都会の香りがする音楽が好き
(4 min read)
My City Pop
https://open.spotify.com/playlist/0A8m5yDIFx6qGbJdzWH1fA?si=1e64a6c5fc0542a7
ここ10年内のリリースに限定して思い浮かぶまま九作、画像をタイルしてみましたが、このあたりが(いまの)ぼくの好きな音楽ってこと。古いものならたとえばリー・ワイリー『ナイト・イン・マンハッタン』(1955)あたりがまさにぐっとくるシティ・ポップで、そういったものがほんとうに好きになったんですよ。
生活や人生のにおいのしない、リアリズムでない、おしゃれで洗練されたスタイリッシュでジャジーでピースフルな都会派ポップス。実生活でも農村のあぜ道より摩天楼のアスファルトを歩いているほうがずっと快適で、これは生来の気質なのか、それとも(がんらい大都会の音楽である)ジャズに惚れて以後そう育ったのか。
そしてここ10年以上、約20年近くかな、どんな音楽ジャンルでも都会的でおだやかジャジーなものが台頭しているっていうかちょっとしたブームになっているのも間違いないことで、それはレトロ志向とも関係ありますし、日本のシティ・ポップが世界でムーヴメントになっているようなたぐいのことだって通底しています。
多ジャンルをクロスするようにジャズ要素が芯をつらぬくようになっていて、こうしたことはジャズって実体ではなくて音楽演奏の方法論でしかないというこの音楽の本領をいかんなく発揮しているっていうこと。ジャズ的なものがここまでコンテンポラリーによみがえってくるとは、20世紀の終わりごろ思っていませんでした。うれしい。
以前は、Niftyのパソコン通信をはじめた1990年代後半から21世紀はじめごろでも、ジャズ・ファンは蔑視されていて、「(ジャズ好きなんか)あっちいけよ」「一度もジャズ・ファンだったことがない」「ジャズなんてケッと思っていた」とか言われたり、言外の態度に出ていたりなどの日々をすごしてきました。
ノラ・ジョーンズの出現が2002年ですが、あのころはノラを従来的なジャズ・ヴォーカルの枠内でとらえようとする言説ばかりでしたし、ネガティヴなことばを向けるロック・ファンすらいたくらい。現行シーンの大本流である新世代ジャズとレトロ・ポップスの二つともの源流がノラの汲んだ水にあったことが理解されるようになるのに、さらに10年の時間を要したとはいえ。
あのへんのおだやかジャジーなポップスは、たとえばもともと1970年代からレトロ・ジャズ志向も強かったドナルド・フェイゲンあたりの復活にもはっきり関係していて、演奏家の技量向上と機材の発達もあいまって、ロックでもジャズでもポップスでもないようなライヴ・ミュージックの樹立に大きく寄与しているわけです。
ブラジリアン・ミュージックなテイストもそこには加味されていて、ブラジル国内から新世代ジャズに共振するような音楽家がどんどん出てくるようになっているばかりか、USアメリカのミュージシャンたちだって(これは60年代からそうだったけど)ブラジル要素を、それもナチュラル&スポンティニアスに、参照したりすることが増えています。
台湾や香港や中国内地の新世代ポップ音楽家たちもそんな流れのなかにあって、音を聴きさえすれば「あぁ、これは同一基軸だ、全世界的な潮流なんだね」とどなたでも感じとることができるシーンが、もはやだれも疑えない確固たるものとして確立されていると感じられるのが、いまのぼくの個人的音楽ライフが楽しい最大の要因です。
(written 2023.3.27)
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