デクスター・ゴードンの「ウェア・アー・ユー?」が絶品
(2 min read)
Dexter Gordon / Go
https://open.spotify.com/album/5nEJj9bjoarnzlS88NiWet?si=pmk8GfxARMKepIXYU6y-Fg
ときたま無性に聴きたくなることがある典型的ハード・バップ。音楽に接し気楽な心地でいたいときには好適なんですよね、ぼくには。このへんが音楽キチガイへの入り口だったからなんでしょうか、やっぱり。バック・ホームっていうか。
優秀な傑作でなくたって、ありきたりのあたりまえでいい、そういうのが聴きたい、聴いてなんとなくダラダラしたムードでくつろぎたいというこのぼくのそんなときたま訪れる嗜好にだれも文句はつけられないはず。そういうのもまた音楽趣味。
ということで選んだデクスター・ゴードンの『Go』(1962)。全六曲はオープニング・ナンバーが自作なのを除けばスタンダードばかりで、ソニー・クラークを中心とするピアノ・トリオをしたがえたワン・ホーン編成。デックスに多いですね。
バラード二曲(2、5)が特にすばらしくって、ことに5「Where Are You?」は、以前クリスチャン・マクブライドのヴァージョンを絶賛した記事でも書きましたが、ほんとうに大好物の一曲なんですよね。「あなたはどこへ行ってしまったの?」という悲痛な失恋歌ですが、メロディの美しさは筆舌につくしがたく。
それで、デックスのテナー・サックス吹奏って、おわかりのとおりちょっともたるんですよね。ビートにジャストで乗らず、ほんのわずかに遅れて音が出てくるでしょ。もっさりしているっていうか、だから快適テンポのグルーヴ・チューンだとイマイチこっちが乗りきれない気がすることもあります。
その点、バラードならいいですよ。若干のアフター・ビート乗りでもさもさ吹きあげるスタイルが、じっくりしっとり曲の情緒感をつづっていく様子に聴こえて、リリカルでていねいに感じます。「ウェア・アー・ユー?」みたいな曲だといっそうそれがきわだつと思うんです。
正直いって「ウェア・アー・ユー?」一曲の印象があまりにもすばらしいので、ただそれ一個だけの理由できょうのこの文章を書いておこうという気持ちになりました。それほど本曲でのデックスの演奏は沁み入ります。ロスト・ラヴの美があります。
(written 2023.2.17)
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