どうってことないけど、くつろげる(1)〜 ヘイリー・ブリネル
(3 min read)
Hailey Brinnel / Beautiful Tomorrow
https://open.spotify.com/album/0M3Rq3rexDsLnrDv0y2DsK?si=5P8sXSt4R8i4-LuGF_HPyA
好みのレトロ・ジャズ歌手、ヘイリー・ブリネルの新作『Beautiful Tomorrow』(2023)が出ました。ジャケットは安易にぱぱっとやっつけた感じの低予算路線であれですが、そのへんやっぱりインディっていうか知る人ぞ知る存在でしかないんですよね。中身は楽しいので、ぼくには。
「ティー・フォー・トゥー」「ア・カテージ・フォー・セール」「キャンディ」といった定番スタンダードにまじって自作もあり。そして今回はドナルド・フェイゲンの「ウォーク・ビトゥウィーン・レインドロップズ」(『ザ・ナイトフライ』82)もカヴァーされています。
フェイゲンのあれは最初からレトロなジャズ・ムードを強く意識したナンバーでしたので、それを今回ヘイリーが選んだというのは聴いてみる前から納得できるものがありました。8ビート・シャッフルを4/4拍子にアダプトし、はたしてピッタリなムードで、曲よし演奏よしの文句なし。
これに象徴されていますように、いはゆる「古き良きアメリカ」みたいなものを音楽で再現せんとする指向がこうしたレトロ・ジャズ・ポップスにはあって、古き良きアメリカってなんやねん?!といぶかしがる向きもいらっしゃるでしょうが、ぼくなんかはたんに聴いたら楽しい、好みの音楽であるというだけの話です。
今回もなじみのオールド・スタイルなジャズ・バンドをバックにつけて、そして前作とちょっと異なっているのはやや大きめ編成の管楽器アンサンブルも曲によっては参加しているということでしょう。ディキシーランド路線からややスウィング系へと進んだような感じ。
2曲目「I Might Be Evil」(自作)だけはちょっぴりモダンっていうか、ブルージーでファンキーな香りすらただようシャッフル・ナンバーで、なんだかハード・バップみもあります。これ一曲を例外に、あとはさっぱり淡々とレトロ・ムードを追求。
ラストのスタンダード「キャンディ」だけは以前のビートルズ・カヴァー「アイル・フォロー・ザ・サン」同様にコントラバス一台の伴奏。こういうのを聴くと、ヴォーカリストとしてちょっとした実力を持っているんだなとわかります。
個人的にはこうした音楽がくつろぎのリラックス・タイムにぴったりなんですね。
(written 2023.3.26)
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