むつこくないサルサ・ジャズ 〜 ソニード・ソラール
(3 min read)
Sonido Solar / Eddie Palmieri Presents Sonido Solar
https://open.spotify.com/album/5MNcjG7o8bVANM1RPEES6Q?si=6hHFOB2MTiuW0bByC3TBXQ
料理に使う愛媛県松山地方のことばで、もう老年層しか使っていないかも、「むつこい」っていうのがあるんですけど、味がしつこい、くどい、脂っこいという意味で、だからおいしくない、イヤだということ。
サルサ(・ジャズふくむ)に対するいまのぼくの感じかたがまさにこのむつこいっていうこと。でもそうなったのはここ数年です。あっさり淡白な音楽を好むようになってから、サルサ系は濃厚すぎるので敬遠したいと思うようになりました。
でも昨年リリースだった新登場のサルサ・ジャズ・バンド、ソニード・ソラールによるデビュー・アルバム『Eddie Palmieri Presents Sonido Solar』(2022)はさわやかで、かなりいいと思えましたよ。エディ・パルミエリ全面支援とのことで警戒しましたが、杞憂でした。
ソニード・ソラールはNYCのラテン・シーンで役割を担っている例のカーティス・ブラザーズが中心になって結成されたもの。リズム+ブラス二管+リード二管というシンプルな編成ですが、サウンドには硬質なふくらみがあります。
でありながら暑苦しくないすがすがしさが香り、こういうのだったら大好き。紹介していたデスクウニヨンのサイトでは「迸る熱き血潮と哀愁を漂わせた極上のラテン・アンサンブルが炸裂する21世紀最高級の」なんて書いてありましたが、ぼくの印象は逆です。
かなりクールなサウンドに聴こえ、そうだからこそいまのぼくでも好感をいだけたんですから。そのクールさ、さわやかさがどのへんに由来するか、ちょっと分析してみようと思ってもよくわからないんですが、間違いなく聴きやすいという手ごたえがあります。
ホーンズ四本っていうのがいいのかもしれません。サルサやラテンなビッグ・バンド・アンサンブルがぐいぐい来るような迫力のオーケストラ・サウンドっていうのがですね、なんだか押しつけがましいと感じるようになったのもこの世界を遠ざけるようになった原因の一つでしょうから。
そこいくと本作はオーケストラというよりちょっぴり大きめのコンボというに近い感覚で、これでもかと聴かせつけるような厚かましさがないように感じます。このごろ苦手なブラスだって二人しかいないんだし。
それにどっちかというとリズム・セクション中心の演奏ぶりで+パーカッション群というのがサウンドの中軸になっているのもいいですね。特にピアノのサッカイ・カーティスは好演ぶりが光ります。御大エディ・パルミエリも終盤の二曲で参加、やっぱりうなりながら弾きまくっておられます。
(written 2023.5.7)
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