王道のアメリカン・ルーツ・ロックは永遠に不滅です 〜 トレイシー・ネルスン
(3 min read)
Tracy Nelson / Life Don’t Miss Nobody
https://open.spotify.com/album/28gauff9JHiO1Co73MvUnP?si=rPTDfCLyTLCpIxB4qYbuCA
米西海岸ベイ・エリアのブルーズ・ロック・バンド、マザー・アース(1968〜77)創設時からのリード・シンガーとして活躍したトレイシー・ネルスン。同バンド在籍は72年ごろまで。74年からソロで活動しています。
ですからトレイシーもだいぶキャリアが長いわけですが、最新アルバム『Life Don’t Miss Nobody』(2023)がずいぶんいい出来で胸に沁みる内容。個人の感想ながら、こうしたブルーズ・ロックっていうかアメリカン・ルーツに根差したロック系ポップスは永遠に不滅なんだなあとの感慨を強く持ちました。
ブルーズ要素はもう古いとか時代遅れとか言うみんなにまどわされず、いままでどおりこれからもこうしたエヴァーグリーン・ミュージックを聴き続けていきたいし、じっさい新作もいまだどんどん出ていますからね、ベテラン・若手の別を問わず。
本作にはブルーズ・ロックというよりブルーズ・ミュージックそのものだろうと思えるようなものも二曲あります。4「Your Funeral and My Trial」と9「It Don’t Make Sense」。ブルージーなスライド・ギターやハーモニカをフィーチャーし、こ〜りゃいいね。ほんとこういうの快感です。
かと思えばクラリネットの入るトラッド・ジャズふうなものがあったり(5)、伝承曲の7「Hard Times」ではアコーディオンが使われていて南部ふうのイナタい雰囲気でありつつ毅然としたヴォーカリストの心境もうかがえる内容で、すばらしい。
ウィリー・ネルスン参加の8曲目はやはりカントリー・ソングですが、ブルーズ・ロックとの境界線を感じない内容。カントリーだってもとはといえば白人版ブルーズとしてルーツ的には出発したんだし、トレイシーもウィリーもそのへんの事情というか伝統を体現しているわけでしょう。
ラテンというかカリビアンなロックンロールも二曲あり(10、12)。うちチャック・ベリーをカヴァーした12「Brown Eyed Handsome Man」ではトレイシー、アーマ・トーマス、ダイアン・デイヴィッドスン、マーシャ・ボール、リーバ・ラッセル、ヴィッキー・キャリーコが一堂に会し交互にマイクを握ったりというぜいたくさ。こんなおねえさまがたにはさまれた〜い。
(written 2023.6.16)
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