新奇をてらわない王道のトルコ古典歌謡 〜 ヤプラック・サヤール
(2 min read)
Yaprak Sayar / Klasikler
https://open.spotify.com/album/6phxKyFn5APQSqw3L02rE5?si=2CsFW5WfRpSP1qXpX5FNsA
アラトゥルカ・レコーズの一作目『Girizgâh』(2014)で知って好きになったトルコ古典歌謡の歌手、ヤプラック・サヤール。二作目『Meydan』(15)にも参加していましたが、続くソロ・デビュー・アルバム『Caz Musikisi』(18)はなんでかのスウィング・ジャズ・アレンジで、全員がずっこけたっていう。
レトロ・ジャズ流行の先取りだったわけでもなし、なんだったんでしょうね。本人のTwitterアカウントによく上がるふだんの演唱風景にそんなのはもちろんなく、当時から現在までたとえばサズ一本の伴奏とかでストレートに古典を歌っていますから、あのアルバムだけなんだかちょっとねえ。気合い入りすぎ?
でもこないだ出たばかりの最新アルバム『Klasikler』(2023)は新奇をてらわない王道の古典路線で、これはいいと思いました。今年はじめにもう一作あったんですが、そっちはトルコ民謡集。ですから『Klasikler』はキャリア通算三作目かな。でもって最高作になったかと思います。
今回ヤプラックの自作とクレジットされている曲も多いので、古典仕様でオリジナルを書いたということでしょうか。なかには年代の古いものもあるのかも。そのへん実はあまりわかりませんが、聴けばムードは瞭然、アラトゥルカ・レコーズで展開されていたのとまったく同じ世界がここにはあります。
個人的には、こうした音楽でたとえばカーヌーンなどがイントロでめくるめく旋律を奏でていたりするのが、たとえばアルジェリアのシャアビでマンドーラがやはりイントロなどできらびやかに弾きまくっているのと同じフィーリング。たいへん気持ちいいんですよね。
ヤプラックの声は以前からちっとも変わらないスモーキーな色気をたたえていて、哀感というより独特の屹立する気高さのようなものがあるなと感じます。きわめて少人数からなる室内楽バンドの伴奏をしたがえ、しっとりとトルコ古典をつづるのを聴くのは、たとえば日暮後などなら、なにものにもかえがたいリラックス・タイムになります。
(written 2023.5.6)
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