グルーヴを先導するヴォーカル 〜 ロイ・エルドリッジ、エラ・フィッツジェラルド
(2 min read)
Roy Eldridge, Ella Fitzgerald / In Concert
https://open.spotify.com/album/0gDNj4H7FieXskNfF9Imhn?si=g2MuPFzmRgqiXpdcuWbRrg
ロイ・エルドリッジ&エラ・フィッツジェラルドの未発表発掘ライヴ音源を収録したアルバム『イン・コンサート』(2022)は1959年5月21日のコペンハーゲン・ライヴ。全11曲のうち冒頭二曲がロイ、3曲目以後はエラをフィーチャーし、バンドは同一です。
ロイの二曲にはビ・バップっぽさがただよっていて、このトランペッターはスウィング・ジャズ時代後期の存在ということになっているわけですが、なかなかどうして鋭角的に斬り込むシャープな吹奏ぶりにはモダンさを感じます。特に2曲目「ロイズ・リフ」(曲題だってビ・バップ的)。
もちろんビ・バップの先駆者とみなされることもあるし、じっさいディジー ・ガレスピーあたりにも大きな影響を与えたので、新時代にはこうした演奏だってときにはくりひろげたということなんでしょうね。代理コードの使いかたなど和声面でもモダンさが聴きとれます。
3曲目以後のエラ。個人的にグッとくるのはやはり急速調でスキャット・インプロをかましまくるもの。8曲目「オーライト、オーケイ、ユー・ウィン」と11「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」がなかでもきわだっています。後者なんかまずおだやかなテンポで出てワン・コーラス歌ったとたんドラマーの威勢いいフィル・インを合図に突如快速にギア・チェンジ。
スキャットばかりでなく歌詞も自在に変化させながら好きなように自由に思うがままのラインを歌いこなす技巧には舌を巻くものがあります。スウィンギーというか猛烈にドライヴしていて、エラのヴォーカルこそがそれを先導しあおっているのが聴いているとよくわかりますよね。
そうしたブレイン・ブロウイングなナンバーがあるかと思えば、4、9、10曲目などゆったりしたテンポでしっとりとつづるメロウ・バラードでの表現もすばらしく、その他50年代らしくキューバン・リズムをとりいれているものだって余裕で聴かせるし、ほんと文句なしのトップ・ジャズ・ヴォーカリストでしたね。
(written 2022.11.14)
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