演歌はハレ、歌謡曲はケ
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柳田國男の「ハレ」と「ケ」にしたがえば、演歌はハレ、歌謡曲はケ。ハレとは簡単にいって非日常性、ケとはふだんの日常で、演歌はどう考えてもお祭りなどに類するケバケバしい非日常の世界でしょう。
特にスタンダードな古典演歌の世界でこれがいえるはず。歌詞もメロディもサウンドもヴォーカルも浮世離れしているっていうか、歌謡曲が日常の生活感覚に根ざしたものなのに比べたら、演歌はどこまでも派手で飾った世界。
アメリカン・ミュージックでいえばティン・パン・アリー、それが演歌で、庶民のふだんの生活とはだいぶ違う感覚に立脚しているんですよね。大衆音楽の世界では日常の生活感覚に根ざした音楽こそ自分たちに寄り添うもので、なんというか「すばらしい」のであるという認識が一般的ですが、好みはまた別。
つまり個人的にどっちが好きかっていうと、ぼくは圧倒的にティン・パン・アリーや演歌。むろん演歌のなかにも日常性はあるし、歌謡曲だって浮世離れしたような世界観を持つものがありますが、おおむね差があると思うんですよね。厳密な境界線は引けないにせよ。
いってみれば夢を見るような世界が演歌であって、つらいけど淡々と現実を直視しようというものじゃないんですよね。だから歌詞もサウンドもヴォーカル・スタイルもドラマティックで激しく強いんです。一般の聴き手はいっときの逃避願望をそこで実現するっていうか、現実をちょっと忘れて気を紛らわせて、またしんどい日常に戻っていく、だからハレなんですよね。
そういった世界観には感情移入できないという音楽家やリスナーもそこそこいるはずで、演歌界も近年若手第七世代に代表される日常のストレート&ナイーヴ・フィーリングを大切にした淡白なものが出はじめるようになっているのは、旧来的なハレ演歌からの脱却なんだとみることもできますね。
(written 2022.11.23)
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