お布施 de 演歌
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っていうようなものがあると思うんですね。これをぼくが理解するようになったのは、岩佐美咲の歌唱イベントに通いはじめた2018年11月からのこと。
すでに何枚も持っているにもかかわらず、ファンはみんなどんどんCD(主にシングル盤)買いまくるのを目撃しました。そしてぼくもそうなりました。会場でおしゃべりしていると「すでにこれは自宅に100枚くらいあるよ」というかたもいました。
もちろん一枚買うごとに一枚の特典券がもらえ、二枚で2ショット撮影権なので、それを目当てに買うわけです。ここはそういうもんだ、そういう世界なんだということをわさみんイベントに参加するようになって、ファン歴二年弱であのころようやく知りました。
これはわさみん界隈だけの特殊事情でもなく、ほぼどんな歌手でも演歌応援ではひろく行われていること。演歌は長らくテレビの歌番組でしか聴いてこず、レコードやCDを買ったり現場に参加するなんてことがなかったから、ちっとも知りませんでした。
むろん握手&2ショット撮影を事後に行うのでそのためにCD買ってねっていうのはAKB48出身のわさみんらしいところなんですが、そうでなくたって演歌のコンサートやライヴ・イベントの会場では当然その歌手のCDがたくさん売られています。ファンは(すでに持っていても)それを現場で買うんですよね。それが歌手への応援行為であるということで。
しかも特殊なのは、演歌界では同じ一つの新曲CDを、カップリング・ナンバーとジャケットだけ変えて何種類もたくさんくりかえし発売するでしょ。通常盤、初回限定盤、特別盤タイプA、B、Cとか、Fまであったり、どれも表題曲は同じものなんですよ、それをい〜っぱい発売するんです。
一種の詐欺みたいなもん、というと語弊がありますが、なんかそんな世界ですよね。演歌界の慣習っていうか、あの最大物氷川きよしですら新曲一つを何種類ものシングルCDでリリースしていましたから。で、ファンはそれをぜんぶ買う。曲がダブるのに。
アルバムだってですね、同じ代表曲を毎回収録して、ほぼ似たような内容のベスト盤CDが、歌手によってはほぼ毎年のように出ます。都はるみのような引退同然歌手でも美空ひばりのような故人でも「スーパー・ベスト」だの「究極ベスト」だの「全曲集2021」「全曲集2022」とか。
真の意味での<全曲集>だったら一種類しか存在しないはずなのに、CDをそのまま使っているサブスクで見ても、内容的にはちょっぴり選曲とジャケットを変えただけのものが、何種類も、同じ曲ばかり収録したアルバムが、毎年出るんです。どれ聴いても「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「大阪しぐれ」があるっていう。
こんなことやってんの、演歌界だけですよ。
同じようなものにくりかえし毎年寄付のようにお金を払う、だからお布施だってぼくは言うんです。CD買ってもべつにご利益みたいなものが得られるわけじゃないけれど、ファンのほうとしては応援しているという行為を実施することじたいに意味があって、精神の安寧と満足感が得られるし、それが生きがいみたいになって人生が充実するし、楽しいんですよね。
推し活ってそういうもんですよ。
(written 2023.1.28)
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