フィップス&バンドのスティーヴ・スズキ・ワイアマン三者の共作か単独作ですね。
いずれもカントリー、ブルーズ、ゴスペルなどが渾然一体化していた1970年ごろのスワンプ・ロック・スタイルで統一されていて、ミコのカントリー・ソウルな志向とレーベルやバンドの方向性が合致しているという喜びや充実感がサウンドにあふれています。
1曲目「アンセスターズ」だけ聴いてもそれはあきらか。このグルーヴ感ですよ、こういうのこそぼくがロック(やその周辺)に求める最も強い快感。それにこのエレキ・スライド・ギター、かっちょええ〜っ!まるでドゥエイン・オールマンみたいなこれはおそらく中心人物のスティーヴ・ワイアマンが弾いているんでしょう。すばらしいのひとこと。
フォスターの「ハード・タイムズ」も、なんだかソウルウルにしあがっているし、3曲目以後もアクースティック楽器を中心としながら、適度にエレクトリックなサウンドを按配する加減がいい。どっちかに決めつけないバランス感覚もあのころのロックがしっかり持っていたものでした。
ブルーズ、カントリー、ソウル、ゴスペルなど人種に関係なくアメリカ音楽の混淆を実現している姿勢は、ある意味現代のBLM的意味合いをも帯びているといえて、じっさい歌詞にそうした主張が色濃く表現されている曲もあり。この点においても1969〜70/2020年代以後的な重層性がミコの音楽にはあります。
(written 2022.11.2)
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