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2022年12月

2022/12/31

世間でいうレトロ・ポップスとぼくの好きなレトロ・ポップスは違う

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(4 min read)

 

Retro Pop
https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXcTieYAg7jq1?si=4098e2c3ce954e96

 

上の写真はSpotify公式のレトロ・ポップ・プレイリスト。聴いてみてわかるのは、こうした近ごろ流行りの世間でいうレトロ・ポップスと、ぼくが好きでブログでどんどん書いているレトロ・ポップスにはズレがあるということ。

 

世間でいうレトロ・ポップスとは要するにレトロR&Bのことなんですよね。特に1980年代ものかな、そのへんのR&Bを意識した音楽で、世紀の変わり目ごろからのネオ・ソウル隆盛が70年代ニュー・ソウルの復権運動だった(デジタル打ち込み主流音楽への反動もあり)のに比べ、そこからさらに時代が進んだところへのあこがれの眼差しということです。

 

それでも上の画像どおりジャケットのふちの紙がこすれてかすれたようなデザインに配信だけどわざわざなっているのでもわかるように、たしかに過去への、アナログ時代への、それも中古レコード盤で聴くような世界への回帰というか、いまふうのリバース(rebirth)現象なんです、レトロR&Bも。

 

そのあたり当時のR&BにもレトロR&Bにもそんなには強い愛好気分のないぼくが心底大好きでどんどん記事にしている「レトロ・ポップス」は、ちょっと別なもの。ぼくのいうレトロ・ポップスとは、つまりレトロ・ジャズのことです。1920〜50年代前半的な、ディキシーランド・ジャズ、スウィング・ジャズ時代への遡及を聴かせる現代ポップ歌手たちこそが好み。

 

具体名をあげればレイヴェイ、ダヴィーナ&ザ・ヴァガボンズ、サマーラ・ジョイ、ルーマー(の主な素材は70年代ものだけど)、サマンサ・シドリー、エマ・スミス、メグ(民謡クルセイダーズ)、キャット・エドモンスン、ヘイリー・タック、ノナーリア(インドネシア)など。

 

共通しているのはロックンロール・ビッグ・バンがあったその前の時代へのレトロ現象だってこと。だからロックともR&Bとも縁がなく、爛熟黄金時代だったジャズやそれ系ポップスの曲や演唱スタイルをひたすらなぞって21世紀に再現しているわけです。そういったいまどきの音楽こそ好きなんです。

 

そうしたレトロ・ジャズ・ポップスとはどういった音楽で、21世紀に誕生し隆盛になっている理由や背景とか、個人的にどこがどんなふうに好きかなど、いままでも散々書いてきたことなので、過去記事をぜひお読みください。このへんとか↓

 

「ジャジーなレトロ・ポップスが、いまドープ ver.1.0」
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2021/12/post-b45f60.html

 

あるいはこれ↓

「ジャズにおけるレトロ・トレンドとはなにか」
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2022/09/post-7d3478.html

 

きょう一番上でご紹介したSpotifyの「Retro Pop」プレイリストはレトロR&Bのセレクションなんですけど、それでも一曲レイヴェイが選ばれたりもしていますし、そのほかにもぼくの趣味にあうレトロ・ジャジーなものがちょこちょこふくまれています。

 

そのあたりきっちり区別しすぎず、過去へのあこがれと遡及を聴かせるコンテンポラリー・ポップスをおおざっぱにくくって「レトロ」と呼んでいるのがこのごろの傾向なのかもしれないですね。いずれにしても若者に特有の気分で、日本でだってZ世代に昭和レトロが流行しているのは同一基軸の現象なんですね。

 

(written 2022.12.17)

2022/12/30

ベスト・アルバム 2022

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(2 min read)

 

My Best Songs 2022
https://open.spotify.com/playlist/6dVHmu1vZhUQyYf9c2GojA?si=10f4dca563ec43c2

 

評価とかデータ面じゃなく、個人的印象や愛好フィールの強さで順に並べてあります。

 

1)Laufey / The Reykjavík Sessions(アイスランド)

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もう息の音までも好き。
https://open.spotify.com/album/6ETdl4OHcpXhMQdLWstM2G?si=gs_QJo-KSIi2FIFGaFV1mA

 

2)Patricia Brennan / More Touch(メキシコ)

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2021年はじめから応援しているヴァイブラフォン奏者の新作は、今年のジャズでNo.1の内容になりました。
https://open.spotify.com/album/68FjddVbbxBB0qI58Lsqu6?si=ac9Jr2aTR1u4iYWtYySuKQ

 

3)孙露 / 忘不了(中国)

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こうした静かなおだやか系ポップスこそ、いまのぼくの最愛好品。鄧麗君のカヴァーも二曲あり。
https://open.spotify.com/album/1UL8CRnyaqwSlBjWvodInI?si=HenCuYTHTc2PlwoHedZH8A

 

4)L8ching / Dive & Give(台湾、2021)

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都会的洗練(=退廃)のきわみ。特に4曲目での異要素接合ぐあいにはほんとうに感心しました。
https://open.spotify.com/album/1Zl1TH7j0cZEHf03ScvES2?si=NdYTMf7RQ76ZIDv77b4C6Q

 

5)原田知世 / fruitful days(日本)

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語らずとも知れたいちばん好きな歌手というか音楽。
https://open.spotify.com/album/4qEzXvDAgusrcMi5O5dWr7?si=8sJ__GuSQPqU6gA7L6z-wA

6)Rumer / B Sides & Rarities Vol.2(アメリカ)

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これもよく聴きました。やはりレトロ&オーガニック路線のアメリカン・ポップスで、2020年代のトレンドをかたちづくっているもの。
https://open.spotify.com/album/0CNhXKYx4kOOZrelgXiGUr?si=qJmylaz3TtegWuqWJ7N7Vg

 

7)Nduduzo Makhathini / In The Spirit of Ntu(南アフリカ)

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今年のジャズ新作ではパトリシア・ブレナンと並び抜きに出ていましたね。夏ごろまでは年間一位にしようという気分でした。
https://open.spotify.com/album/3UnSb3V4gzrt2ofjYfsLDl?si=Twe5_04IQ1iWOYOKh_Y8cQ

 

8)大西順子 / Grand Voyage(日本、2021)

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ピュアな肉体派の快感を追求したがんがんくるジャズ・ピアノ。こういうのに出会うといまだゾクゾクします。
https://open.spotify.com/album/6gzWFN7EHXqlNTvP7iKLP3?si=dEGMOVMfRUWlAh6XkAf0fg

 

9)Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen(アメリカ)

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コロナ時代ならではの現代的形象をまとったレナード・コーエン・ソングブック。沈鬱だけど、暗さとないまぜの鈍く輝くあざやかさがあり。
https://open.spotify.com/album/7dcCXRBgb3p86KCg4ZUTff?si=FL_ziiEnQpGM0zCuhZMDRQ


~~~

(参考)再生回数順の2022年新作リスト

1)原田知世 / fruitful days(日本)
2)Rumer / B Sides & Rarities Vol.2(アメリカ)
3)岩佐美咲 / アキラ(日本、2021)
4)Edu Sangirardi / Um(ブラジル)
5)Laufey / The Reykjavík Sessions(アイスランド)
6)Laufey / Everything I Know About Love(アイスランド)
7)Steve Dawson / Gone, Lone Gone(カナダ)
8)Flora Purim / If You Will(ブラジル)
9)Nduduzo Makhathini / In The Spirit of Ntu(南アフリカ)

※ そしてこれらよりずっと過去作を聴きました。

 

(written 2022.12.3)

2022/12/29

リズム&ブルーズ/ポップ・クラシックスへのレトロなオマージュ 〜 レイク・ストリート・ダイヴ

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(2 min read)

 

Lake Street Dive / The Fun Machine: The Sequel
https://open.spotify.com/album/5O41WrYns4BBDOtvVx1JFM?si=c1BLik8mTtq_kt451aTtgg

 

あるときふと流れてきた「ソー・ファー・アウェイ」(キャロル・キング)に惹きつけられ、知っている既存ヴァージョンのどれでもないし…、と思って見てみたらレイク・ストリート・ダイヴとの名前。はじめて出会いました。

 

調べてみたらボストン出身で、そこそこキャリアを積んだ名のあるバンドみたいです。その「ソー・ファー・アウェイ」はアルバム『The Fun Machine: The Sequel』(2022)に収録。ジャケット・デザインでも暗示されているとおり往年の有名ポップ・ソングのカヴァー集で、選曲も音楽性もちょっぴりレトロ。

 

全六曲、オリジナル歌手を記載しておきます↓

1 ポインター・シスターズ
2 ディオンヌ・ワーウィック
3 シャニア・トゥウェイン
4 キャロル・キング
5 ボニー・レイト
6 クランベリーズ

 

レイク・ストリート・ダイヴはフロントで歌うレイチェル・プライスのソウルフルでちょっぴり気だるそうなレイジーなヴォーカルがなんともチャーミングで、といっても男声がリード・ヴォーカルをとっている曲もあります。サウンドはメンバーの生演奏で構成されていますね。

 

個人的に特に強く印象に残ったのは、ですから4「ソー・ファー・アウェイ」(パラパラと点描するエレキ・ギターもいい)と、1「オートマティック」、それから3「ユア・スティル・ザ・ワン」(男声ヴォーカル)あたり。三つ目の曲知らないなと思って調べてみたら、ポップ・カントリーの歌みたいですよ。

 

シンプルでなんでもないようなバンドの演奏も、しっかりした技術に裏打ちされているうまいもの。レイチェルのコクのある声と歌いこなしにはそこはかとなくセクシーさもただよっているし、コーラス・ワークだってチャーミングで、曲次第ですけど今作は古典的リズム&ブルーズ/ポップへのレトロなオマージュということで。

 

(written 2022.12.25)

2022/12/28

「でもぼくのためじゃない」〜 my favorite torch songs(英語圏篇)

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(3 min read)

 

my favorite torch songs
https://open.spotify.com/playlist/2zfyPmq1QYn4vPQwYqS4J7?si=99e52bb774c54f20

 

いちばん好きな失恋の歌はプリンスの「ナシング・コンペアーズ・2・U」。そのほか好きなトーチ・ソングばかり15曲集めて約一時間のプレイリストにしておきました。つらく切なく美しくて崇高で、実にいいですよねこの世界。

 

1 Prince / Nothing Compares 2 U
2 Laufey / Let You Break My Heart Again
3 Mica Miller / Will I See You Again
4 Chet Baker / But Not for Me
5 J.J. Johnson / It Could Happen to You
6 Carmen McRae / It’s Like Reaching for the Moon
7 Billie Holiday / These Foolish Things
8 Laufey / Falling Behind
9 Miles Davis / It Never Entered My Mind
10 Derek & the Dominos / I Looked Away
11 Willie Clayton / I’d Rather Go Blind
12 Allen Toussaint / Long, Long Journey
13 Billie Holiday / Solitude
14 Frank Sinatra / One for My Baby
15 Derek & the Dominos / Thorn Tree in the Garden

 

離別や失った恋ばかりでなく、はなからうまくいかない恋、届かない恋、片想い、妄想、内気な臆病さ、失意の予測、諦観と落ち着き、懐古、曇り空など、トーチ・ソングの内容はさまざま。

 

セレクションを一曲一曲説明はしませんが、2、8レイヴェイ、3ミカ・ミラーあたりは一般的にまだ無名どころでしょうね(後者なんかぜんぜん?)。11ウィリー・クレイトンもひょっとしてそうかな。

 

ウィリーを選んだのには理由があって、大好きな失恋歌「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」を入れたかったんですが、本命スペンサー・ウィギンズのがサブスクにないんですよね。それでウィリーのを。これもいいです。

 

それら以外は説明不要。失恋ソングといっても、そんな深刻で悲しく落ち込むようなものよりも、うんそれもいいんだけど、曲調はわりと明るく楽しげにスウィングしているものが多いような気がします。そんでもって孤独で気高い。

 

それが個人的に好みだというばかりでなく、そもそもトーチ・ソングの世界とはそういうもの。歌詞にあまりのめり込みすぎないインストルメンタル・ジャズに長年親しんできたからっていうのもありそうですけどね(といっても今回はそんなに選ばなかった)。

 

個人的にはアロマンティックゆえ、これといった大きな恋愛も失恋も人生でしてこなかったんですが、そういう歌を聴いてなんとなくファンタジー気分にひたったりするのは快感で大好き。他人事ですけど、没入しすぎない距離感も音楽には大切です。

 

(written 2022.12.25)

2022/12/27

過去に無法地帯だったYouTubeで

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(4 min read)

 

Miles Davis / Star People
https://www.youtube.com/watch?v=PsXqBdkaZbU

 

2010年にやりはじめ、いままでいくつアップロードしたかわからないYouTube音楽ファイル(ぜんぶで100やそこらじゃない)。そのうちコメント数最多なのがマイルズ・デイヴィスの曲「スター・ピープル」(1983)で、93個(2022年11月22日時点)。音楽への賞賛の声ばかり。

 

再生回数ならドクター・ジョンの「アイコ・アイコ」が約23万回でトップなんですが、そっちで見たって「スター・ピープル」は第三位の7万4千回ですし、どうしてこんなに人気なんでしょうね。ドクター・ジョンのほうは逝去と回顧で一気に再生数が伸びた感じでした。

 

「スター・ピープル」をアップロードしたのは2015年9月18日となっています。ブログをはじめた直後の時期で、筆力のおぼつかないぼくなんか音源共有の必要があるんですね。サブスク・サービスはまだなかったから、YouTubeでさがして見つからないものは自分でファイルつくって上げていました。

 

ブログ開始後のぼくのYouTubeチャンネルはそんなのばっかりで、すべては文章による説明力不足を補う目的で音源ファイルを貼っておきたいということでした。サブスクが普及し活用するようになって以後は自分でやる必要がなくなり。権利関係のしっかりしている正規サービスですし。

 

権利関係、なんてことを言いだしたら、ですからもちろんぼくは他者に権利があるCD商品音楽ばかり無断でアップしていたわけなので、グレーどころか真っ黒け。じっさいプリンスなどものによっては権利者に見つかってクレームされYouTube当局に強制削除されたものだってありました。

 

グレー(っていうかブラック?)な存在のままでいるのも個人的にイヤになってきて、権利関係の整った音源を、プライベートなブログだけど紹介したいという気持ちが強くなってきましたし、それになによりやっぱりサブスク・サービスの普及がぼくのなかではとってもデッカい。これで安心してご紹介できるなって。

 

そんなわけなんで、マイルズとかは(プリンスも多くのドクター・ジョンも)すべてがサブスクに乗っているんですから、なんだったらそっちでさがして聴けばいいでしょっと思うんです。なにもどこのだれだかわかんない日本人の無断アップロードで聴かなくたって。あるいはCD買うとか。

 

そのへんはですね、ひょっとしてやっぱり音楽もタダ聴きできるぶんにはなるたけそうしたい、その点サブスクはちょっとあれじゃないかとか、そういうふうにお考えになっているみなさんが世界中にあるいはたっくさんいるのかもしれないですよね。

 

もちろん今日ここまで書いたぼくのあたまにあるのは過去に無法地帯だった時代のYouTubeであって、最近は権利関係をちゃんとするようになりましたし、音楽家やレコード会社などが公式に作品を紹介したり新作を発表したりする場ともなっていますので、いまや事情は違っているんですけども。

 

ぼくの「スター・ピープル」だって、正規にこの音楽の権利を保有しているSMEへのリンクがいつごろか貼られているし、そのほか(ブートレグ音源以外は)どれもだいたい同様ですから、1再生いくらっていう勘定で権利保有者にお金が行くことになっているんだろうと思うんです。

 

だから、いいんですけど。YouTubeでどんどん聴いてもらって。アップローダーがぼくですけどね。

 

(written 2022.11.22)

2022/12/26

ステファン・フィールで 〜 エリア・バスチーダ

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(4 min read)

 

Èlia Bastida / Tribute to Stéphane Grappelli
https://open.spotify.com/album/26BlMn31cs7svG0qevEIV5?si=_BjSSE26SpauPrdPiZbx0g

 

エリア・バスチーダは1995年バルセロナ生まれ、岩佐美咲や中澤卓也と同い年で、いはゆるZ世代の一員です。四歳からヴァイオリンをはじめてクラシック音楽の修練を積み、17歳でジャズ・バンドに加入したそう。

 

公式ホーム・ページによれば主な影響源はチェット・ベイカー、スコット・ハミルトン、アート・ペッパー、デクスター・ゴードン、ソニー・スティット、ステファン・グラッペリ、サラ・ヴォーン、レスター・ヤング、エリス・レジーナ、ジョアン・ジルベルト、シコ・ブアルキ、フレディ・ハバード、クリフォード・ブラウン、ビル・エヴァンズ、エラ・フィッツジェラルドなど。

 

2017年以後すでにいくつもアルバムを出してきているようですが、最新作『Tribute to Stéphane Grappelli』(2022)は題名どおり偉大な影響源にささげた内容。いいですねこういうの。基本ギター&ベースとのトリオ編成で、曲によりドラムスも参加しています。

 

MJQの「ジャンゴ」だってやっているし(それも二回)、ってことはつまりフランス・ホット・クラブ五重奏団がやったようなああいった音楽を指向しているのかなと思うとすこし違って、トラディショナルなストレート・ジャズをベースにクラシカルな方向性に寄った内容を展開しています。

 

地金がクラシック・ヴァイオリンなんだろうという気がしますが、それでもステファン・グラッペリへの敬意は音色とフレイジングのはしばしに表現されているのがわかって好印象。常に気品高く、決して俗な感じにならない音楽家ですね。

 

おだやかに落ち着いた平坦な音楽で、こういう雰囲気はレトロ&オーガニックな路線が支持されるようになって以後分野を問わず拡大しているものです。劇的で大げさなところのとれたなだらかな老境に入りつつある現在のぼくの心境にはピッタリ。

 

ジャズとクラシックだけでなくブラジル音楽好きを本人は公言していますが、本アルバムを聴くかぎりではブラジルっていうよりカリブ方面へのアプローチが濃く出ているような感じです。それは意識してというよりスペイン人だから自然とラテン性がにじむということかもしれません。

 

特にカリビアンなラテン・ジャズ(・クラシック)っぽさが鮮明なのが4、5、8、13曲目あたり。ヴァイオリン・スタイルはどこまでも典雅ですが、リズムにはっきりした愉快さ楽しさがあります。ボレーロ(だけどアバネーラっぽい)、スウィング、カリビアン・ダンス、ファンクなど。

 

なかでも8「ダンス・フォー・ステファン」のリズムとか13「グラッペリア」のファンクネスなんてすばらしいですよ。どっちもステファン・グラッペリの名前が曲題に入っているわけですから、ことさトリビュートを意識して書いた自作なんでしょう。現代的な相貌をとったグラッペリ・ミュージックとも解釈できます。

 

いっぽうでJ・S・バッハの曲にジャジーなビートを付与して演奏したり(3)、また9「ネイチャー・ボーイ」なんて有名ポップ・ナンバーがクラシカルなヴァイオリン独奏曲みたいになっていたりするのも、エリアの一面でしょう。ヴォーカルを披露する曲もあります。サックスもやるそうですが本作では聴けず。

 

(written 2022.12.22)

2022/12/25

戦後録音のなかではNo.1ディキシーランド・ジャズ 〜 エディ・コンドン

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(3 min read)

 

Eddie Condon / Jam Session Coast-to-Coast
https://open.spotify.com/album/7AG4Cw4RDYvgmmYS66Xc5o?si=5ZVYShLuSsW3HZZ-pEwqqg

 

同じ音楽のことばかりなんども書いてゴメンニャサイほんとうに心底好きなんだエディ・コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』(1954)。これ、最初にこのブログで記事にしたころはまだサブスクなかったので、外せないと思う重要曲は自分でファイルつくってYouTubeに上げたのをリンクしていました。

 

このレコードでのコンドン・バンドの演奏はA面だけで(B面は別の西海岸バンド、コンドンらは東海岸)、しかも最高にチャーミングだと思えるのはラストのジャム・セッションを除く冒頭三トラックだけ。それらは真なる極上品ですよ。戦後録音のなかではNo.1ディキシーランド・ジャズでしょう。

 

YouTubeファイルに付くたくさんのコメントを読んでいると、このレコードを当時買ってそのまま愛聴し続けているというアメリカ人年配ファンのかたが、たまたまYouTubeでぼくのそれを見つけてうれしくなってコメントしてくださっているというケースが多く。

 

そうですよね、ぼくみたいに(比較的)若い、しかも日本在住の日本人がこんな古いアメリカン・ジャズが好きで好きで、みずから進んでファイルまでつくってアップロードしているんだから、本場(ではいまだ至るところでこの手の音楽は生演奏されている)の古株ファンからしたら「こいつだれ?」ってなりますよねえ。

 

冒頭三トラックのうち、二つ目がとってもきれいでチャーミングなプリティ・バラード三曲のメドレーでうっとりするし、1・3トラック目はドライヴするスウィンガー、それもめっちゃ楽しくて、自室のなかでかけていても踊りだしてしまうし、思わず笑顔になって気分もアップ、イヤなことなんかすっかり忘れちゃうっていう、これぞ大衆エンタメ音楽の真髄ですよ。

 

Spotifyをやるようになった最初のころはこのアルバム入っていなかったと思うんですが、じきに聴けるようになったのがこれ(上と同じ)↓
https://open.spotify.com/album/7AG4Cw4RDYvgmmYS66Xc5o?si=hL7SMzfySQ-UvlChXn63UA

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でもこれなんでこんなジャケットなんでしょうね。同じデザインで古典ジャズ音源がたくさんサブスクにありますから、なにかの復刻シリーズなんでしょう。いっぽうオリジナル・ジャケをきれいに整理して(整理しすぎだけど)、同じ音楽だけどべつなものもSpotifyに最近あります↓
https://open.spotify.com/album/4pvnCA7OPlyFpIfq4nVJaV?si=FZHjRu1yQmmjsG_WF2ZqGw

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ジャケだけ見たらこっちのほうが雰囲気だぞと一瞬思ったんですけど、なんと音質的に問題ありなんですね。聴けたもんじゃないかと思うほど悪い。二つを聴き比べれば違いは瞭然としています。ですからもしこのアルバムをサブスクで聴いてみようかなとお考えのかたは、ぜひ前者のジャケのやつをさがしてください。オリジナルのレコードやリイシューCDに近いのはそっちです。

 

(written 2022.12.18)

2022/12/24

エマ・スミスのレトロ・ジャジーなクリスマスもいいね

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(1 min read)

 

Emma Smith / Snowbound
https://open.spotify.com/album/0ExyRBD1gjGW2OUeKYecrJ?si=TXWDrro1QvqyxF22ROEwSw

 

以前一度書いたロンドンのレトロ・ジャジーなポップ歌手、エマ・スミス。最新EP『スノウバウンド』(2022)はクリスマス・ソング集です。リリースがちょっと遅かったっていうか、今年のぶんはもうレイヴェイので書いちゃったけど、エマのこれも楽しい内容なのでスルーできず。軽く触れておきます。

 

全五曲、いずれもよく知られたスタンダードな古典的クリスマス・ソングで、日本でも親しまれてきたものが多いです。エマの本作でのレンディションは基本オーソドックスなメインストリーム・ジャズのスタイルに沿ったものですが、ところどころハッとさせるおもしろさがあり。

 

オルガン・トリオ+テナー・サックスという典型的モダン・ジャズ・コンボを伴奏につけていて、オープニングのおなじみ「赤鼻のトナカイ」はなんとファンク・チューンに変貌していますからね。かなりタイトでカッコいい。エマってこういうのもできる歌手なんだと知りました。

 

2曲目以降はジャジー&かなりブルージーに。サックスとハモンド・オルガンのムーディなサウンドが目立っている内容で、エマも雰囲気たっぷり。ナイト・ムードなバラード二曲、スキャットをまじえながら4/4ビートでスウィングするストレート・ジャズ、三拍子12小節3コードのブルーズ。

 

(written 2022.12.21)

2022/12/23

クリスマス with レイヴェイ

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(3 min read)

 

Laufey / A Very Laufey Holiday
https://open.spotify.com/album/0NXOmjbsRluHO8QLpZFEBd?si=QJVktP83QWm-kIC5R_cuuA

 

毎年クリスマス・イヴにはクリスマス・ミュージックのことを書いていますが、今年は愛するレイヴェイ(アイスランド)の歌うそれで楽しみます。個人的心情ではレイヴェイ・イヤーでしたし、じっさい大きくブレイクしたし、愛好度もいちじるしく増したというわけで。

 

レイヴェイがこないだリリースしたクリスマス・ソングは「ザ・クリスマス・ウォルツ」(2022)。最初これ一曲だったのが、その後カップリング・ナンバーも追加されました。曲はフランク・シナトラのためにサミー・カーンとジュール・スタインが書いた、初演は1954年のシングルB面。その後スタンダード化しました。

 

レイヴェイの「ザ・クリスマス・ウォルツ」は、まずじわっと入ってくる瀟洒なストリングス・サウンドではじまります。弦楽は最初と最後に出てきていろどりを添えていますが、データがないのでどこのオーケストラかなんてことはわかりません。

 

ただいま(11月)欧州ツアーのまっただなかでレイヴェイがこれをリリースできたということは、あるいはひょっとして(わからないけど)故郷レイキャヴィクのアイスランド交響楽団という可能性があるかもしれません。10月末に同地で共演コンサートを行ったばかりですし、そのとき実家にしばらく滞在していたようですから。

 

レイヴェイのライヴはほぼ常にひとりでの弾き語り中心で、ときたまサポート・メンバーがつくケースがありはするものの、いずれにしても「ザ・クリスマス・ウォルツ」で聴けるような大規模弦楽と行動をともにするチャンスはほとんどありません。いつも陰キャなベッドルーム・ポップっぽいのがレイヴェイ。

 

「ザ・クリスマス・ウォルツ」だって、弦楽が聴こえていない時間はやはり弾き語りで、自室で録音したような響きを中心に構成されていますよね。終盤こどものヴォーカル・コーラスと、しめくくりにそのまま「メリー・クリスマス!」とみんなで元気に叫ぶ声が入っています。

 

カップリングの「ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォーム」は2021年12月にシングル・リリースされていたものをそのまま流用。ドディーとのデュオ・ヴォーカルで、こっちもチャーミングです。やはり季節感ピッタリな冬の歌ってことで選んだのでしょう。

 

(written 2022.11.20)

2022/12/22

「(あのうまいやつを)淹れてくれ」

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(3 min read)

 

写真は2018年2月に買って以来ずっと愛用しているカリタのコーヒー・ミル。これ以前は手まわしで挽くハンド・ミルを使っていましたが、どうしても粉の大きさに多少のムラができてしまっていました。ハンド・ミルでは避けられないものですが、超微粉は雑味の原因になるので。

 

とはいえ、2018年に買ったということはわりと最近ですよね。長い人生それまでずっとハンド・ミルを使ってきたわけで、それで満足していなかったというのでもありません。その前なんかお店で挽いてもらってパウダーにしたのを持って帰っていたくらいですから。

 

焙煎豆のままで買ってきて淹れるたびに挽くようになったのは、実はそんな前の話でもなくて、たしか世紀の変わり目ごろのこと。ミルは渋谷東急ハンズで買ったと思います。職場が渋谷にあったので、その帰り道でハンズに立ち寄ったんでした。

 

淹れる直前に豆から粉にするようにしてからは、できあがりのコーヒー液の風味がぐんと向上するようになったというのを当時実感していました。カリタの(業務用スペックの)電動ミルを買ったのがぼくにとってはコーヒー人生二度目の革命で、それ以後はホントおうちカフェ・タイムが楽しくって。

 

ペーパー・ドリップでコーヒーを自作するようになったのはたしか大学生のころから。高校生時分にわりといいインスタント・コーヒーを買って愛飲していて、もっと本格的な味を!と追求するようになったんだったと思います。それで紙のガイド・ブックとかを買って(当時ネットはない)いろいろ調べました。

 

両親や弟たちと同居している時代だったので、自分用のコーヒーをつくる際にみんなのぶんも同時にドリップして「うまい」と称賛されていたのはおぼえています。弟二人はそんなにコーヒーほしがらなかったんですが、両親がコーヒー好きでした。「(あのうまいやつを)淹れてくれ」とせがまれることもしばしば。

 

上京してひとり暮らしになってはじめて自分にだけコーヒーをていねいに淹れるという日々になりましたが、その後10年弱で結婚して二人暮らしになりましたから、今度はパートナーのぶんもいっしょにつくることになりました。どっちも働いていましたから時間が合わないときはしょうがなかったんですけど。

 

離別してからもコーヒー・メイクをやめるなんてことはなく、その後はふたたび自分用に一人分だけつくって飲むという日々が現在まで続いています。間違いなく死ぬまでずっとこのままひとりなので、だれかのためのコーヒーをいっしょに淹れるっていうことは今後ないでしょう。

 

お店出せばいけるんじゃないかなんて言われることもときどきあるコーヒー・ライフでしたが。

 

(written 2022.12.13)

2022/12/21

だらだら流し聴きで気持ちいい 〜 トム・ペティ at フィルモア 97

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(4 min read)

 

Tom Petty and the Heartbreakers / Live at the Fillmore, 1997
https://open.spotify.com/album/1XtnMkxeV9wdELLvBZxktL?si=inzl22NsTx6HS1fKbAvgtw

 

トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの『ライヴ・アット・ザ・フィルモア、1997』(2022)。これも大部なボックスもののようで、フィジカルはおろかサブスクですらそうしたものへの興味が消え失せつつあるぼくなんかケッとか思って、縁はないだろうとたかをくくっていたんですけども。

 

それでもちょっと気を取りなおして、なにを聴いてもいいヒマな時間がたっぷりあったのでだらだら流し聴いてみました。そうしたらとても心地いいんですね。なんでしょうかこれ。どこがそんなに?というと、古典的なロックンロール・スタンダードを当時のスタイルのままでたっくさんカヴァーしているところ。

 

ロカビリーだってあれば、ヴェンチャーズみたいなインストものあり、ブルーズ、カントリーなどもりだくさんで、さながらロック系アメリカン・ミュージック史の見本市みたいになっています。三時間半もあるからじっくり腰を据えて向きあうには長すぎるんですが、BGMとして流し聴きしていればいい雰囲気なんですね。

 

ただなんとなくやってみたというんではなく、この1997年の一ヶ月間にわたるフィルモア・ウェスト・レジデンシー公演20回(録音されたのはラスト6回)でのトム・ペティには、はっきりした意図があったんじゃないかと思わせるロック・クラシックス・トリビュート的な内容です。ぼくみたいな常なる古典派人間にはうれしいところ。

 

とにかく全体の半数以上がカヴァーなんですから、ボブ・ディラン/ビートルズ以後自作自演オリジナル至上主義でやってきたロック界ではめずらしいこと。ですから、もちろんスペシャルなライヴ・シリーズだったというのがあったにせよ、トム・ペティ自身なにかクラシックスを意識した面がこのときはあったと思うんですよね。

 

チャック・ベリー、リトル・リチャード、ボ・ディドリー、J.J.ケイル、ローリング・ストーンズ、リッキー・ネルスン、ゼム、ゾンビーズ、ヴェンチャーズ、ブッカー・T&ザ・MGズ、キンクス、グレイトフル・デッド、ザ・バーズ、ボブ・ディラン、レイ・チャールズ、ビル・ウィザーズなどなど。

 

なんと007映画の主題歌だったジョン・バリーの「ゴールドフィンガー」までやっているし、さらにはジョン・リー・フッカー本人をゲストでむかえての三曲なんか、ある意味このアルバムの私的クライマックスともいえる高揚感。フッカー御大はいつもどおり淡々と自分のブルーズをやっています。それとは別にロジャー・マグイン(とトムは発音)が参加するパートもあり。

 

どれもこれも、聴くとはなしにぼんやり流していてアッと感じるおなじみのギター・リフなんかが耳に入ってきたときのなんともいえない快感、その刹那思わず笑顔になって、本作だと大半そんなカヴァーだらけだからよろこびが持続するっていうか、トータルで聴き終えて充分な満足感があるんです。

 

このライヴが行われた1990年代にはシックスティーズなロック・クラシックス再評価・回帰機運が顕著でしたし、もちろんあのころはそうしたあたりがどんどんCDリイシューされていたからなんですけど、1950年生まれのトム・ペティにとってはリアルタイムで青春期の情熱を燃やした音楽の数々でもあったはず。

 

じっさいトラヴェリング・ウィルベリーズなんかにも参加していたし、そうしたロック・クラシカルな音楽性はこのひと本来の持ち味に違いありません。このフォルモア・ライヴだとそれがオリジナル曲ではなく、インスパイア源だった古典的カヴァー・ソングで鮮明に表現されているといった感じ。

 

(written 2022.12.11)

2022/12/20

嫌いになったもの

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(20 sec read)

 

コンプリート・ボックス
デラックス・エディション
レガシー・エディション
スーパー・デラックス・エディション
アニヴァーサリー・エディション
コレクターズ・ボックス
エクストラ・ボーナス
オルタネイト・テイク
アルティミット・ヴァージョン
スーパー・ゴールデン・エクストラ

こういうのをサブスクで聴かせないボブ・ディラン

 

(written 2022.12.7)

2022/12/19

AOSJ 〜 リンジー・ウェブスター

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(2 min read)

 

Lindsey Webster / Reasons
https://open.spotify.com/album/4Uy2jz9YCDn6yoiK5CxuN4?si=B82KmF78QXSnlR3FX1FL4w

 

萩原健太さんに教わりました。いつもありがとうございます。
https://kenta45rpm.com/2022/12/16/reasons-lindsey-webster/

 

スムース・ジャズ・チャート(on ビルボード)常連の歌手、リンジー・ウェブスター最新作『リーズンズ』(2022)は、アダルト・オリエンティッド・スムース・ジャズみたいなもんでしょうね。ドナルド・フェイゲン/スティーリー・ダン的なサウンドというか。

 

スタイリッシュな音楽で大好きなんですけど、特にホーン・セクションの組み立てとあしらいかたがとってもおしゃれで都会的。幕開けから三曲ジャズが続きますが、4曲目はわりとソウルフル。しかもこれはいはゆるグラウンド・ビート(ソウル II ソウル)です。

 

これを聴いてもわかりますが、グラウンド・ビートって3・2クラーベの感覚が独自のハネとなって活きていますよね。1980年代末から好きできたのはそれも理由なんでしょうか。リンジーのこれでは、その上でさらにランディ・ブレッカーのフリューゲル・ホーン・ソロとケヴ・チョイスのラップまでフィーチャーされているという。

 

かと思うと続く5曲目はスティーリー・ダンそのまんまなナンバー。特にホーン・アンサンブルのカラーなんかは完璧なるコピーともいえる内容で、ひょっとしてフェイゲンがペンをとったんじゃないの的な。ポップなフィーリングもあるし、これも好きだなあ。

 

そもそもがあのへんのフュージョンとかAORとか関連諸方面の音楽は、当時からリズム&ブルーズ〜ソウルに立脚してこそ成立していたわけで、はなからソウル・ジャズだったというか多ジャンル接合的だったもの。

 

そう考えればリンジーの本作も「なんだスムース・ジャズじゃん」とケチをつけられる理由なんてなく、ふんわりメロウでおしゃれな表層サウンドの下に、実は21世紀的新世代感を身につけているというかこの手の音楽はむかしからそうだったというか。

 

11曲目でフィーチャーされているニコラス・ペイトンのトランペットだってなかなか渋くて味があるし、アルバム全体でグルーヴがタイトでソリッド。ふくらみすぎずシャープにまとめているなというのはリンジーのヴォーカルについても言えます。

 

(written 2022.12.19)

2022/12/18

演歌好き

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(4 min read)

 

My Favorite 演歌スタンダーズ
https://open.spotify.com/playlist/70noNUpuIMBpidBrXoSTLX?si=ef42455bda8e4176

 

もう間違いないので、臆せず正直に言っておきたい、ぼくは大の演歌好き。邦楽のなかでは圧倒的に演歌がNo.1。17歳で米ジャズにハマって以後は長年遠ざけていたものですけれど、思い出したきっかけはやっぱり2017年にわさみん(岩佐美咲)が好きになって応援するようになったこと。

 

ぼくら世代のジャズ狂なんかが演歌好き、それも根っからのそれだというのを告白するのは、ちょっぴり勇気がいることなんですよ。でもブログなんか演歌関係の記事が増えてきて、こいつそうなんだなと周囲に疑いなく思われているだろうと確信するようになりましたので。そもそもが筆致だって違うもんねえ。

 

演歌聴いてりゃ楽しいんだもんなあ。ぼくが好きと感じる演歌は、2010年代以後的な第七世代じゃなくて、いやそれもマジ好きだけど、もっと古典的な1980年代くらいまでのものがいちばん。都はるみ、八代亜紀、石川さゆり、藤圭子、森進一、北島三郎、そのへんです。

 

そういった演歌なら、聴いて快感で、テーマを見いだし考えて楽しくて、文章書くのもらくちんスムース、すいすい書けて、これ以上ぼくの琴線に触れる音楽があるのか?と思うほど(言いすぎ)。

 

そのあたりすべてサブスク(ぼくのメインはSpotify)にあるっていうのもぼく的には意味の大きなこと。実をいうと生まれてこのかた演歌のレコードやCDを買ったことは一度もないんですね。ヒットしているものはすべてテレビジョンの歌謡番組で聴けましたから。それが17歳までのぼくの音楽ライフでした。

 

それを60歳近くになってとりもどしたっていうのは、もう圧倒的にサブスクの力が大きい。検索すればパッと見つかって、自室でもお散歩しながらでもカフェでもレストランでもクリニックの待合室でも、その場で即聴けるっていうのがどれほど大切なことか。もしサブスクがなかったら、ここまで演歌好きの血が甦らなかったのは間違いないですから。

 

共感しているのはもちろん歌詞部分じゃありません。そっちはですね、いま聴くとどうにもならないっていうか、このジェンダー平等が求められる時代にありえない男尊女卑フィール満載で、そこを意識しはじめたらとうてい演歌なんて聴けません。民謡もそうで、そもそもそうした現代感覚を求める世界じゃありませんから。

 

いいなと思うのは陰影のくっきりしたあざやかなメロディ・ラインとか、おなじみのコード進行とかサウンド・メイクとか、ラテン・ミュージック由来の跳ねるビート感とか。北島三郎の「まつり」だって変形クラーベ(1・2)ですから。

 

歌手もみんなうまいし、発声が鮮明で節まわしも楽しい。これはちょっと…みたいなことをふだんよく言うので好ましくないと思ってんじゃないかとかんぐられていそうなぐりぐり濃厚な強いコブシやヴィブラートだって、きらいなんかじゃなく大好き。八代亜紀のそれなんかよだれが出るくらい。

 

古典演歌好きっていうのは、ひょっとしたら古典落語好きとか、ティン・パン・アリーのアメリカン・ポップ・スタンダードをジャズ系歌手がそのままストレートに歌うのが好きとか、つまり一種の伝統芸能愛好ということかもしれないですね。

 

とにかく演歌は聴いて気持ちよく楽しくワクワクする。それだけ。

 

(written 2022.11.27)

2022/12/17

“The Teddy Wilson expanded” discography

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(6 min read)

 

The Teddy Wilson expanded
https://open.spotify.com/playlist/3mlZIEPzdEg5H0CoIhoeBd?si=7d605ac70c694636

 

1 Blues in C Sharp Minor (C 1379-1, Brunswick 7684)

Chicago, May 14, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (trumpet), Buster Bailey (clarinet), Chu Berry (tenor sax), Teddy Wilson (piano), Bob Lessy (guitar), Israel Crosby (string bass), Sidney Catlett (drums)

 

2 Mary Had A Little Lamb (C 1376-1, Brunswick 7663)

ibid., RE (also on vocal)

 

3 Too Good To Be True (C 1377-2, Brunswick 7663)

ibid., TW (also on organ)

 

4 What A Little Moonlight Can Do (B 17767-1, Brunswick 7498)

New York City, July 2, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Benny Goodman (cl), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

5 Miss Brown To You (B 17768-1, Brunswick 7501)

ibid.

 

6 Warmin' Up (C 1378-1, Brunswick 7684)

Chicago, May 14, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Buster Bailey (cl), Chu Berry (ts), Teddy Wilson (p), Bob Lessy (g), Israel Crosby (sb), Sidney Catlett (d)

 

7 Sweet Lorraine (B 17916-1, Brunswick 7520)

NYC, July 31, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Roy Eldridge (t), Cecil Scott (cl), Hilton Jefferson (as), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

8 Sugar Plum (B 18317-1, Brunswick 7577)

NYC, December 3, 1935, Teddy Wilson and His Orchestra: Richard Clarke (t), Tom Mace (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Dave Barbour (g), Grachan Moncur (sb), Cozy Cole (d)

 

9 It's Like Reaching For The Moon (B 19495-2, Brunswick 7702)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bariton sax), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), Jonh Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

10 Christopher Columbus (B 18829-1, Brunswick 7640)

NYC, March 17, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Frank Newton (t), Benny Morton (tb), Jerry Blake (cl, as), Tom McRae (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), Lennie Stanfield (sb), Cozy Cole (d)

 

11 All My Life (B 18832-1, Brunswick 7640)

ibid., Ella Fitzgerald (vo)

 

12 (If I Had) Rhythm In My Nursery Rhymes (B 18613-1, Brunswick 7612)

NYC, January 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Gordon Griffin (t), Rudy Powell (cl), Ted Mcrae (ts), Teddy Wilson (p), John Trueheart (g), Grachan Moncur (sb), Cozy Cole (d)

 

13 Why Do I Lie To Myself About You (B 19497-2, Brunswick 7699)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

14 Guess Who (B 19499-2, Brunswick 7702)

NYC, June 30, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Lawrence Lucie (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

15 Here's Love In Your Eyes (LA 1159 A, Brunswick 7739)

Los Angeles, August 24, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Gordon Griffin (t), Benny Goodman (cl), Vido Musso (ts), Lionel Hampton (vibraphone), Teddy Wilson (p), Allen Reuss (g), Harry Goodman (sb), Gene Krupa (d), Helen Ward (vo as Vera Lane)

 

16 Sailln' (B 20292-2, Brunswick 7781)

NYC, November 19, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Jonah Jones (t), Benny Goodman (cl as John Jackson), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Alan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

17 Right or Wrong (I'm With You) (B 20410-1, Brunswick 7797)

NYC, December 16, 1936, Teddy Wilson and His Orchestra: Irving Randolph (t), Vido Musso (cl), Ben Webster (ts), Teddy Wilson (p), Alan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d), Midge Williams (vo)

 

18 Tea For Two (B 20412-2, Brunswick 7816)

ibid., omits MW

 

19 I'll See You In My Dreams (B 20413-1, Brunswick 78169)

ibid.

 

20 He Ain't Got Rhythm (B 20568-1, Brunswick 7824)

NYC, January 25, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Benny Goodman (cl), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d), Billie Holiday (vo)

 

21 Fine And Dandy (B 20914-1, Brunswick 7877)

NYC, March 31, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Cootie Wiilams (t), Johnny Hodges (as), Harry Carney (cl, bs), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

22 I'm Coming, Virginia (B 21037-1, Brunswick 7893)

NYC, April 23, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Kirby (sb), Cozy Cole (d)

 

23 Yours And Mine (B 21118-2, Brunswick 7917)

NYC, May 11, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Artie Bernstein (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

24 I'll Get By (B 21119-1, Brunswick 7903)

NYC, May 11, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Johnny Hodges (as), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Artie Bernstein (sb), Cozy Cole (d), Billie Holiday (vo)

 

25 Mean To Me (B 21120-1, Brunswick 7903)

ibid.

 

26 I've Found A New Baby (B 21220-1, Brunswick 7926)

NYC, June 1, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Buster Bailey (cl), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d)

 

27 Foolin' Myself (B-21217-1, Brunswick 7911)

ibid., Billie Holiday (vo)

 

28 Coquette (LA 1383 A, Brunswick 7943)

LA, July 30, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Benny Goodman (cl), Vido Musso (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Harry Goodman (sb), Gene Krupa (d)

 

29 Ain't Misbehavin' (LA 1408 C, Brunswick 7964)

LA, September 5, 1937, Teddy Wilson Quartet: Harry James (t), Teddy Wilson (p), Red Norvo (vibraphone, xylophone), John Simmons (sb)

 

30 Honeysuckle Rose (LA 1431 A, Brunswick 7964)

ibid.

 

31 Just A Mood (Blue Mood) (Part 1) (LA 1429 A, Brunswick 7973)
32 Just A Mood (Blue Mood) (Part 2) (LA 1430 A, Brunswick 7973)

ibid.

 

33 You Can't Stop Me From Dreamin' (LA 1405 B, Brunswick 7954)

LA, August 29, 1937, Teddy Wilson and His Orchestra: Harry James (t), Archie Rosati (cl), Vido Musso (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), John Simmons (sb), Cozy Cole (d)

 

34 When You're Smiling (B 22194-3, Brunswick 8070)

NYC, January 6, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Buck Clayton (t), Benny Morton (trombone), Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Freddy Green (g), Walter Page (sb), Joe Jones (d), Billie Holiday (vo)

 

35 I Can't Believe That You're in Love with Me (B 22195-4, Brunswick 8070)

ibid.

 

36 Don't Be That Way (B 22613-1, Brunswick 8116)

NYC, March 23, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Bobby Hackett (cornet), Pee Wee Russell (cl), Tab Smith (as), Gene Sedric (ts), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Al Hall (sb), Johnny Blowers (d)

 

37 If I Were You (B 22822-2, Brunswick 8150)

NYC, April 29, 1938, Teddy Wilson and His Orchestra: Bobby Hackett (co), Jerry Blake (cl), Johnny Hodges (as), Teddy Wilson (p), Allan Reuss (g), Al Hall (sb), Johnny Blowers (d), Nan Wynn (vo)

 

38 Jungle Love (B 22825-2, Brunswick 8150)

ibid, omits NW

 

(written 2022.12.4)

2022/12/16

ぼくのヴィンテージ・ジャズ愛 〜 The Teddy Wilson expanded

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(4 min read)

 

The Teddy Wilson expanded
https://open.spotify.com/playlist/3mlZIEPzdEg5H0CoIhoeBd?si=bc0d487eb5e546ec

 

かつてCBSソニーから発売されていたLP二枚組『ザ・テディ・ウィルソン』をもとに自作した2018年7月末のSpotifyプレイリスト『The Teddy Wilson expanded』がそこそこ好評だというのを実感しています。この手の1930年代ジャズとしては異例の10個ライクがついていますから。

 

CBSソニー盤の二枚組レコード『ザ・テディ・ウィルソン』(何年発売だっけ?)とその収録全33トラック32曲にかんしては、以下の過去記事をごらんください。すべて書いてあります。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-5fcf.html

 

なぜ自作プレイリストかって、そりゃLP『ザ・テディ・ウィルソン』は日本でしか発売されず、その後は一度もCDリイシューされていないし配信なんかにもちろんないんですよ。だけど二枚組のソースになっていたSP音源じたいはサブスクにあるからっていうんで、一曲一曲ひろっていってつくりました。

 

そうしたいほど1930年代スモール・コンボ編成のスウィング・ジャズが大好きで大好きでたまらなく、そのなかでも『ザ・テディ・ウィルソン』こそ最愛好だったというか、そもそもぼくがヴィンテージ・ジャズ愛をいだくようになった大きなきっかけがこのレコードでした。

 

いまではもうすっかりサブスク生活が板についているので、なんとかそっちでも同じのが聴けたらいいな〜っていう、そういう個人的な動機で作成し公開したら思いのほか好評で、『ザ・テディ・ウィルソン』なんていまだ忘れられないのは自分だけなんじゃないかと感じていたところ、あんがいそうでもなかった。うれしい。

 

それをベースにして個人の趣味で『拡大版』に追加したのはビリー・ホリデイの五曲。いずれもビリーのアルバムに収録されているがため『ザ・テディ・ウィルソン』には選出されなかったんですが、もとのセッションも当時のSPレコードもテディ・ウィルスン名義の同一ですからね。ビリーの歌がことさらいいものだけ選って分けたという事情でしかないので。

 

それらだってビリーのヴォーカルはほかのもの同様1コーラスだけ、残りは楽器演奏で、そこが極上な逸品をみすみす除外する理由なんてぼくには見つかりませんでした。テディのピアノはもちろんベニー・グッドマン(cl)やレスター・ヤング(ts)など名演ぞろいですから。

 

こういうの、大学生のころから好きだった音楽ですが、ここのところ熱が再燃しているのはあきらかに近年のレトロ・ジャジーなポップス大流行の波にぼくも完全に乗っているからです。そうした最近の歌手たちはみんな1920〜40年代スタイルのクラシカルなジャズに範をとっていますからね。

 

そういった新作音楽をどんどん聴いているうち、(ぼくのなかで)元祖的な存在だったともいえる『ザ・テディ・ウィルソン』みたいなアルバムのことも思い出すようになり、こっちは当時のレコーディングがそのまま生きているわけですからレトロというよりヴィンテージといったほうが正確なんですが、愛好心情としてはレトロな感覚もあるんです。

 

※ 『The Teddy Wilson expanded』、ディスコグラフィーは明日

 

(written 2022.12.4)

2022/12/15

うつがひどいころ、こうだった

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写真は2011年のもの

 

(1 min read)

 

・食べられない寝られないは基本
・汗がくさい
・寒い(夏でも)
・咳が出る
・あくびもなぜか
・なにもかもめんどくさく感じられ、ひたすらボンヤリだらだらしている
・仕事がうまくできなくなる、失敗だらけ
・音楽が聴こえづらいので音量が上がる
・口のなかが乾く
・飲食物の味がヘン or わからない
・においもあまりわからず
・熱いものを飲んだり食べたりできない
・食欲とは違うナゾの空腹感はある
・けど調理中 or 完成した料理を眼前にするとオェッとなってしまう(えずく)
・ゆっくりならそこそこ食べられる
・朝ごはんはまずムリ
・食べたものの消化に時間がかかる
・食後の歯磨きでえずく、ばあいによっては戻してしまう
・体重が増える
・歯磨き、洗顔、ひげそりができなくなる(のでお風呂タイム以外でやらなかった)
・何時にしようと決めても、お風呂になかなか入れない
・部屋のそうじができない

・発症するにも回復するにも時間がとてもかかる

 

(written 2022.12.7)

2022/12/14

ナベサダ in 南ア 〜 マッコイ・ムルバタ

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(2 min read)

 

McCoy Mrubata / Hoelykit?
https://open.spotify.com/album/4ogL5p7CSOR7rDWvnUPcN0?si=ed5QXQN3TUSMG-elwqJC2g

 

bunboniさんのご紹介で知りました。感謝ですね〜。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-11-27

 

っていうのは1曲目がもろ「オレンジ・エクスプレス」そのものじゃないかっていうことだけじゃありません。マッコイ・ムルバタ(南アフリカ)の『Hoelykit?』(2000)は全体的にフュージョン・アルバムだと思うんですよね。

 

それも渡辺貞夫さんが『マイ・ディア・ライフ』でポップ・フュージョン路線に転向するちょっと前、1970年代前半〜なかごろにやっていた音楽にそっくり。フュージョンというのはもちろんジャズとアフリカ音楽の、ってことです。

 

いうまでもなくマッコイが貞夫さんっぽいというのは順序が逆であって、こうしたアフリカン・ジャズがまずあって、なんどかの現地訪問でそれを学んだ貞夫さんが自分の音楽にとりいれたということ。マッコイの本作も南ア・ジャズの伝統を受け継ぎ、現在活況の同国新世代ジャズ・シーンへとそれをつなげた傑作でしょうね。

 

個人的に特にグッと胸に迫るのは終盤8曲目からの三連続。ジャズ〜フュージョンらしさ満開で、貞夫さんがどのへんのアフリカン音楽から吸収したかモロわかりな、つまり言い換えればぼくみたいに貞夫フュージョンからまず聴いていたファンには既聴感ばりばりで、親しみやすく。

 

なかでも8曲目での熱いジャジーなソロの連続にはトキメキます。4/4ビート・パートと8ビート・パートを行き来するリズム・アレンジもいいし、その上でフリューゲル・ホーン、サックス、ピアノ三名のソロもはじけています。ピアノのアンディル・イェナナは印象に残ったので、名前をおぼえておきましょう。

 

世界的にみても1980年代のフュージョン・ミュージックが多ジャンル混淆的な21世紀新世代ジャズのいしずえを築いたことは明白なんですが、マッコイの本作も、現在の南ア新世代ジャズの活況を考えるとき、その先駆けとなったことは疑えないですね。そんなこと言わなくたって、これじたい楽しいですし。

 

(written 2022.12.7)

2022/12/13

ウェザー・リポート in バイーアみたいな 〜 レチエレス・レイチ

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(2 min read)

 

Letieres Leite Quinteto / O Enigma Lexeu
https://open.spotify.com/album/52Vs6AyLKN7Fzw22WKsUzl?si=4mEOIBeaRzqypZ6j9PuSqg

 

ブラジルの故レチエレス・レイチ。キンテートでの2019年作『O Enigma Lexeu』は<ウェザー・リポート in バイーア>みたいなアフロ・ブラジリアン・フュージョンの傑作だっていうんでおおいに胸をおどらせて聴いてみたら、違わぬ内容でたいへん感動しました。

 

作編曲のレチエレスが管楽器を担当するほか、鍵盤、ベース、ドラムス、パーカッションというバンド編成。特にパーカッショニスト(ルイジーニョ・ド・ジェージ)の存在が大きいと、本アルバムを聴けばわかります。まさにバイーア的というかアフロ・ブラジリアンなリズムの躍動と色彩感を表現しています。

 

最初の二曲はおだやかな70年代初期リターン・トゥ・フォーエヴァー路線のピースフルなものなのでそのへんイマイチわかりにくいんですが、3曲目からがすばらしい。その「Patinete Rami Rami」なんかのけぞりそうになるほどのリズムの祝祭感で、これホントにパーカッショニスト一人だけ?と疑いたくなってくるくらいリッチでカラフル。

 

その後は終幕までずっとそんな感じで、たしかにこりゃバイーアで録音されたウェザー・リポートだっていうおもむきです。もちろんジョー・ザヴィヌルだって、特に70年代中期以後は中南米やアフリカの音楽にしっかり学んで吸収していたんですが、ここまで本格的なのはさすがブラジル当地のミュージシャン。

 

レチエレスのフルートやサックス、ルイジーニョの超人的なパーカッション技巧にくわえ、マルセロ・ガルテルのピアノやフェンダー・ローズも好演。和音楽器を使わないバンドもやっていたレチエレスですが、今作では自由に弾かせてアルバムのキー・ポイントになっています。

 

2019年に知っていたら、間違いなくその年のベスト5に入った傑作でしょうね。

 

(written 2022.11.29)

2022/12/12

充実のラテン・アメリカン・フュージョン 〜 アレックス・アクーニャ

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(3 min read)

 

Alex Acuña / Gifts
https://open.spotify.com/album/192HeBhoDbIK9F0rjsyqF3?si=UIUIs-fiT0GcDPTK_4bBHg

 

御多分に洩れずウェザー・リポートで知ったペルー出身のドラマー、アレックス・アクーニャ。1980年代なかごろには一度渡辺貞夫さんの全国ツアーに参加して活躍、それも印象的でよく憶えています。

 

17年ぶりの個人リーダー名義新作『ギフツ』(2022)は、やっぱり基本ウェザー・リポートっぽい “あのころ” のフュージョンが中心。こうした音楽をリアルタイムからずっと聴いてきましたが、当時あんだけボロカス言われたのがいまではすっかりクラシカルに響くっていうのはおもしろいですね。

 

フュージョンもそれなりに貫禄が出てきたということか、本作でも聴けるアレックスあたりの姿勢、不動のドラミングなど聴いていれば、決して軽視したり無視したりしていい音楽じゃないぞとわかります。すくなくともぼくは当時からのフュージョン・ラヴァーで、いまだその愛好はしぼみません。

 

新作はドラムス&パーカッションのアレックスのほか、鍵盤(ベネズエラ)、ギター(ペルー)、ベース(プエルト・リコ)、サックス(ペルー)、トランペット(USA)が基本編成。曲によりチェロやバック・ヴォーカリストも参加しています。ラテン・アメリカン・フュージョンとでもいえる布陣でしょう。

 

聴き進み、3曲目でオッ!となりました。なんとキャノンボール・アダリーのゴスペル・ジャズ・ナンバー「マーシー、マーシー、マーシー」なんですよね(ここでは「マーシー、マーシー」と記載)。やっぱりウェザー・リポート時代の恩返しっていうかコンポーザーである故ジョー・ザヴィヌルへのトリビュート的な意味合いなんでしょうか。

 

ラモン・スタグナロのファンキー&ブルージーなギター・プレイが目立っているできあがりで、これもいいなあ。エレピが弾く例のアーシーでキャッチーなリフはそのままに、キャノンボール・ヴァージョンに比しぐっと明るいポップさを増した印象で、宗教的敬虔さみたいなのは消えていますが、軽やか&さわやか。

 

アルバムにはもう一つ有名ジャズ・ナンバーがあって、7曲目「ワン・フィンガー・スナップ」。ハービー・ハンコックのオリジナルからガラリ様変わり、4/4拍子パートも適宜おりまぜながらのポリリズミックなパーカッション陣が活躍するラテン・フュージョンにしあがっているのはビックリ。

 

また「マーシー、マーシー、マーシー」の次に来る4曲目は、哀切なハーモニカ・サウンドがメロディをつづる美メロ・バラード。それに続く5曲目はストレート・フュージョンのようにはじまりますが、中盤でなぜか突然トレスが炸裂、その後は一転して歌も入るキューバン・サルサに展開するっていう。

 

その他聴きごたえがじゅうぶんあって、しっかりしたさわやか満足感を残す充実の内容。いままでのアレックスのソロ・アルバムのなかでみてもいちばん納得のいく内容ではないでしょうか。

 

(written 2022.11.26)

2022/12/11

これまたレトロ・ジャズ・シンガーの新星 〜 ヘイリー・ブリネル

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(3 min read)

 

Top Tracks for Hailey Brinnel
https://open.spotify.com/playlist/5pxcmYsW6Xn1SmQsx1WmMo?si=1f59c442a4cb4290

 

ビートルズの「アイル・フォロー・ザ・サン」をコントラバス一本で歌っているのに偶然出会い、それがチャーミングなので好きになり、検索してどんどん聴くようになったヘイリー・ブリネル。米フィラデルフィアを中心に活動している音楽家みたいです。

 

Spotifyで聴けるものをすべて聴いてみたら、ヘイリーは1920年代ディキシーランド・ジャズのスタイルを(いまどき)フルに実現していて、自身はトロンボーンとヴォーカル。アルバムはまだ一つしかないんですが、シングル単位でサブスクにそこそこあります。

 

公式ホームページがあって、それの「Music」の項で見えた『Top Tracks for Hailey Brinnel』というSpotifyプレイリストがとってもいいんですが、でもそのHP専用ということか自分でさがしても見つけられなかったので、同じになるようにサービス内で作成しなおしたのがいちばん上のリンク。

 

ぜひこれで聴いてみてほしいんですが、いかにヘイリーがレトロ・スタイルの持ち主かってことを。それを2020年代に再現しているからストレートに100年さかのぼった感じですよね。

 

レパートリーも、ビートルズは例外的に新しいほうで、ほかはティン・パン・アリー系のスタンダードや似たような知られざる古い曲ばかり。バック・バンドの演奏だって完璧オールド・スタイルで、ヘイリーの指向を汲んでいるんでしょうね。

 

トロンボーンのほうが本分なのか歌の音程はややあいまい気味だったりするケースも散見されますが、「I’m Forever Blowing Bubbles」(これは唯一のアルバム題にもなっている)後半での展開とか、なんたって「Show Me the Way to Go Home」のオールド・スタイルなすばらしさとか、いずれもダヴィーナ&ザ・ヴァガボンズが出てきた約10年前を連想させる古風なサウンド。

 

ダヴィーナはいま考えたら登場がちょっと早かったというか、こんなにもレトロ・ジャズが時代の潮流になってくる前にシーンに出現したもんだから、あのころは一部好事家のあいだでしか話題になりませんでしたよね。

 

そこいくとヘイリー・ブリネルは時代の流れに乗ってノスタルジーをふりまきながら現れたので、もちろんまだほとんど知られていないという存在ではありますが、このまま順調に活動を続けてほしいと思っています。今後を見守りたい存在。

 

レトロレトロといったって、ポップ・ヴォーカル、歌ものの世界はむかしからそんな大きく変わっているわけじゃなく、ジャジーな生演奏でやるかぎりはずっとこんなスタイルがエヴァーグリーンで来たんだとみることもできますし、いまでも生きる不変の楽しさをヘイリーだって表現しているだけかもしれませんしね。

 

(written 2022.12.6)

2022/12/10

躍動的な新世代ブラジリアン・リリシズム 〜 アレシャンドリ・ヴィアーナ

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(2 min read)

 

Alexandre Vianna Trio / Música para Dar Sorte
https://open.spotify.com/album/5aFx0XIgAbce9ZuVQkNReI?si=DvFzJ8LsRfW97-C7tmwLUA

 

ブラジルはサン・パウロのジャズ・ピアニスト、アレシャンドリ・ヴィアーナのトリオ最新作『Música para Dar Sorte』(2022)がすばらしい。近年のサン・パウロはブラジルというより南米随一のジャズ都市で、いい音楽をどんどん産み出していますよね。

 

アルバム・タイトルになった7曲目にも典型的に表れているように、伝統的なジャズ・サンバをモダナイズしたような内容になっているのが大の好み。躍動的なビート感と、それでいて決して荒くはならないおだやかさ、上品さが同居しているのはとってもいいです。

 

紹介していたディスクユニオンの説明ではキース・ジャレットなどの美メロ系ということも書かれてあったんですけど、ジャレットがどうにもイマイチだからそれでは惹かれず。たしかにアレシャンドリも歌うような抒情派っていうかリリシズムがピアノ・プレイの持ち味なので、その意味では納得です。

 

そんなリリカルな部分がうまい具合に現代的ジャズ・ビートで昇華されていて、ぼくの耳にはイキイキとした泉のように水がこんこんと湧き出てくるようなグルーヴ感こそが印象的なアルバムで、ドラマー(ラファエル・ロウレンソ)の活躍もみごとだと思えます。

 

そのへんのバランスっていうか美メロ・リリシズムと(ジャズ・サンバ由来の)躍動感の融合に最大の特色があるジャズ傑作アルバムじゃないでしょうか。

 

(written 2022.11.24)

2022/12/09

給食がぼくのトラウマだった

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(3 min read)

 

高校生になったら昼食はお弁当になりましたから悩みから解放されたんですが、小中学校のときは強制的に給食で、ぼくは偏食人間だったからお昼ごはんタイムが憂鬱でした、毎日。食事って楽しいもののはずなのに、つらかった。

 

なにが食べられなかったの?なんて、そ〜りゃとにかくいっぱいあったから説明なんてできません。とにかくとんでもない偏食人間でした(いまはちょっとマシになっていると思う)。だれでも多少食材や味つけの好嫌はあると思うのに、学校価値観の世界では<偏食 = ダメ、許されない>となってしまいます。

 

献立表があってあらかじめ決まった固定メニューを必ず残さず食べなくてはならない、食べなかったらその日の昼食は抜きということになってしまう学校給食の世界ってなんなのか?小学生なりに不思議というかある種の理不尽さ、不条理を感じていました。

 

あんなにも給食タイムが苦痛だったのは、食べられないものが多く出たからっていうことより以上に、なにより小学校時代の担任教師の給食指導法に大きな原因がありました。いま考えたら指導や教育でもなかったと思うんですが、強く叱られて、食べないお皿を手に持たせ教室の後ろにずっと立たせるんです「食べるまでそのまま立っていろ」と言って。

 

ときどきは他クラスの生徒にも見せつけるように(すっかり冷えたお皿を持ったまま)教室の外の廊下に立たせ、午後の授業に参加させてもらえず、放課後になってみんなが下校しても帰してもらえず、じっと立たせたままだったりもしました。お皿じゃなく水の入ったバケツを持たされたことだってあります。おかしいでしょう。

 

ぼく世代が小学生のころは、旧日本軍式で育った年配教師がまだ残っていて、そんなやりかたがひろく学校現場で行われていましたよね。前段で書いたような方式がそうなんだというのは小中学校も卒業してのち、テレビ・ドラマとかで戦中事情を描いたものを見るようになって、「あぁこういうことか」と理解するようになったからです。

 

そんな懲罰方式で苦手なものを食べられるようになるわけもなく、ってかそもそも偏食って大人になってからですらだれかに指導されてなおるものなんかじゃないし、だれだって多少の偏食はあるし、ぼくはその程度がひどくきわだっていたんで目をつけられていたんですけど、だから学校給食というシステムじたいが非人間的でしょうね。

 

飢餓状態にあっても口をつける気にならないものを、いくらおいしいからと周囲に言われても、教師にどんな指導をされても、食べられるようになんかなんないです。歳を重ね食の嗜好が変化したので、ナチュラルに偏食傾向が自動修正されるようになってきているのであって、学校における押しつけ教育はほんとうによくない。

 

(written 2022.11.12)

2022/12/08

ジャズとリズム&ブルーズのクロスするあたりで 〜 ハロルド・ヴィク

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(3 min read)

 

Harold Vick / Steppin’ Out
https://open.spotify.com/album/7HqkMvgztRqpBLNntKb9wb?si=Bi8ivnJDQ5WTRe8M4AkVPQ

 

ジャズとリズム&ブルーズをまたにかけて活動したテナー・サックス奏者、ハロルド・ヴィク。そのブルー・ノートに残した唯一のリーダー名義作『Steppin’ Out』(1963)も、こないだレーベルの公式ソーシャル投稿で知りました。

 

この『ステッピン・アウト』、なんとパーソネルがボス以下、ブルー・ミッチェル(tp)、グラント・グリーン(g)、ジョン・パットン(or)、ベン・ディクスン(dr)なので、以前書いたビッグ・ジョン・パットンのアルバム『オー・ベイビー!』(65)と同じなんですね。

 

同一セッションから二作に分割してリリース時の名義だけ変えたというんではなく、ハロルドのほうが二年ほど先に録音していますけど、正直言ってこのメンツで60年代前半のブルー・ノート・ジャズとくれば、中身は聴かずとも知れたようなもの。似たようなメンバーでの録音があのころ山のようにありました。

 

ハロルドの本作も、一曲だけスタンダード・バラードの「ローラ」をやってはいるものの、それ以外はリーダー作となっているシンプルなリフ・ブルーズばかり。近年ジャズとブルーズとの切断が声高に言われますが、新世代ジャズがどうあれ、ぼくなんかいまだこうしたソウルフルなハード・バップ・ブルーズが大好き。

 

そんなわけですから、音楽内容としてはべつにとりたててどうということもなく、このブログでもいままでさんざん書いてきたことのくりかえしになってしまうので省略。いやあ〜、ほ〜っんとにハード・バップでのブルーズってどうしてこんなに楽しいのでしょうか。

 

歴史をたぐってみれば、モダン・ジャズというかビ・バップはジャンプ・ミュージックが産みの親。そしてジャンプはその直前のカンザス・シティ・ジャズの亜種だったんですから、ってことはハード・バップ(and リズム&ブルーズ)だってカウント・ベイシーらのやったああいったブルーズ・ジャズが直系の祖父にあたるわけですからね。

 

本作で一曲だけブルーズではない3「ローラ」にしたって、パットンの弾く雰囲気満点のメロウ・オルガン・サウンドに乗せてテナーがスウィートにメロディをつづる様子を聴いていれば、これだってリズム&ブルーズ・バラードと同種のものだとわかります。

 

ってことで、ジャズとリズム&ブルーズの両方に足を入れていた、特にサックス奏者はあのころ多かったし、ハロルド・ヴィクの本作もそんな系譜につらなる一作に違いありません。

 

(written 2022.11.18)

2022/12/07

グルーヴを先導するヴォーカル 〜 ロイ・エルドリッジ、エラ・フィッツジェラルド

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(2 min read)

 

Roy Eldridge, Ella Fitzgerald / In Concert
https://open.spotify.com/album/0gDNj4H7FieXskNfF9Imhn?si=g2MuPFzmRgqiXpdcuWbRrg

 

ロイ・エルドリッジ&エラ・フィッツジェラルドの未発表発掘ライヴ音源を収録したアルバム『イン・コンサート』(2022)は1959年5月21日のコペンハーゲン・ライヴ。全11曲のうち冒頭二曲がロイ、3曲目以後はエラをフィーチャーし、バンドは同一です。

 

ロイの二曲にはビ・バップっぽさがただよっていて、このトランペッターはスウィング・ジャズ時代後期の存在ということになっているわけですが、なかなかどうして鋭角的に斬り込むシャープな吹奏ぶりにはモダンさを感じます。特に2曲目「ロイズ・リフ」(曲題だってビ・バップ的)。

 

もちろんビ・バップの先駆者とみなされることもあるし、じっさいディジー ・ガレスピーあたりにも大きな影響を与えたので、新時代にはこうした演奏だってときにはくりひろげたということなんでしょうね。代理コードの使いかたなど和声面でもモダンさが聴きとれます。

 

3曲目以後のエラ。個人的にグッとくるのはやはり急速調でスキャット・インプロをかましまくるもの。8曲目「オーライト、オーケイ、ユー・ウィン」と11「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」がなかでもきわだっています。後者なんかまずおだやかなテンポで出てワン・コーラス歌ったとたんドラマーの威勢いいフィル・インを合図に突如快速にギア・チェンジ。

 

スキャットばかりでなく歌詞も自在に変化させながら好きなように自由に思うがままのラインを歌いこなす技巧には舌を巻くものがあります。スウィンギーというか猛烈にドライヴしていて、エラのヴォーカルこそがそれを先導しあおっているのが聴いているとよくわかりますよね。

 

そうしたブレイン・ブロウイングなナンバーがあるかと思えば、4、9、10曲目などゆったりしたテンポでしっとりとつづるメロウ・バラードでの表現もすばらしく、その他50年代らしくキューバン・リズムをとりいれているものだって余裕で聴かせるし、ほんと文句なしのトップ・ジャズ・ヴォーカリストでしたね。

 

(written 2022.11.14)

2022/12/06

マイルズの知られざる好作シリーズ(4)〜『イン・パーソン、フライデイ・ナイト・アット・ブラックホーク』

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(3 min read)

 

Miles Davis / In Person, Friday Night At the Blackhawk, San Francisco, Volume I
https://open.spotify.com/playlist/2gDinlJa9TevAPKk1h6Nvw?si=67f5e58853f74cc3

 

マイルズ・デイヴィスが生涯で率いた全バンドちゅう、いまとなってはいちばん好きかもしれないとすら思う1961年バンド。ハンク・モブリー、ウィントン・ケリー、ポール・チェインバーズ、ジミー・コブ。

 

このバンドになったのがいつか、正確なことなんてわかりようもありませんが、ジミー・コブは『1958マイルズ』になった音源を録音した58年5月のスタジオから参加していたし、『カインド・オヴ・ブルー』の59年3、4月セッションではもうすでにウィントン・ケリーがレギュラーでした(が、あのときだけ例外的にビル・エヴァンズを呼びもどした)。

 

ハンク・モブリーはアルバム『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』になった61年3月セッションがマイルズ・バンドでの初録音。これでラインナップが整ったわけですが、このバンドでそのまま続く4月にサン・フランシスコのブラックホークに出演した記録二日間のうち金曜ぶんがきょう話題にしたいアルバム『イン・パーソン、フライデイ・ナイト・アット・ブラックホーク』(1961)です。

 

どこがそんな「生涯の全バンドでもいちばん好きだ(いまでは)」といえるほどなのかっていうと、極上のリラックス感と熟練のまろやかな職人芸的スウィンギーさがよく出ているところ。小さなクラブにコロンビアが大かがりな機材を持ち込んでやりにくかったなどとマイルズは述懐していましたが、どうしてどうして中身はすばらしい。

 

この61年バンドの特質は以前も『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』の記事のときにも書きましたが、おだやかで平坦な日常性、インティミットなアット・ホーム感がサウンドに鮮明に出ているところにあるなというのがぼくの見解です。マイルズといえばテンションの強い張り詰めたような音楽性が売りではありましたが、いまのぼくにはリラクシングな日常的音楽のほうが心地いいんです。

 

そんな嗜好で選べば、マイルズの残した全ライヴ・アルバムでもいちばんといえるのがこれ。おなじみのレパートリーが並びますが、1曲目のブルーズ・チューン「ウォーキン」でも、たとえば世紀の傑作と名高い『’フォー’&モア』(1966)ヴァージョンと比較すれば、いはんとするところはわかっていただけるはず。その間三年、バンドが変わればボスもその音楽性も変わるっていう、そんなトランペッターだったことは以前も書きました。

 

『フライデイ・ナイト・アット・ブラックホーク』、ここまでまろやか&明快で歯切れよくスウィングし間然しない内容なんですから、正直いって名作、傑作の一つに数えてもいいんじゃないか、間違いないぞと、だれもそういわないですけど、ぼくはそう断言したいですね。

 

(written 2022.10.8)

2022/12/05

演歌はハレ、歌謡曲はケ

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(2 min read)

 

柳田國男の「ハレ」と「ケ」にしたがえば、演歌はハレ、歌謡曲はケ。ハレとは簡単にいって非日常性、ケとはふだんの日常で、演歌はどう考えてもお祭りなどに類するケバケバしい非日常の世界でしょう。

 

特にスタンダードな古典演歌の世界でこれがいえるはず。歌詞もメロディもサウンドもヴォーカルも浮世離れしているっていうか、歌謡曲が日常の生活感覚に根ざしたものなのに比べたら、演歌はどこまでも派手で飾った世界。

 

アメリカン・ミュージックでいえばティン・パン・アリー、それが演歌で、庶民のふだんの生活とはだいぶ違う感覚に立脚しているんですよね。大衆音楽の世界では日常の生活感覚に根ざした音楽こそ自分たちに寄り添うもので、なんというか「すばらしい」のであるという認識が一般的ですが、好みはまた別。

 

つまり個人的にどっちが好きかっていうと、ぼくは圧倒的にティン・パン・アリーや演歌。むろん演歌のなかにも日常性はあるし、歌謡曲だって浮世離れしたような世界観を持つものがありますが、おおむね差があると思うんですよね。厳密な境界線は引けないにせよ。

 

いってみれば夢を見るような世界が演歌であって、つらいけど淡々と現実を直視しようというものじゃないんですよね。だから歌詞もサウンドもヴォーカル・スタイルもドラマティックで激しく強いんです。一般の聴き手はいっときの逃避願望をそこで実現するっていうか、現実をちょっと忘れて気を紛らわせて、またしんどい日常に戻っていく、だからハレなんですよね。

 

そういった世界観には感情移入できないという音楽家やリスナーもそこそこいるはずで、演歌界も近年若手第七世代に代表される日常のストレート&ナイーヴ・フィーリングを大切にした淡白なものが出はじめるようになっているのは、旧来的なハレ演歌からの脱却なんだとみることもできますね。

 

(written 2022.11.23)

2022/12/04

ブラジリアンスなアシッド・ジャズ 〜 クリス・バングズ

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(2 min read)

 

Chris Bangs / Samba do Sueno / Soccer Samba
https://open.spotify.com/album/371t2jPLTRAev26iwW88Ey?si=ZkDzC65ZQ1qw3uU1jRt68A

 

クリス・バングズはUK出身のDJ / プロデューサー。1980年代からクラブ・シーンで活躍し、アシッド・ジャズ系でブレイク。それがポール・ウェラーを通じてミック・タルボットとのプロジェクトに発展し、特にヨーロッパ、オーストラリア、日本で人気を獲得しました。

 

そんなクリスの新曲がこないだ出ていましたね。「サンバ・ド・スエニョ」「サッカー・サンバ」の二曲(2022)。ジャケットからして7インチ・シングルの両面なんでしょう。そのジャケットをよく見ると、どうやらこれらは来たるニュー・アルバム『ファイアーバード』からの先行トラックみたい。

 

二曲のうち、カル・ジェイダー「サンバ・ド・スエニョ」のカヴァーがとにかくカッコよくて、これだけちょろっと聴いて惚れちゃいました。1980〜90年代アシッド・ジャズ〜レア・グルーヴの時代にカルみたいなノリいいラテン・ジャズは注目されていましたからね。

 

だからクリスみたいな音楽家としてはカルをいままたとりあげるのにじゅうぶんな理由があります。今回のこのカヴァーも完璧フロア向けっていうか、こういう100%アシッド・ジャズみたいなの、やっぱぼくは好きなんですね、どうもアンテナがピンと張るっていうか、これだよこれっていう気分で。

 

曲題どおりサンバというかブラジルふうを意識したのはカルのオリジナルからそうでしたが、今回のクリスのカヴァーはそれをほぼ忠実になぞりつつ、よりダンス・フィールを鮮明にし強化したという感じです。おしゃれだしカッコいい。あくまでブラジル「ふう」だけど。

 

「サッカー・サンバ」のほうもブラジリアンスで、こっちはホイッスルと打楽器しか使われていません。スタジアムの歓声みたいなのもサンプリングされていて、曲想といいサッカーの現場感をムードとして出そうとしているんでしょう。

 

(written 2022.11.30)

2022/12/03

今年は知世ばかり聴いた 〜 SpotifyWrapped 2022

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(3 min read)

 

Your Top Songs 2022
https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1F0sijgNaJdgit?si=f6e6861053e94aa3

 

今年も出ましたSpotifyWrapped(Spotifyまとめ)によれば、2022年のぼくは原田知世ばかりくりかえしくりかえし聴いたみたいです。主観的実感とすこし違うっていうかこんなに聴いたっけ?と不思議な気分もしてくるくらいですが、データは正直ですよね。

 

とにかく上掲スクショのとおり今年は合計14,939分も知世を聴いたそうですから。約497時間。平均で毎日一時間以上聴いている計算です。そしてこれはSpotifyで知世を聴いているリスナー中上位0.005%に入る数字らしいので、こりゃもうほぼ一位じゃんね。

 

最大の理由は昨年12月28日にプレイリスト『ベスト of 伊藤ゴロー produces 原田知世』を作成したことに違いありません。自賛もあれですがよくできているんですよね。じっさい好評だったし、その付近からレトロ&オーガニック指向なポップスが個人的にもトレンドになっていましたが、流れにこのうえなくピッタリはまりました。
https://open.spotify.com/playlist/3r71Pfsc3i5TEG8Olz6fRP?si=541823f94a954e82

 

このプレイリストを今年はなんどもなんども聴いたので(なんたって気持ちいいからヤミツキ)その結果の知世イヤーになったというわけ。伊藤ゴローがプロデュースする知世こそ、今年のぼくの最愛好音楽に違いありませんでした。

 

そんなわけで年間いちばん聴いた曲も、そのプレイリスト1曲目に選んでおいた「青空の月」(『noon moon』2014)。198回聴き、うち1月19日に最も再生したという事実が、上記のような事情を明白に裏付けていますよね。

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再生回数トップ五曲も、一つ岩佐美咲があるほかは四曲すべて知世で、こんなこといままでなかったよなあ。

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トップ・アーティスト五人は、知世以下マイルズ・デイヴィス、テレサ・テン、孙露、ルーマーで、これはたしかに実感があります。テレサが三位だけどそんな聴いてんの?と思われそうかもですが、孙露(すんるー、中国大陸)に惚れちゃったのもきっかけで。

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なんだかんだいってジャズがいちばん好きなぼくですが、演歌聴きの血がここまで復活しているのも今年の特徴でしょう。五位にヴォーカル・ジャズが来ていますが、これも近年のレトロ・ジャジーなポップス流行によるもの。ロック勃興前の爛熟黄金時代こそぼくの最愛好分野ですから。

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なにもかもあわせてのトータルでは30万1千262分聴いたということで、途方もない数字だよなあと自分でも思うとおり、日本のSpotifyリスナー全体の99.9%よりも多いっていうデータ解析。一日あたり約13時間は音楽を楽しんでいます。毎年ずっとこんな感じの人生。

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(written 2022.12.3)

2022/12/02

ソノラの国境沿いから 〜 リンダ・ロンシュタットほか

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(2 min read)

 

v.a. / Feels Like Home: Songs from the Sonoran Borderlands ~ Linda Ronstadt’s Musical Odyssey
https://open.spotify.com/album/5l5aIt3uKxZsMmU3vO4SBP?si=iEOSb5SjQvWUMpe-CDvhDQ

 

米西海岸で活躍したリンダ・ロンシュタットが育ったアリゾナ州南西部メキシコ国境地帯ソノラでの思い出を、歌でつづる回顧録みたいに仕上げたのが本作『フィールズ・ライク・ホーム:ソングズ・フロム・ザ・ソノラン・ボーダーラインズ』(2022)。

 

これが最高なんですよね。USAとメキシコがクロスするあたりのもの、西海岸の音楽家はむかしからとりくんできたものですが、ここではリンダの叙事詩っぽい個人的感慨もこもった音楽になっているということで、いっそう胸に迫ってくるものがあります。リンダがここまでラテン・ルーツを歌で表現したのは初めてのはず。

 

アルバムはライ・クーダー&ラロ・ゲレーロで幕開け。その後収録曲はどれもすばらしく、テックス・メックスというかラテン・ボーダーの音楽にしみこむ情緒感をしっとり伝えてくれます。やはり西海岸ジャクスン・ブラウン昨夏の新作からの再演もあり。今回のヴァージョンのほうがメキシカン・フィールが強く、イスパニック系移民がテーマの曲なのでより沁みます。

 

個人的にはリンダ自身がヴォーカルで参加している(といっても何年の録音だろう?パーキンソン病で引退しているはずなんだけど)数曲(2、5、8、9)がずいぶんいいなと感じます。特に「アクロス・ザ・ボーダー」(w エミルー・ハリス)とか「アイ・ウィル・ネヴァー・マリー」(w ドリー・パートン)とか。

 

トータル一時間半CDなら二枚組サイズになりそうな大きなテーマではありますが、今作は、でもプライベートな内容でもあるので、あっさり39分というレコード尺におさめてささっと聴かせるあたりも工夫が効いていますね。肩肘はらない自然体という感じで、こうした歌の数々はリンダにとってはあたりまえの日常だからでしょう。

 

(written 2022.12.1)

2022/12/01

肉感的で痩身なコントラバス独奏 〜 ハーン・メスリアン

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(3 min read)

 

Kham Meslien / Fantômes… Futurs
https://open.spotify.com/album/1D9axOGORyXV8UuM1ukX5n?si=NPF1MOalQdWB0doNtoBOFA

 

bandcampにページがあるだけで、それ以外アルファベットで検索すれどなにも情報がないハーン・メスリアン(という読みでいいの?かもわからず)のアルバム『Fantômes… Futurs』(2022)。出会ったのはぼく向きにカスタマイズされたSpotifyの新着紹介プレイリスト『Discover Weekly』でのこと。

 

流れてきたコントラバス・サウンドに思わず釘づけ、魔法にかけられたかのごとく惹き込まれ、これだれ?どんなひと?と思っても、どこのエリアの音楽家なのかすらわかりませんからね。ジャケ写が本人だとすれば、男性コントラバス奏者なんだろうということしか手がかりがなく。

 

アルバムの音楽に感動してInstagramに投稿しているうち本人アカウントに見つかって相互フォローのお友だち状態になってしまったから、そのへんはDMかなにかで聞けば教えてもらえるかもしれないんですけども(なぜ聞かない?>じぶん)、いまのところすべてがミステリー。

 

でも音楽にはひじょうに強い牽引力、ほぼチャームのマジックといってもいいくらいなあざやかなものがあります。基本的にコントラバス独奏で構成されていて、そのナマナマしい極太サウンドをとらえた録音もみごと。こんなぶっとい肉感的なベースの音は聴いたことないよなあ。

 

エレクトロニクスな気もしますが打楽器音や、人声とか、コラ(じゃないかと思うなにかの弦楽器)などトラックによりコラージュされてありますが、それらもハーンの演奏なのかどうなのか。Anthony Josephの名がありますから4曲目での英語のスピーチはそのひとなんでしょうけど、それ以外はわからないです(どうしてbandcampのページにクレジットを載せないのだろう)。

 

でもあくまでベース独奏でできあがっている音楽で、そのベースはたいていのトラックで二重にオーヴァー・ダビングされているように聴こえます。一本がオスティナートみたいな一定の短いパッセージを反復し、他本がその上で自由に即興しているという感じ。

 

純粋に音しかここにはなく、物語も、情緒感とか人間的な風味みたいなものも徹底的に排除されたドライな音楽。ベースの音色はとても野生的で肉感的であるものの、音楽性としてはいっさいのムダがない極限の痩身にまでとことん削ぎ落とされた美を聴く思いです。

 

(written 2022.11.13)

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