肉感的で痩身なコントラバス独奏 〜 ハーン・メスリアン
(3 min read)
Kham Meslien / Fantômes… Futurs
https://open.spotify.com/album/1D9axOGORyXV8UuM1ukX5n?si=NPF1MOalQdWB0doNtoBOFA
bandcampにページがあるだけで、それ以外アルファベットで検索すれどなにも情報がないハーン・メスリアン(という読みでいいの?かもわからず)のアルバム『Fantômes… Futurs』(2022)。出会ったのはぼく向きにカスタマイズされたSpotifyの新着紹介プレイリスト『Discover Weekly』でのこと。
流れてきたコントラバス・サウンドに思わず釘づけ、魔法にかけられたかのごとく惹き込まれ、これだれ?どんなひと?と思っても、どこのエリアの音楽家なのかすらわかりませんからね。ジャケ写が本人だとすれば、男性コントラバス奏者なんだろうということしか手がかりがなく。
アルバムの音楽に感動してInstagramに投稿しているうち本人アカウントに見つかって相互フォローのお友だち状態になってしまったから、そのへんはDMかなにかで聞けば教えてもらえるかもしれないんですけども(なぜ聞かない?>じぶん)、いまのところすべてがミステリー。
でも音楽にはひじょうに強い牽引力、ほぼチャームのマジックといってもいいくらいなあざやかなものがあります。基本的にコントラバス独奏で構成されていて、そのナマナマしい極太サウンドをとらえた録音もみごと。こんなぶっとい肉感的なベースの音は聴いたことないよなあ。
エレクトロニクスな気もしますが打楽器音や、人声とか、コラ(じゃないかと思うなにかの弦楽器)などトラックによりコラージュされてありますが、それらもハーンの演奏なのかどうなのか。Anthony Josephの名がありますから4曲目での英語のスピーチはそのひとなんでしょうけど、それ以外はわからないです(どうしてbandcampのページにクレジットを載せないのだろう)。
でもあくまでベース独奏でできあがっている音楽で、そのベースはたいていのトラックで二重にオーヴァー・ダビングされているように聴こえます。一本がオスティナートみたいな一定の短いパッセージを反復し、他本がその上で自由に即興しているという感じ。
純粋に音しかここにはなく、物語も、情緒感とか人間的な風味みたいなものも徹底的に排除されたドライな音楽。ベースの音色はとても野生的で肉感的であるものの、音楽性としてはいっさいのムダがない極限の痩身にまでとことん削ぎ落とされた美を聴く思いです。
(written 2022.11.13)
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