キューバのベートーヴェン 〜 ニュー・クール・コレクティヴ、アルマ・カルテット
(3 min read)
New Cool Collective, Alma Quartet / Opus 127
https://open.spotify.com/album/6AgECLoboHcH2LgWwuxc8H?si=Ih96k16PRIWCZvFO299QbA
ニュー・クール・コレクティヴは結成20年以上にもなるオランダの雑食系ジャズ集団。その最新作はアムステルダムの弦楽四重奏団アルマ・カルテットと組んだ『Opus 127』(2023)で、名の通りベートーヴェンの作品127、すなわち弦楽四重奏曲12番からアダプトしたもの。
原曲は四楽章構成でしたが、そのうち第二〜第四楽章をとりあげてジャズ・アレンジしてあります。なかでも個人的にンモ〜タマラン状態なのが1トラック目の「II アダージョ」。ぜひベートーヴェン・スコアに忠実なクラシック・ヴァージョンと聴き比べていただきたいと思います、サブスクにたくさんありますから。
ニュー・クール・コレクティヴのは優雅なキューバン・ボレーロへと仕立てあげているんですね。最高じゃないですか。メロディはストリングスじゃなくサックスやトロンボーン、トランペットなど管が吹いていて、それがボレーロのリズムと相性よすぎると思うくらいの完璧な響き。ほんと〜っにきれい。
ドラムス、パーカッションの使いかたも曲と解釈にピッタリはまった最適なもので、随所で入るティンバレスのフィル・インにツボを刺激されて快感です。こんなキューバふうにベートーヴェンが変貌するなんて。目のつけどころ、アダプトと解釈の極上さに舌を巻きます。
「II アダージョ」でのアルマ・カルテットはさほど目立たず、バックグラウンドで控えめに対位メロを演奏したり和音でカラーリングをふくらませたりといった役目。それでもジャズ・バンドがハメを外さないようにクラシカルな手綱をしっかり握っているのがわかります。
トラック2、3ではこのストリング・カルテットもフロントで活躍。リズム・セクションが当然ついてスウィンギーになってはいますが(2「III スケルツォ」はワルツ、3「IV フィナーレ」はマーチふう)これら2トラックではわりあい従来的な<ジャズ・ミーツ・クラシック>の枠におさまっているかも。
ですけどね、1「II アダージョ」のボレーロがあんまりにもエレガントで美しく居心地いいもんで、それさえあればこのEPは聴く値打ちあるよ!と強く断言したいっていう、それほどのできばえですよ、この曲というか楽章は。たった3分54秒しかないなんて。5分は続けてほしかった。
(written 2023.7.19)
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