ホワイト・ニュー・ソウルとしてのセントラル・パーク・コンサート 〜 キャロル・キング
(3 min read)
Carole King / Home Again - Live from Central Park, New York City, May 26, 1973
https://open.spotify.com/album/50CaGSXy1G8maVQypYXbxr?si=46F_sOJJRjmyS10Z4J08fA
以前からの予告どおりこないだ(ちょっと前か)出たキャロル・キングの『Home Again - Live from Central Park, New York City, May 26, 1973』(2023)では、8トラック目のバンド・メンバー紹介にはじまる後半パートこそ聴きもの。
キャロルは「デイヴィッド・T・ウォーカーズ・バンド」とMCで呼んでいる大編成で、エレキ・ギター(デイヴィッド・T・ウォーカー)、エレキ・ピアノ(クラレンス・マクドナルド)、エレキ・ベース(チャールズ・ラーキー)、ドラムス(ハーヴィ・メイスン)、パーカッション(ミズ・ボビー・ホール)にくわえ、2サックス、2トロンボーン、2トランペット。
ピアノ弾き語りをいつも基底とするキャロルがこんな編成でライヴでもスタジオでも演奏することはあまりなく、この日のこのバンドは本人もしゃべっているように完成済みでリリース間近だった当時の新作『ファンタシー』(1973.6)から弦楽だけ抜いてそのまま使ったもの。
『ファンタシー』は最初と最後に「ビギニング」と「エンド」を置き全曲をそのあいだにはさむ組曲形式のコンセプト・アルバムで、ソウル・ロック、あるいはブルー・アイド・ソウルとして玄人筋から高く評価された作品です。
1973年というといはゆるニュー・ソウルがちょうど大きな波となっていた時代。キャロルとしてもそのへんの流行を意識したチャレンジをしたのでしょう。そんな新作のライヴお披露目としてセントラル・パーク・コンサートを使った格好です。このまま全米ツアーにも出ました。
はたしてこの日の後半は『ファンタシー』の音楽性をライヴでかなりな部分再現することに成功しているように聴こえます。歌詞は内省というより社会派なメッセージ性に富み、サウンド面でもジャズやフュージョン、そしてソウルに著しく接近。まさしくホワイト・ニュー・ソウルのおもむきです。
なかでも特に13「ヘイワード」とか16「コラソン/ビリーヴ・イン・ヒューマニティ」あたりの斬新なサウンドはあざやかで耳を奪われます。メドレーになっている後者の1曲目なんか、こりゃもうラテン・ジャズ・ファンクだろうといえるグルーヴ感で、スリリング&躍動的。
(written 2023.2.23)
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