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2024年1月

2024/01/31

しんどいときに聴く音楽(75)〜 Us3

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(2 min read)

 

Us3 / Hand on the Torch

https://open.spotify.com/album/3lOv4MWFZGIJmHdyMXtlB5?si=YmwhESMCT1O7qXpl_CaTyQ

 

ロンドンのヒップ・ホップ・ジャズ・ユニット、Us3のデビュー・アルバム『Hand on the Torch』(1993)のことはいまでも大好き。この手の一般の音楽家との大きな違いはブルー・ノート・クラシックから大胆にサンプリングしてあるところ。

 

そもそもUs3はブルー・ノートから公式にサンプリングの許可をもらっていたユニットでした。そんなわけで古典的などんなブルー・ノート音源からも自由にサンプリングしてあって、そこがハード・バップなどを愛するぼくらにはいちばんグッときました。

 

ビートはコンピューター打ち込みでつくって、そこにサンプル+新たにジャズ生演奏とラップを乗せて足したUs3の音楽は、ジャズが好きで、ヒップ・ホップもちょっと聴いてみたいけどどこから入っていったらいいの?と当時思っていた人間にはピッタリのものでしたね。

 

1990年代前半のヒップ・ホップ系としてそんな斬新だとかいうことじゃなかったかもしれませんが、古いジャズが好きな向きにはちょうどよかったのです。ヒップ・ホップ/ラップとブルー・ノートのクラシカルな音源がこんだけ相性がいいというのも新鮮な発見、驚きでした。

 

Us3は先行リリースされていた「カンタループ(フリップ・ファンタジア)」の人気(あのころFMラジオでバンバン流れていた)と、それを1曲目に収録した本デビュー・アルバムで、忘れられない現象となったのでした。その後はイマイチでしたけれども、一作でじゅうぶんなインパクトがありました。

 

ジャズ・ファン、特にブルー・ノート・ファンにとって格好のヒップ・ホップ入門となったし、音楽じたいが楽しくてカッコよかったと思います。いまでもこの印象は変わりません。

 

(written 2024.1.17)

2024/01/30

しんどいときに聴く音楽(74)〜 ミンガス『クンビア&ジャズ・フュージョン』

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(2 min read)

 

Charles Mingus / Cumbia & Jazz Fusion

https://open.spotify.com/album/1A8nmVkCixB6meKXWN9Okj?si=ciitp2L1Qd6tpwqxr7itRA

 

むかし油井正一さんがジャズはラテン音楽の一種であるということを著書のなかでお書きでしたが、チャールズ・ミンガスの『クンビア&ジャズ・フュージョン』(1978)はその説をもっとも典型的に証明する一作。

 

クンビア(コロンビア音楽)っていうよりアフロ・キューバンな印象が強いですが、いずれにせよそれまでなかった大胆な音楽であったことは間違いなく、油井さんと同じく個人的にはミンガスの最高傑作にあげたいです。

 

1979年にジャズ・ファンになった身としては当時の最新ミンガスとしてレコード・ショップで発見したのでした。ジャケットも印象的でしたし、過去のミンガスのアルバムはぜんぶすっとばしてこれから聴いたっていうのがですね、いまでも鮮烈な記憶として残っています。こんなにも楽しい音楽があるのかと。

 

それから四十数年が経ったいまでもやはりこれがミンガスの諸作のなかでいちばん好きだという印象は変わらないですね。ずばり大傑作でしょう。

 

(written 2024.1.15)

2024/01/29

しんどいときに聴く音楽(73)〜 キャット・エドモンスン

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Kat Edmonson / Dreamers Do

https://open.spotify.com/album/48vMJyoBaAUs7mRtVnENwh?si=HWfsmd69QYmWvnHxgPQqhg

 

USアメリカ人歌手、キャット・エドモンスンの『Dreamers Do』(2020)は、このタイトルどおり夢をテーマにした作品。選曲はディズニー・ソングが中心ですが、できあがりは決して甘くなく、かなり大胆に攻めた内容になっているのがキモ。

 

もちろんおだやかなジャズ・サウンドふうのものも多いんですが、折々で世界のさまざまな楽器を用い、ときに中国ふうだったりときに西アフリカふうだったり、カリビアンだったりブラジリアン・サンバだったり。

 

夢を見るというテーマをサウンドでも実現した世界の音めぐりになっているんですが、背景としてアルバム制作の前にワールド・ツアーをやって各地をまわったということも影響しているんじゃないかという見かたがあるようです。

 

たしかに二胡や琵琶、コラやタブラ、スティール・パンなど、ディズニー・ソングをやるにはかなり意外な楽器チョイスもあります。ありきたりのカヴァー集にはしたくなかったという意図がはっきり聴きとれますね。この歌手は前からいつもそう。

 

曲によっては大幅に改変してあるものがあって、たとえば5「星に願いを」。これは有名ディズニー・ソングのなかでも特によく知られたものの一つですが、ここでは歌詞も曲メロもかなり書きかえてあってオリジナルの面影はほぼありません。

 

それでもかろうじて「星に願いを」であるということだけはわかるギリギリの線のアイデンティティは保持してあるっていう。コラとタブラが大胆に使われているのはこれですが、そのことが夜の夢見ムードをいっそうもりあげるのに一役買っています。

 

(written 2024.1.14)

2024/01/28

音楽の持つ厳かなパワーを感じて 〜 ジャック・リー、ネイザン・イースト

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(2 min read)

 

Jack Lee, Nathan East / Heart and Soul

https://open.spotify.com/album/5lIo1zSBIOOhAj2v62FCo8?si=CciYZzUJRuSarkq3FmDy9A

 

ジャック・リーという韓国人ジャズ・ギターリストがいるっていうのをついこないだ知ったんですが、それはネイザン・イーストとの連名による新作『Heart and Soul』(2023)でのこと。このアルバムがとってもいいですよ。

 

基本カヴァー曲が多く、オリジナルもありますが、いずれにしてもテーマはスピリチュアル・フュージョンってこと。ゴスペルふうな曲や神、信心というモチーフを持った曲ばかりで、ジャックは敬虔なクリスチャンなのかもしれないですね。

 

1曲目から、なんだか聴いたことあるなじみのメロディだぞと思ったら、J.S. バッハのカンタータ。それも神をテーマにしたものですし、2曲目はスティーヴィ・ワンダー、3曲目はフォーレ。

 

サイモン&ガーファンクルの7「Bridge Over Troubled Water」にしたってゴスペルふうな曲でしたし、続く8「Amazinfg Grace」は説明不要ですね。オリジナル・ナンバーにしたってジャズとゴスペルの合体を聴かせるようなもの。

 

おそらくこの2020年代の世界に訴えかけていこうという気持ちをジャックは持ってこのアルバムをつくったんじゃないでしょうか。平原綾香のヴォーカル・ヴァージョンとマイケル・トンプスンのギターをフィーチャーしたインスト・ヴァージョンの二種類が収録されている「It’s You」にしたって、音楽の持つ厳かなパワーを感じながら演奏しているようなフィーリング。

 

聴き手にもそんな音楽の持つスピリチュアルなパワーを感じてほしいという意向がはっきりと伝わってくるヒーリング・アルバムでしょう。

 

(written 2023.11.27)

2024/01/25

ドイツ発若手レトロ・ジャズ 〜 チモ・ニステロク

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(3 min read)

 

Thimo Niesterok / Stepping Forward

https://open.spotify.com/album/2JzJTGwoMAEmjldo2Rm3yj?si=ASQasvu7RKaUwV6BEhEQQA

 

チモ・ニステロクは現在ケルン在住1996年生まれのドイツ人若手ジャズ・トランペッター。最新作『Stepping Forward』(2023)にたまたま出会う機会があり、それで知りました。な〜んとディキシーランド/スウィング・ジャズにフル傾倒しているという音楽性で、なんだか最近増えてきていますよね。

 

レトロっていうかルーツ・リスペクトっていうか、こうした流れはあきらかに大きなものとなっていて、好き嫌いは別にして、だれしも無視できないトレンドになっているといえます。

 

チモの本作はドラム・レスのカルテット編成で、自身のトランペット or コルネットにギター、ピアノ、ベース。ドラマーがいないというのがサウンド全体におだやかな落ち着きをあたえていて、成功していると思います。

 

曲は自作オリジナルとカヴァーがまざっていて、カヴァーはたとえば「ローズ・ルーム」「ディッキーズ・ドリーム」「ペニーズ・フロム・ヘヴン」なんて完璧に古いもの。モダン・ジャズ以後はだれひとり演奏するミュージシャンもいなくなったものですよ。チモの趣味がよくわかりますね。

 

演奏しているトランペットの音色やフレイジングがこれまたレトロで、まるでボビー・ハケットやハリー・ジェイムズを思い起こさせるもの。こうしたスタイルを20223年のそれも新作で聴くことになるなんてねえ。

 

オリジナル曲もいいですよ。それらだってオールド・スタイルにぴったり照準があっています。ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」をソロの途中で引用してみせたりも近年のレトロ志向のなかでは通常のこと。

 

個人的にことさら気に入ったのが10「Home」。これもチモの自作なんですが、ピアニストが無伴奏ソロで弾くショウケースになっているんですね。一部トランペットも出ますが、あくまでこの曲の主役はソロ・ピアノ。それがおだやかでやさしく美しいので、感動してしまいます。

 

(written 2023.11.25)

2024/01/24

しんどいときに聴く音楽(72)〜 ウェザー・リポート

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(2 min read)

 

Weather Report / Heavy Weather

https://open.spotify.com/album/2M9F2yYsUvqiBPwUGeNvn1?si=xgwSAjR8SFiArmSYeKgp_w

 

『ヘヴィ・ウェザー』(1977)は、いまでもウェザー・リポートでいちばん好きなアルバム。79年にジャズ・ファンになりましたからリアルタイムにはちょっと間に合わなかったんですが、その後お気に入りになってずいぶん長いです。

 

そりゃもう1「バードランド」のポップでキャッチーな感じにノックアウトされちゃいます。ジャコ・パストーリアスのベースもカッコいいし、なんといってもジョー・ザヴィヌルの手になるアレンジが決まっています。

 

うん、自由で熱いインプロ・ソロ・バトルがくりひろげられている音楽も好きだけど、それ以上にカッチリしたウェル・アレンジドな表現がぼくは好きなんですね、どんなミュージシャンでも。ウェザー・リポートだと、だから『ブラック・マーケット』以降。

 

名バラードの2「ア・リマーク・ユー・メイド」が甘くて切ない感じなのも最高ですし、ジャコのショウケースである3「ティーン・タウン」もすばらしい。ジャコはこれアド・リブというよりあらかじめ書かれたラインを演奏しているんでしょうね。

 

モントルーでのライヴ録音である5「ルンバ・ママ」ではマノロ・バドレーナのパーカッションが大爆発。+アレックス・アクーニャのドラムスとのデュオ演奏で、血がたぎる感じです。ある意味アルバムのクライマックスともいえるかも。

 

超高速4ビートのラスト8「ハヴォナ」でのジャコもみごと。フィーチャーされているベース・ソロも聴きごたえ満点ですが、それ以外でも一曲ずっと通してソロを弾き続けているというにひとしい超絶プレイぶり。

 

(written 2024.1.13)

2024/01/23

しんどいときに聴く音楽(71)〜 パット・マシーニー(3)の思い出話

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(3 min read)

 

Pat Metheny / We Live Here

https://open.spotify.com/album/4p0aBzT8s5luPigshYsZFZ?si=5VcV5qBmTBG2GOtnhyXeHA

 

パット・マシーニー(パット・メセニー)のことを三回も書いていますけど、やっぱり大好きなんですよねえ。でもぼく最初はパットのことバカにして聴いていませんでした。ちょうど大学生のころ。

 

といってもジョニ・ミッチェル『シャドウズ・アンド・ライト』のことは好きで、とってもよく聴いていたんですけど。そのなかでのパットのギターも好きだったし、それにだいたいぼくはパット世代どまんなかのはずだったのに、周囲がもてはやすのに対するちょっぴりひねくれもの的な反発もあったんでしょうか。

 

そんなわけで大学生のころにはパットの作品を一枚も買わなかったんですが、東京の大学院に進んだらパットのことを推薦してくる人物がまわりにけっこういました。特に一年後輩の金山くん。金山くんが「戸嶋さん、パット・メセニーはいいですよ〜」ってさかんに言うんですよね。

 

それでもなかなかレコード買わなかったんですが、転機は1995年に新築マンションを買って引っ越してからのこと。その前からFM雑誌を定期的に買っておりまして、そのなかの新作リリース情報のページにパット・マシーニー・グループの『ウィ・リヴ・ヒア』(1995)が載っていたわけなんです。

 

当時のFM雑誌は音楽専門誌という側面もあって、いまみたいにネット情報なんてないし、音楽のことを知るソースとしてぼくは活用していました。FMラジオの音楽番組もよく聴いていましたし。そいで新作情報コーナーに載ったパットの『ウィ・リヴ・ヒア』のジャケット写真がいいなぁ〜って、そう思いました。

 

1995年の話で、レビューをどなたがお書きになっていたかはもう忘れちゃいましたが、たしかその文章にもおおいに刺激される部分があって、パットはだいたい大人気ミュージシャンだし、と思ってショップでCD買ってみたんです。

 

それで聴いてみたらなんかほんとうにカッコよくって。一発でパットの音楽に惚れちゃいました。2024年のいまでも『ウィ・リヴ・ヒア』は最も好きなパットの作品の一つです。それくらい本作はある意味衝撃的ですらありました。

 

その後はパットのことをフォローするようになり、新作が出たら欠かさず買う(いまはサブスク)ようになって、過去のアルバムもさかのぼってぜんぶCD買って聴いてみました。ぼくにとって1995年の『ウィ・リヴ・ヒア』がすべてを変えた転機だったんです。

 

(written 2024.1.2)

2024/01/22

しんどいときに聴く音楽(70)〜 クリスチャン・マクブライド

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(2 min read)

 

Christian McBride / Where Are You?

https://open.spotify.com/track/4Nf5QPDiSHJ5dIPdtzB9qS?si=8f310640390442c7

 

先週クリスチャン・マクブライドの弓弾きのことに言及したらやっぱり思い出しました、「ウェア・アー・ユー?」のことを。マクブライド自身のアルバム『カインド・オヴ・ブラウン』(2009)のラストに収録されているこれが、まさに宝石のよう。

 

もちろん弓弾きなんですが、曲はわりとよく知られたスタンダードで、歌詞もあって多くのジャズ歌手が歌っています。「私をひとり残して、あなたはどこへ行ってしまったの?あなたなしなんて考えられない」というロスト・ラヴの歌なんですが、マクブライドはピアノ一台だけを伴奏に据え、アルコでどこまでも美しくつづっています。

 

ぼくがいままでの人生で聴いたすべてのコントラバス演奏のなかで最も美しい弓弾きがこのマクブライドの「ウェア・アー・ユー?」に違いありません。聴いているともう泣いちゃいそうなぐらい。マジで至高の演奏。

 

弓弾きコントラバスの音程がきわめて正確なのも演奏の美しさを強調しています。ジャズ・ベーシストはピチカートを常用しますから、そのへんが多少あいまいでもふだんさほど問題にならないんですが、弓で弾いたときにバレてしまうんです。ところがマクブライドのこの演奏では完璧に正確。

 

音色もきれいでおだやかに丸いし、コントラバス演奏における100点満点の理想を実現していて、それでもってこの切なく哀しく美しいメロディ・ラインを、インスト演奏だけどまるで歌詞の意味をかみしめていくかのごとくナイーヴ&ストレートに弾くさまには感嘆のため息しか出ません。

 

(written 2024.1.1)

2024/01/21

どこまでも静謐でシルキーなヴォーカル・コーラス 〜 セージュ

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(2 min read)

 

säje

https://open.spotify.com/album/6L4rGy7MjjQFUhbeSFlcBr?si=B8w1jzAURlqMw_LutASE_g

 

セージュという読みでいいのかな、あるいはサージェ?かも、säje。なにかのプレイリストで一曲流れてきて、おっいいんじゃないと感じたジャズ・ヴォーカル・グループで、女性四人組。アルバム『säje』(2023)はデビュー作のようです。

 

オフィシャル・サイトにもあまりくわしい情報が載っていないんですが、まだグループとしてはキャリアがないからってことでしょうか。メンバー個人としては活動歴のあるシンガーもいる模様。アンブローズ・アキムシーレとかジェイコブ・コリアー、テリ・リン・キャリントンなど有名ミュージシャンが曲によっては参加しています。

 

しかし伴奏は必要最小限で、あくまでも四人のコーラス・ワークを前面に押し出した内容。伴奏まったくなしのア・カペラ・コーラスもあったりして、それでも不足ない充実で聴かせる実力の持ち主だということがわかります。

 

そのヴォーカル・コーラスはいままでジャズ界にあまりなかったような新しいスタイル。といっても音の重ねかたなんかは従来どおりのオーソドックスなものですが、派手さがゼロで、どこまでも静謐なムードなんですよね。にぎやかだったりぐいぐいスウィングしたり決してありません。

 

だから聴きながら足でビートをとるような種類の音楽じゃなくて、じっとすわってだまって静かに耳を傾けるようなものです。とっても洗練されていて都会的。コーラス・ワークでスキャットを展開するパートもありますが、器楽的なわざとらしさはまったくなし。歌、というものを大切にしたグループですね。

 

(written 2023.11.4)

2024/01/18

ノー・メイクなラーキン・ポー 〜『An Acoustic Companion』

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(1 min read)

 

Larkin Poe / An Acoustic Companion

https://open.spotify.com/album/1ufpBalo39GCHCvbVQMgmY?si=beVBxRMQTneLW2P4PcO5Mw

 

アクースティック・アルバムを出すと以前予告していたラーキン・ポー。出てみたらたった四曲13分のEPなのでちょっとあれですが、でもその『An Acoustic Companion』(2023)は飾らないノー・メイク姿のローヴェル姉妹が聴ける気がして、これはこれでなかなかいいです。

 

四曲すべて今回のためのオリジナル。しかも特徴的なのは二人のギターとヴォーカル、ラップ・スティールだけでサポート・メンバーがいないこと。ベースもドラムスもなしです。それが二人のあたたかみとかプライベートでインティミットなフレンドリーさをかもしだしていて、ちょっと好きですね。

 

比較的おとなしめの曲が中心だというのも二人だけでやっているせいでしょうか。バンドでやるときはかなりハードになることもあるブルーズ・ロック志向なんですが、南部的なディープさはそれでもしっかりあるし、こうして静かにやっていても、根本はいままでの諸作と同じだなとわかります。

 

(written 2023.11.5)

2024/01/17

しんどいときに聴く音楽(69)〜 パット・マシーニー(2)

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(2 min read)

 

Pat Metheny / Day Trip

https://open.spotify.com/album/5g72mZXbzilZ1vhUX0NRoD?si=Tu5NjIpYQJCg05Lsf6nQOg

 

パット・マシーニーのこっちはストレート・ジャズ作品『Day Trip』(2008)。あまり話題になりませんが、ぼくはかなり好きなんです。クリスチャン・マクブライド(ベース)+アントニオ・サンチェス(ドラムス)とのトリオ編成。

 

特にサンチェスのドラミングがきわだってすばらしく、手数の多い細分化されたビートを叩き出しているのが心地いいです。マクブライドはコントラバスに専念していて、それもまたストレート・ジャズ路線を印象づけるもの。

 

アップ・ビートの曲でもゆるいテンポの曲でも三人の有機的なインタープレイが実にみごとで、マクブライドのベース・ソロも活きています。ベース・ソロといえばハリケーン・カトリーナによる悲劇をつづった6「Is This America?」での弓弾きもたいへん美しい。

 

パットはグループでのフュージョン路線と並行して時折ストレート・ジャズ・アルバムもつくってきましたが、そのなかでも本作は特にぼくの印象に残るもの。それはひとえにマクブライド+サンチェスという人選がもたらしているんじゃないかと思います。

 

(written 2023.12.31)

2024/01/16

しんどいときに聴く音楽(68)〜 パット・マシーニー(1)

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Pat Metheny / Still Life(Talking)

https://open.spotify.com/album/2hLXa5j81nsOy8KmqM1sSx?si=y6d4ioVASaKhH2sdoilIcQ

 

パット・マシーニー・グループの最高傑作、といえるかどうかはわかりませんが個人的にいちばん好きなのが『Still Life(Talking) 』(1987)なのは間違いありません。『We Live Here』(93)もかなり好きで、どっちかがぼくのなかでのNo.1パット。

 

『スティル・ライフ』で好きなのは、でも全七曲中三曲です。1「Minuano (Six Eight)」3「Last Train Home」5「Third Wind」。いずれもセンティメンタルでリリカルな味が強く出ているブラジリアン・ジャズ・フュージョンで、もうあまりにも大好きすぎる。

 

それらではヒューマン・ヴォイスの活用もきわだっていますよね。そもそもパットのグループではそれが最大の特徴といってもいいくらいで、そこもブラジル音楽から強い影響を受けた部分だと思います。

 

ギターやキーボードとユニゾン・シンクロでメロディを歌っていたりもして、くぅ〜〜もうたまらん状態。だからすなわち事前にしっかりアレンジされ譜面化してあったものでしょう。複数のヴォーカリストがからみあうパートもよく計算されています。

 

この事前の作編曲がしっかりしていてグループとしての表現力・統合力がとても高いというのがパットの音楽でぼくがもっとも好きな部分。アフロ・ブラジリアンな展開を聴かせるパートでもパットやライル・メイズが自在にインプロ・ソロを演奏しているパートでも、これは一貫しています。

 

(written 2023.12.30)

2024/01/15

しんどいときに聴く音楽(67)〜 アイオナ・ファイフ

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Iona Fyfe / Away from My Window

https://open.spotify.com/album/324FKjzNz20DnQw2HNzAx8?si=SstjenoQTi2wLV9dG9v6Vg

 

スコットランドのフォーク歌手、アイオナ・ファイフのデビュー・アルバム『Away from My Window』(2018)のことを思い出し、ちょっぴりひさしぶりにくりかえし聴きかえしていました。18年にこれを知ったときはそりゃあ夢中だったんですよね。同じCDを三枚も持っていますもん。

 

フォークというかトラッド歌手ですが、シンガー・ソングライターという側面もあって、本作には自作曲も収録されています。それを実にシンプルな伴奏でつづるアイオナの声は、冬の冷えて澄んだ空気に実によく似合うもの。

 

いちばん感じるのは、アイオナの天賦の才としか思えない歌声の美しさ、透明感ですが、もっと深い印象を残すのが際立つ強さ。声そのものに強さがあります。しかも同時にやわらかいっていう。そんなアイオナの声は、彼女自身のフォーク歌手としての姿勢と一体化しているように思います。

 

これでアイオナに惚れちゃってフォローするようになり、TwitterやInstagramも見たり、またFacebookではアイオナのほうからフレンド・リクエストが来ました。ソーシャル・メディア全般でアイオナは活発ですね。

 

『Away from My Window』以後はきわだった作品がない、っていうかそもそもフル・アルバムがないんですけど、この一作だけでスコットランド・フォーク・シーンに大きな足跡を残したといえる傑作だと思います。

 

インディ歌手にとって、一つだけでもアルバムをリリースするというのはかなりたいへんなことですから。動画でたくさん観た楽器伴奏に乗って軽く体をゆらしてビートを刻みながら歌うアイオナの強く美しい立ち姿、それが眼前にたちのぼるかのようなアルバムです。

 

(written 2023.12.29)

2024/01/14

最近のお気に入り 2023~24 冬

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(39 sec read)

 

最近のお気に入り 2023~24 冬

https://open.spotify.com/playlist/026f3PsIhQksGWDxosB0Dv?si=260ccda1b0bb408e

 

寒いですね。2024年は年始から心が痛むニュースが続き、日々呆然とするばかりです。

 

1) Samara Joy / Warm in December

2) beabadoobee, Laufey / A Night to Remember

3) 渡辺貞夫 / レクイエム・フォー・ラヴ

4) Mihyang Moon / The Nearness of You

5) Simon Moullier / RC

6) Billy Joel / Leave A Tender Moment Alone

7) Ruby Pan 潘子爵 / Mimosa 蒲公英

8) 原田知世 / Both Sides Now

9) 9m88 / 頭髪 Hair

10) Airi / ワインレッドの心

11) Dr. John / Satin Doll

12) Van Morrison / Bring It on Home to Me

13) 調 雅子 / Adiós Nonino

14) Beatriz Rabello / Passou

 

(written 2024.1.10)

2024/01/11

ソフト・ジャズ 〜 マイルズ・デイヴィス

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きのう書いた『イージー・ジャズ』プレイリストはコンテンポラリーなものだからとうぜん入っていないんですけれど、口あたりのいいソフトなイージー・リスニング・ジャズでぼくはマイルズ・デイヴィスを思い出しました。

 

ヴォーカル・ジャズではありませんが、マイルズの音楽は間違いなくイージー・リスニング系だと思います。こんなこと言っているの、いままでだれもいないんですけれど。それにマイルズというとシリアスな骨のあるジャズの代表とみなされてきましたし。

 

でも、たとえば名作中の名作とされる初リーダー作の『クールの誕生』にしたって、サウンドを聴けばやわらかいくつろぎムードで満たされているのははっきりしています。むかしすんごくむずかしいことをこのアルバムについて述べる評論家が大勢いましたが、そんな学究的な音楽じゃないです。

 

ビ・バップにくらべてグンと格段に聴きやすいソフトなBGMのようなリラクシング・ミュージック 〜 これが『クールの誕生』やその後の音楽人生でマイルズのめざしたもの。最近ぼくはそう考えるようになってきました。

 

すると、そんなアルバムばかりどんどん見つかるじゃないですか。例のプレスティジ四部作にしてもそうだし、コロンビアに移籍しての一作目『マイルズ・アヘッド』もそう。

 

ジャズ史上最高傑作のように言われたりもする『カインド・オヴ・ブルー』だってむずかしいことなんてなにもなく、おだやかでくつろげる聴きやすい音楽ですよ。これがぼくの印象。マイルズってそもそもそういう音楽家でしょう。

 

むろんハードで歯ごたえのあるグルーヴィな音楽も残しましたけど、キャリア全体をよくみわたすとそれはマイルズのばあい例外なんですよね。ごっつい音楽をやっていたイメージのある電化時代にも『イン・ア・サイレント・ウェイ』みたいな静かな作品があります。

 

復帰後だって、最終作になった『ドゥー・バップ』はくつろぎミュージック。ヒップ・ホップ・ジャズですけれど、ヒップ・ホップのエレクトロニック・ビートってそもそもリラクシング効果があるんじゃないですかね。

 

ソフト・ロックということばがあります。ソフト・ジャズというものがもしあるとすれば、マイルズはその代表格だと思います。

 

(written 2024.1.7)

2024/01/10

スムース&イージーはコンテンポラリー・ヴォーカル・ジャズの大きな流れ

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(2 min read)

 

Easy Jazz

https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DWT4nLmUaFDGb?si=9ba1ed625f06469e

 

だなあという実感をますます強くしています。こないだふとSpotifyでこの『イージー・ジャズ』というプレイリストに出会ったことで、そうに違いないと思うようになりました。

 

プレイリストのカヴァー・フォトがノラ・ジョーンズなのはとうぜんで、たいへんわかりやすいこと。2020年代に入ってますます隆盛なイージー・リスニング・ジャズの発端がノラ・ジョーンズのデビュー(2002)だったでしょうから。ノラは第一人者です。

 

あのころ、ノラみたいなソフトで聴きやすく口あたりのいいおだやかなジャズ・サウンドに違和感を持つファンも多く、「そもそもこれはジャズなのか?」という疑問を発するひとすらいました。

 

しかしノラが確固たるポジションを占めるようになってくると次第にそんな声は消えましたよね。あとに続くミュージシャンがどんどん出てくるようになり、21世紀のコンテンポラリー・ジャズにおける大きな潮流になりはじめたのでした。

 

従来型のジャズ、すなわちガツンとくる骨太でハードなサウンドとはまったく違います。ノラが象徴するようなイージー・ジャズを時代が求めていたってことでしょう。聴きやすく丸くなめらかで、流し聴きにもピッタリだというような世界を。

 

これは主にヴォーカル・ジャズの世界での話。インスト・ジャズの世界でも多少そんなムーヴメントがありますけれど。そして、イージー・ジャズの動きは、いはゆるレトロ・ポップ(ジャズにおけるそれ)ともおおいに連動していることはいうまでもありません。同じものといってもいいくらい。

 

(written 2024.1.6)

2024/01/09

しんどいときに聴く音楽(66)〜 黄金時代のデューク・エリントン

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(3 min read)

 

Duke Ellington / The Golden Era

https://open.spotify.com/playlist/3fouRB6f8TJWQ0UsSnNhHu?si=6854499960c243bd

 

ドクター・ジョンの『デューク・エレガント』が出た前世紀末ごろ、こんなに楽しいものならぜひデューク・エリントンのオリジナルも聴いてみたいというブルーズ・ファン、ロック・ファンが周囲で続出しました。

 

だからそれなりの推薦CDを言い、買って聴いてもらったんですが、ほぼ全員がガッカリしたという反応で、そりゃあねえ、『デューク・エレガント』はドクター・ジョンがこれ以上ないほど大胆に展開しているからであって、ジャズ・オリジナルを聴いてもちょっとねえという気持ちはわかります。

 

スティーヴィ・ワンダーも歌っているし、デュークへの愛を隠さない音楽家はジャンル問わず多く、それにぼくはだいたいがジャズ・ファンだからデュークの作品も大好きです。

 

ドクター・ジョンきっかけでデューク・ファンになってもらうことには(あの当時)失敗しましたが、それでもいつかなにかのきっかけで興味を持ってもらえたらなという思いは常にあります。

 

そんなデュークのカタログのうち、全盛期といえるのは間違いなく1940年代初頭のヴィクター時代。その前39年ごろからピークを迎えていましたが、ヴィクターはCDでもサブスクでもできちんとリイシューしてくれているのがほんとうにすばらしいところ。

 

そんなわけでCDなら三枚組の『ネヴァー・ノー・ラメント:ブラントン・ウェブスター・バンド』(2003)から、必須の名演ばかり選んで順に並べておいたのが上記の自作プレイリストです。1940〜42年の録音集。

 

もとのアルバムをぜんぶ聴くとなると四時間ほどもかかっちゃうので、なかなかたいへんだと思います。ぼくのプレイリストなら1時間18分。どれもこれも濃密なすばらしい曲と演奏ばかり。

 

そう、デューク・ミュージック最大の特徴はサウンドの濃密さです。くわえてこの時期はベースのジミー・ブラントンとテナー・サックスのベン・ウェブスターが参加していて、いっそう音にいどろりと厚みをもたらしています。

 

『デューク・エレガント』でドクター・ジョンがカヴァーしているものは「ドゥー・ナッシング・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー」(「コンチェルト・フォー・クーティ」)と「ザ・フレイミング・ソード」の二曲しかありませんが、そのほかどれもこれもみごとなジャズ史上最高峰の輝きを放っている名作名演といえるはず。

 

(written 2023.12.27)

2024/01/08

しんどいときに聴く音楽(65)〜 ドクター・ジョン『デューク・エレガント』

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(2 min read)

 

Dr. John / Duke Elegant

https://open.spotify.com/album/32944vJtxt5vMbR8dAMViB?si=ABg_bWt6T-iC5WtU6lYfyA

 

ドクター・ジョン『デューク・エレガント』(1999)のことは、いままでに二回だったかな、書いてきましたが、それくらいほんとうに大好きで、個人的にはドクター・ジョンの最高傑作だったんじゃないかと思っているほどです。

 

もちろんデューク・エリントン曲集で、そのレパートリーをかなり大胆にリ・イマジンドした音楽。すべて完璧なファンク・チューンに変貌しているのがキモで、楽しくて痛快ですよ。

 

聴いていて心地いいし、あの曲この曲がこんなふうになっちゃうんだという驚きで、リリース当時はかなり新鮮に聴こえ、ビックリするやらうれしいやらでくりかえしCDで聴いていました。周囲でも大人気でしたよ。

 

いまやサブスク時代となり、デューク・オリジナルとの比較も実にカンタンで手間なし。いっそうドクター・ジョンの解釈展開力をまざまざと思い知る結果となっているように思います。

 

ドクター・ジョンのヴォーカル&ピアノor オルガン+ギター+ベース+ドラムスという編成を軸に、パーカッションやサックスが参加する曲もあるといった具合。バンド(ロウワー9-11)の演奏力の高さが際立っているのも聴きどころです。

 

歌もののあいまにおりまぜられる(や終盤は連続してくる)ファンク・インストルメンタルも立派なできばえで、楽器即興演奏がお好きなジャズ・ファンにも楽しんでいただける内容じゃないかなと思います。

 

デュークがこれを聴いたら、これこそ21世紀型の自分だと、こういう音楽をやりたかったなと思うに違いありません。まさにだれもなしえなかった現代型デューク・エリントン曲集といえます。

 

(written 2023.12.26)

2024/01/07

気がつけばヘヴィロテ 〜 調 雅子

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(2 min read)

 

調 雅子 / Shirabe

https://open.spotify.com/album/2Z6pAZcXU95mNuNjch8rXL?si=w48H38uTTUqG1Tzsv_jA1w

 

クラシック・ヴァイオリニスト、調 雅子のデビュー・アルバム『Shirabe』(2023)がけっこういい。サブスクでさがすとアルバム題が『Kraisler, Elgar & Others: Chamber Works』になっているので、最初これがそうかどうか判断できなかったですが、ジャケットを見れば同じものとわかります。

 

クラシック音楽の世界にはうといぼくなんですが、それでも本作には聴きなじみのある曲が多く収録されていて、だからそんな緊張せずにリラックスして楽しめるというのがいいですね。エルガー(2)やドボジャーク(7)なんかはほぼみんな知っている曲じゃないかと思います。

 

くわえてモリコーネ、ピアソーラ、ガーシュウィンといったポピュラー音楽のフィールドにある曲もやっていて、最初ざっと聴いたとき「あ、これ知っているぞ」という気分になったのはそういうわけです。

 

演奏はピアノとのデュオで、それ向けにどの曲もアレンジしなおされています。ヴァイオリンの音が鮮明で粒立ちがいいというのが大きな特徴。知っている曲も知らなかった曲も、これだけのあざやかなサウンドで聴かせてもらえたらうれしくなりますね。

 

それにわりあいポップなフィーリングもあって、クラシック門外漢のぼくなんかにもとっつきやすく聴きやすい側面があります。最近は寝る前の一時間これを聴いて気分をくつろがせています。

 

(written 2024.1.5)

2024/01/04

しんどいとき助けになる音楽(64)〜 クリフォード・ブラウン with ストリングス

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(3 min read)

 

Clifford Brown with Strings

https://open.spotify.com/album/6TLl6JDupQR1sdHh20eWNG?si=tDupGTyLSNeb2JQ7LaTk4w

 

駄盤の代表のようにむかしは言われた『Clifford Brown with Strings』(1955)。そう、駄盤っていうことばがかつてはありました。ひどい言いかただよねえ。いまでも使うひといるのかな。名盤の反対語みたいな感じでジャズ評論の世界では存在していて、その影響で一般のファンも使ったりして。

 

音楽家がていねいにつくりあげた作品を駄盤なんてことばで一刀両断するとはとんでもない話ですよ。そもそもジャズにおけるウィズ・ストリングスものはそういうふうに言われることが多く、どれも大好きだったぼくなんかずいぶんつらい思いをしたもんです。

 

そんなのは(フュージョン否定ともども)きわめて20世紀的な言説であって、いまやきれいで楽しいものは素直にそう言えばいいという時代になってきたと思いますから、ブラウニーのウィズ・ストリングス作品もそろそろ正当に評価されてほしいです。

 

いつものクインテットにニール・ヘフティ・アレンジのストリングスが参加して、バンドの音はほとんど目立たず、美しいストリング・アンサンブルに乗せてひたすらブラウニー一人が淡々ときれいに吹き上げるだけっていう世界は、一般のポピュラー・ミュージック・ファンのあいだでなら賞賛されるものでしょう。きれいだもんね。

 

ジャズもポピュラー・ミュージックの一員であるならば、辛口でハード・ボイルドな世界ばかりが高く評価されるのみではちょっとね。本作のようにもともときれいなメロディを持つ有名スタンダードをどこまでも甘く美しく演奏するといった音楽だって評価されてほしいと切に願う次第であります。

 

こうしたどこまでもおだやかに、ただただ淡々と、きれいなメロディをそのままつづるのみっていうようなものは、心身ともに傷つき弱っている立場にとっては格好の癒しになるんですから。

 

駄盤とか、あんまり否定しないでいただきたいなと。

 

(written 2023.12.18)

2024/01/03

しんどいとき助けになる音楽(63)〜 エリゼッチ・カルドーゾ

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(2 min read)

 

Elizeth Cardoso / Ary Amoroso

https://open.spotify.com/album/2YV6n5bt3OKpBpDraGydxS?si=HViHGSmlSE-_wHVfA7x_kw

 

ブラジルの歌手、エリゼッチ・カルドーゾ最晩年のアルバム『Ary Amoroso』(1990?91?)は、心身の弱っているときに聴くと特に沁みる音楽。もう声にハリがないんですけど、淡々とアリ・バローゾを歌う枯淡の世界がとってもいいんですよね。

 

アリ・バローゾというとエリゼッチは生涯でたくさん歌ってきた作家だったはず。衰えた最晩年になってみずからもう一度バローゾをまとめて歌いなおしておこうと思った心境はどういうものだったのでしょう。

 

シンプルな伴奏を添え、ジャジーに、ときにはクラシカルですらあるような感触で静かにつづる歌唱はとても味わい深いもの。こちらが若くて元気だった時分に出会ってもよさがわからなかった音楽でしょうが、いまではこういう枯れて淡々とした音楽こそ心の友だと思えるようになってきました。

 

歳をとり装飾をそぎ落とさざるをえなくなってストレートに歌う枯淡の境地は、音楽や曲の持つ魅力の本質をかえってむきだしにしてくれるようにも思えます。ある意味純度の高い歌であるのかもしれません。

 

(written 2023.12.15)

2024/01/02

レニー・クラヴィッツはルーツ・リスペクト系の大先輩かも

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(2 minh read)

 

Lenny Kravitz / Mama Said

https://open.spotify.com/album/7A3LlV59lh4KljWa7I6Tks?si=2hriY0TcT1650xjqeR2XAQ

 

ルーツ・リスペクト系といえばで思い出したレニー・クラヴィッツ。すっかり忘れていましたが、いまどうしているのでしょう。出会ったのは三作目『Are You Gonna Go My Way』(1993)でのこと。さかのぼって聴いてみたら二作目『Mama Said』(91)がいちばんの好みとなりました。

 

主な活躍期は1990年代でしたが、90年代にはクラシック・ロックのリバイバル・ムードがあったのはたしかなことで、レニーもその流れのなかにいた一人だったということでしょうか。

 

レニーのばあい、70年代初期ごろのジョン・レノンを意識したような曲も多く、『ママ・セッド』にもあります。曲づくり、サウンド・メイク、ギターやオルガンの使いかたなど、かなり影響を受けたに違いありません。

 

楽器やスタジオ機材などもあのころのヴィンテージものを使うというこだわりようで、個人的な偏愛ぶりというか、つまりはルーツ・リスペクトな姿勢が鮮明な音楽家でした。

 

『ママ・セッド』にはクラシック・ロックな曲ばかりでなく、70年代フィリー・ソウルっぽいものもあったりして、要するにあのころのああした一連の音楽群を愛していたんでしょうね。

 

1960〜70年代がロックやソウルなどにとって非常にスペシャルな時代だった、すなはち黄金時代だったというのは確実にいえること。だからそこへあこがれ回帰していく音楽家はいつの時代でもとうぜんいるんでしょう。

 

90年代と2020年代はその意味でちょっと似ているということかもしれません。そんなことをレニーの『ママ・セッド』を今一度聴きかえしながら感じました。レニーは現代のルーツ・リスペクト系の大先輩かもですね。

 

(written 2023.12.25)

2024/01/01

あのころのザ・バンドのように 〜 ジェイミー・ワイアット

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(3 min read)

 

Jaime Wyatt / Feel Good

https://open.spotify.com/album/4OmmXsHm3IutzsXt5xGVvB?si=hWjnwffCRkKGvvFesblNVg

 

萩原健太さんのブログで知りました。

https://kenta45rpm.com/2023/11/27/feel-good-jaime-wyatt/

 

これもルーツ・リスペクト系な若手音楽家の一人、ジェイミー・ワイアット(ロス・アンジェルス出身)。そもそもカントリー歌手なんだそうですが、三作目『Feel Good』(2023)はいい感じのソウル・テイストで、つまりカントリー・ソウルな音楽になっているのがグッド。

 

グレイトフル・デッドのカヴァーが一曲あるほかはすべてジェイミーの自作で、しかも仲間といっしょにスタジオでセッションを重ねながら練り上げていったものらしく。メンフィスで録音したようですよ。

 

プロデューサーをブラック・プーマズのエイドリアン・ケサダがつとめていて、だからこんな感じのカントリー・ソウルに仕上がっているんですね。ケサダはうまあじのギターを随所で聴かせています。それもポイント高し。

 

カントリーのみならず、ブルーズ、ソウル、ゴスペルといったUSアメリカン・ルーツ・ミュージックが渾然一体となっているサウンドで、ついつい惹き込まれます。要するに1970年前後ごろのロック系ミュージックそのまんま。なかにはザ・バンドそっくりに聴こえる曲もあります。

 

ザ・バンドみたいなあのころのああしたロックなどへのリスペクトを隠さずストレートに表出している若手が増えているというのは昨日も書きましたが、この現象がいったいどういうことなのか、背景になにがあるのかといったことはぼくはまだまとめられません。

 

ただ、あのころからずっと現役で2020年代も活躍しているベテランも多いし、そうしたひとたちがソーシャル・メディア・アカウントを持って発信していたり、さらにはサブスクの普及で古い音楽にアクセスしやすくなったという事実は、間違いない理由としてあるでしょう。

 

そう、サブスク世代にとっては新しい音楽も古い音楽も時代感覚なくフラットで等距離で身近なんですよね。だからこそのレトロ・ブームにしろルーツ・リスペクト系の台頭なんじゃないかと思います。

 

(written 2023.12.24)

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