血湧き肉躍る系ラテン・ジャズ 〜 ウィルソン・チェンボ・コルニエル
(3 min read)
Chembo Corniel Quintet / Artistas, Músicos y Poetas
https://open.spotify.com/album/54O7zs8KLUOyrtgtZLq3Lt?si=MBM6aRtASpmHC9yZWdvpuQ
NYラテン・ジャズ界で人気も評価も高いパーカッショニスト、ウィルソン・チェンボ・コルニエル(プエルト・リコ系)の最新作『Artistas, Músicos y Poetas』(2023)は、要するに血湧き肉躍る系のラテン・ジャズですね。
自身のパーカッション+リード+ピアノ・トリオというシンプルな編成でグイグイ迫る白熱のリズムがたまりません。おまえそういうの苦手になったんじゃ?と言われそうかもですが、なんかこれはいいなあ。(5曲目のゲストを除き)金管がいないせいかなあわからないけど。
もう1曲目から華やか。にぎやかでドライヴするラテン・グルーヴ満開で胸がすきます。サックス・ソロとフルート・ソロが立て続けに流れてきますから、バンドのリード奏者が多重録音したというよりどっちかがゲストかも。パーカッション・アンサンブルの多彩カラーリングにもゲストがいるかなと聴こえます。
そうそうサックスといえばバンドのヘリー・パスが本作全体を通しかなりいい。フレイジングも聴かせるし、ねばりつくフルートでも活躍で、こ〜りゃいいラテン・リード奏者ですね。Pazっていう名前からしてやっぱりこのひともヒスパニックなんでしょう。ピアノのカルロス・クエバスも好み。
チェンボはコンガにティンバレスにその他各種パーカッション類にと文句なしの八面六臂ぶり。勢いや力で押しまくるだけでなく緩急のツボを心得たプレイぶりでみごとだと感心します。パーカッション・パレットの引きだしも多く、チェンボのカラフルなリズム構築がもちろん本作のキモ。ラテン・ジャズですから。
多くの曲が本作のためのオリジナルであるなかに、エディ・パルミエリ(5)があったり、セロニアス・モンクの「エヴィデンス」もとりあげています。後者は実をいうと通常のジャズ・ミュージシャンがやるときどうも好きではなく、あのテーマ部のダッ、ダッ、ダッっていうのが苦手で。
でもここで聴けるチェンボ・ヴァージョンはすばらしく、多くの従来型ジャズ・リスナーにとってはこれが本アルバムでの注目の聴きどころといえるかも。モンクの曲ってここまでラテン・ビートと相性よかったんですね。ってかラテンの浸透拡散力おそるべし。
曲間の空白時間をあまり入れずポンポン流れてくるのもテンポよくて好きです。90年代のクラブ系大流行以後曲間ゼロに近くなっていたのが、ここのところまた(ずっと前みたく)長めに回帰しているんですが、でもチェンボの本作は「オョ?止まった?」とか疑わずにすみます。
(written 2023.6.25)
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